中小企業こそSNSを活用してファンづくりをしましょう
前回(第12回)は、バナー広告と検索連動型広告というデジタル広告の使い分けについて、顧客の「温度感」を基準にお話ししました。
デジタル広告が「お金をかける集客」の代表例だとすれば、SNS運用は地道に「時間をかける集客」の代表格です。そして第11回でお話しした通り、X(旧Twitter)は「拡散と共感の場」であり、企業のなかの人の想いや「人肌感」を広めるのに非常に適した性格を持っています。
しかし、ここで多くの経営者やSNS担当者の方々がぶつかる高い壁があります。それが、「1日5回投稿」という推奨頻度です。
「毎日5回も、専門的なノウハウなんて書けない」
「仕事中に何度もスマホを触っている時間はない」
そう思って、始める前に諦めてしまうケースが後を絶ちません。実際、企業のSNS運用は約60%が1年以内に更新を止めて投げ出しているという厳しい現実があります。
では、生き残って成果を出している会社は、1日5回も一体何を投稿しているのでしょうか。その答えは、驚くほどシンプルです。
1.なぜ「1日5回」も必要なのか?
まず、なぜ1日1回ではなく5回なのか、その理由をはっきりさせておきましょう。
それは、Xのタイムラインが流れるスピードが非常に早いからです。
朝に1回だけ「新商品が出ました」と投稿しても、その投稿は数分後には他の無数の投稿に埋もれ、下に流れていってしまいます。そもそも、顧客の目に触れるチャンスすら得られないのです。
だからこそ、朝、昼、夕方と、時間帯を分けて「打席に立つ(タイムラインに顔を出し、視界に入る)」回数を増やす必要があります。
2. 5回中4回は「挨拶」と「箸休め」でいい
「5回もビジネスに役立つことを書く必要はない」
ここが、最も多くの人が誤解しているポイントです。
毎日、朝から晩まで「我が社の技術力は…」「この商品のメリットは…」とビジネスの講釈ばかり垂れているアカウントは、読者から見れば「売り込み臭い、退屈なカタログ」と同じです。すぐにミュート(非表示)にされるか、フォローを外されてしまいます。
読者が求めているのは、完璧なビジネスの教科書ではなく、それを運営している「人間」の温度感です。
ですから、5回の投稿のうち、4回は以下のような「挨拶」や「箸休め(日常の風景)」で十分なのです。
- 1回目(朝):「おはようございます!今日の東京は気持ちの良い秋晴れです」
- 2回目(昼):「今日のお昼は会社の近くの定食屋さんで生姜焼きを食べました。午後も頑張りましょう」
- 3回目(午後):「オフィスの観葉植物に新しい芽が出ているのを見つけました」
- 4回目(夕方):「今日も1日お疲れ様でした。冷え込んできたので、暖かくして帰りましょう」
- 5回目(夜):ビジネスに関するちょっとした気づきや、自社ブログの紹介
専門的なノウノルや自社商品のPRは、5回中1回、あるいは数日に1回あれば十分に機能します。
3.【事例】挨拶だけで繋がった信頼関係
私自身の話をさせてください。
私は今でこそコンサルタントとして活動していますが、もともとは強烈な引っ込み思案です。ベンチャー企業に転職したばかりの頃は、会社の雰囲気になじめず、半年間まともに誰とも会話ができずに、昼休みは一人で喫茶店にこもっているような人間でした。
そんな私がXで多くのお客様やパートナーと繋がることができたのは、優れたマーケティング論をひけらかしたからではありません。ただ毎日、飾らずに「おはようございます」「お疲れさまでした」と挨拶を続け、たまに日常の失敗談を呟いて、自らの「人肌感」を開示したからです。
それを見た読者が「この人は嘘をつかない、親しみやすい人だな」と、ザイオンス効果(単純接触効果)によって信頼を寄せてくれるようになったのです。
さらに最近のX(旧Twitter)の運用では、投稿画像に「ALT(代替テキスト)」という画像説明文を設定する企業が増えています。これは視覚障害のある方が音声読み上げ機能を使った際に画像内容を伝えるためのアクセシビリティ対応です。こうした「相手を思いやる、見えないところでの誠実なひと手間」を添えることこそが、SNSにおいて企業のブランド価値(信頼感)を何倍にも高めることになります。
完璧を求めず、まずは1打席から
Xの運用で大切なのは、ノウハウを語る「偉い先生」になることではありません。毎日同じ場所で顔を合わせる「なじみの隣人」になることです。
「1日5回」という数字に圧倒される必要はありません。
まずは明日の朝、スマホを開いて「おはようございます」と1回投稿することから始めてみてください。その小さな1歩の積み重ねが、将来、あなたの会社を支える強固なファン作りの土台になっていくのです。


