住宅ローン、いくら借りられるではなく、いくらなら返せるか。
2006年ごろに起きたアメリカのサブライムローン問題はご存じでしょうか。そもそもサブプライムローンとは、信用力の低い債務者向けの貸し付けのことで、収入が低い人や過去に返済の延滞があった方でも借りられる住宅ローンです。サブプライムローン問題は、住宅価格は上がり続けるという「住宅神話」を前提に、信用力の低い人に対して金融機関が過剰に融資をして、2006年後半以降の住宅バブル崩壊で不良債権化したことです。当初2年間は低金利で固定、3年目から高金利の変動
(金利10%超)という条件が多かったため、2年後の高金利変動の到来ともに返済不能に陥る債務者が急増しました。住宅価格が上昇していれば、低金利の住宅ローンに借り換えできたかもしれません。しかし、このようなもくろみはあっけなく外れました。
実は過去日本でも同じようなことが起きていました。それは旧住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)が販売していた住宅ローン商品「ゆとりローン」により多くの方が返済不能になった問題です。この住宅ローンは1993年から2000年にかけて低所得者を中心に融資されていて、当初5年間は金利が低く設定されていますが、徐々に金利が高くなっていくのが特徴です。例えば、3000万の住宅ローンで35年返済の場合で説明します。当初5年の返済額は約80,000円(金利2%で借入期間50年で計算)です。6年目の返済額は約140,000円(金利2%で借入期間35年で計算)になり、11年目からは返済額が約163,000円(金利4%で返済期間25年で計算)になります。これは給与が年齢とともに上昇していく、年功序列型の経済を想定して作られた商品です。しかし1991~1993年のバブル崩壊後の長い不景気の時代を迎えると倒産する会社も増え、企業に余裕がなくなってしまいました。そのため、これまでの年功序列・終身雇用制度から能力主義に移行する企業が増え、人によっては給料カット、あるいはリストラをされてしまう人も出てきました。その結果、増加していく返済負担が重く、住宅ローンの滞納や競売、任意売却になる大きな原因になりました。
アメリカのサブプライムローン問題と日本のゆとりローン問題は、それぞれ前提条件があっけなく崩れて大きな問題になりました。前提条件とは、アメリカは「住宅価格は上がり続ける」、日本は年功序列で「給与は上がり続ける」というものです。そして今危険なのは、ゼロ金利政策が今後も続き「住宅ローンは低金利のまま」という前提条件でローンを組むことです。