医療等データの利活用法制等の整備と関連事業分野

医療等データの利活用法制の整備は、国民の健康増進、医療の質向上、研究開発の推進、産業創出につながる基盤である。日本では個人情報保護法・次世代医療基盤法などにより、医療情報の利用目的や取り扱いが規定されているが、法令が複数に分散し手続きが煩雑であること、医療機関ごとにデータ形式が異なることが課題として指摘されている。政府はこれを受け、データ標準化（FHIRなどの国際標準フォーマット）、同意管理のデジタル化、データ提供の透明性向上を柱に制度整備を進めている。

この法整備は、複数の事業分野と密接に関連する。第一に、PHR（Personal Health Record）関連サービスであり、個人が自身の健康データを一元的に管理し、アプリや保険商品と連携する市場が拡大している。第二に、遠隔医療・オンライン診療である。患者のデータが共有できることで診療の質と効率が向上し、医療アクセスの地域格差是正に寄与する。第三に、AI診断支援・創薬研究分野でのデータ活用が進む。大量の匿名化データを活用することで、診断精度向上や新薬開発の加速が期待される。さらに、医療DX、保険・ヘルスケア事業など周辺産業にも波及効果が生じる。

安全性確保と利活用の両立を図る制度整備により、日本の医療データを活用した新たなビジネスと価値創出が本格化していく。