43.「自分がやった方が早い」の罠~社長が現場を離れても回り続ける仕組みの作り方
はじめに、こんにちは。株式会社吉和の森の森和吉です。
前回(第120回)は、「引き算・掛け算・足し算」の3段階で、業務効率化と人肌感を両立させながら100年企業へ向かう実践ロードマップをお届けしました。
さて、121回目のテーマは、他社との差別化において最強の切り札となる「社長自身の原体験(創業ストーリー)」の言語化です。
「自社のホームページやパンフレットの『代表挨拶』が、型通りの無難な挨拶文になっている」
「創業の想いや苦労はあるけれど、恥ずかしくてうまく言葉にまとめられない」
そんな状態のまま放置していませんか?
今やAIを使えば、誰でもプロ並みに整った挨拶文や会社理念が一瞬で作れます。しかし、整いすぎた「当たり障りのない美文」は、誰の心にも残りません。
お客様やスタッフが本当に心を動かされ、「この社長についていきたい」「この会社から買いたい」と強く感じるのは、整った言葉ではなく、社長がかつて流した悔し涙や、現場での泥臭い失敗、そこから生まれた誓い(原体験)です。
今回は、AI参謀を壁打ち相手に使いながら、あなたの胸の奥にある生々しい熱量を引き出す「原体験ストーリーの紡ぎ方」をお伝えします。
ストーリーに必要なのは「成功」ではなく「葛藤と挫折」
人を惹きつける物語には、共通の型があります。
最初から順風満帆に成功した話を聞かされても、人は共感できません。
- 「独立した当初、全く仕事が取れずに預金残高を見て震えていた夜」
- 「お客様に『あなたには頼めない』と断られ、自分の未熟さを痛感した出来事」
- 「現場で大きなミスをして、雨の中をお客様の家まで走って謝りに行った記憶」
こうした「弱さ」「挫折」「そこから学んだ教訓」を包み隠さず開示すること(自己開示)こそが、読み手に圧倒的な親近感と信頼(人肌感)を抱かせます。
「この社長は、痛みがわかる人なんだ」
「だからこそ、この仕事に対してこれほど本気なんだ」
その葛藤の末に生まれた決意こそが、あなたの会社の「理念」であり、他社が決して真似できない独自のブランドになります。
AI参謀に「インタビュー」させて本音を吐き出す
「そうは言っても、自分の過去をドラマチックな文章にまとめるのは気恥ずかしいし難しい」
そこで、AIに「熱血インタビュアー」の役割を与えて、質問攻めにしてもらうのです。
【AIへの指示文(プロンプト)例】
「あなたは優秀なドキュメンタリー番組の構成作家です。私の【創業ストーリー・原体験】を引き出すためのインタビューをしてください。
まず『なぜこの仕事を始めたのか?』『一番悔しかった失敗や挫折は何か?』『そこから何を誓ったのか?』を、1問ずつ順番に質問してください。私が口語で答えた内容を元に、最終的に読む人の胸を打つ温かいストーリー(人肌感のある代表メッセージ)に仕立ててください」
スマホの音声入力を使って、AIからの質問に思いつくままポツリポツリと本音を答えていきます。
頭で格好をつけようとせず、当時の感情をそのまま喋るのがコツです。
AIは、あなたの断片的な言葉や泥臭いエピソードを拾い上げ、読み手が情景をありありと思い浮かべられる見事な物語へと編み直してくれます。
「社長の物語」が最強の採用ツールにもなる
こうして言語化された原体験ストーリーは、新規のお客様の共感を呼ぶだけではありません。
実は、「理念に共感してくれる最高のスタッフ(仲間)」を引き寄せる最強の採用ツールになります。
給与や待遇の条件だけで集まった人は、より良い条件があれば去ってしまいます。
しかし、「社長のこの想いに共感しました」「この創業ストーリーを読んで、ここで働きたいと強く思いました」と集まってくれたスタッフは、会社がピンチの時でも一緒に踏ん張ってくれる一生の宝(人財)になります。
今回の実践ポイント
- 成功自慢を捨て、過去の「挫折・失敗・悔しかった瞬間」を思い出す
- AIに熱血インタビュアー役を頼み、スマホ音声で当時の本音を吐き出す
- 完成したストーリーを自社サイトやチラシに載せ、顧客とスタッフの心を掴む
どんなに小さな会社であっても、今日まで会社を続けてこられた社長には、必ず一人ひとりに映画のようなドラマがあります。
今夜、静かな時間にコーヒーを淹れ、AIに向かって「実は昔、こんな悔しいことがあってね…」と語りかけてみませんか?


