日本遠隔医療学会プログラム
2020年1月21日、中国中医科学院広安門病院の斉文升主任は、北京中医病院の劉清泉院長とともに武漢に到着。その後、武漢金銀潭病院、武漢市中医病院、武漢市中西医結合病院及び湖北省中医病院等4つの病院で70以上の患者に対し詳しい診察を行い、その中には一般病棟の軽症患者もICUの重篤患者も含まれていた。彼は、今回の新型肺炎の臨床的特徴、発病プロセス等の情報を収集・整理し、深い考察を加え、新型コロナウイルス関連肺炎についての中医学的認識をまとめた。また、現地の専門家の治療意見を参考に、『新型コロナウイルスに感染した肺炎の診療手引き(試行第3版)』の中医学治療案の初稿を作成した。
1月23日深夜0時、北京へ戻った斉文升主任は広安門病院の観察病棟内で夜通し武漢の状況をまとめ、中国国家中医薬管理局及び広安門病院に感染地域の実情を報告し、医療チームを組織して武漢の支援を行う必要性を訴え、自ら再び現地の最前線に赴くことを志願し、上層部からの重視を受けた。
1月25日12時、旧歴の1月1日、広安門病院医療チームのリーダーとして、斉文升主任は再び武漢の救援に駆け付け、臨床第一線の治療に当たった。以下は彼が収集・総括した現場の臨床資料に豊富な専門的知見を合わせ、深い考察を加えて完成した新型コロナウイルス関連肺炎に関する中医学認識である。1月26日に公開済みの第一部分では、病因病機及び見立てのポイントについて重点的に紹介した。本文章は第二部分であり、治療及び予防案について重点的に紹介する。
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旧歴の1月1日、再び武漢に到着した斉文升主任一行
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武漢の金銀潭病院の隔離エリアで患者を診る斉文升主任
治療
早期
一、寒湿疫证
症状:微熱または発熱無し、微熱は午後によく見られる、喉の乾いた痛み、全身のだるさ、背中の痛み、乾いた咳で痰は少ない、胸の苦しさと息詰まり、疲れと食欲不振、暗紅舌で舌苔が白く、濡/緩脈。一部の発病では舌が赤く、舌苔が薄く黄ばみ、湿毒挟熱証。
病機:湿毒困脾阻肺
1.寒湿疫証、炎症反応による発熱が重くない患者
処方:加味神術散
漢方薬:蒼朮(ソウジュツ)30g、麻黄(マオウ)10g、草果(ソウカ)10g、蝉蛻(ゼンセイ)10g、炒梔子(ショウシシ)10g、豆豉(トウチ)10g、川芎(センキュウ)10g、黄芩(オウゴン)10g、金銀花(キンギンカ)30g、桔梗(キキョウ)10g、生甘草(ナマカンゾウ)10g
用法:2包/日、1包/6時間、温服。
2. 湿毒挟熱証、炎症反応による発熱が重い患者
処方:加味杏仁滑石湯
漢方薬:杏仁(キョウニン)10g、滑石(カッセキ)30g、黄芩(オウゴン)15g、黄連(オウレン)10g、藿香(カッコウ)15g、生石膏(ショウセッコウ)30g、炒梔子(ショウシシ)10g、防風(ボウフウ)10g、通草(ツウソウ)10g、葛根(カッコン)15g、生甘草(ナマカンゾウ)10g
用法:2包/日、1包/6時間、温服。
中期
二、肺痹証、肺損傷咳逆喘息性/窒息性肺炎が重い患者
症状:発熱は高い場合と低い場合があり、顔色が紫がかり、胸の苦しさと喘息、便秘、紫紅舌または暗紅舌で、舌苔は黄ばんでいる。
病機:湿毒化熱滞腑閉肺
処方:加味宣白承气汤
漢方薬:生麻黄(マオウ)15g、生石膏(ショウセッコウ)30g、生大黄(ナマダイオウ)10g、青黛(セイタイ)10g、海浮石(カイフセキ)30g、旋覆花(センプクカ)30g、杏仁(キョウニン)10g、葶藶子(テイレキシ)30g、蜈蚣(ゴショウ)10g、蝉蜕(ゼンセイ)15g
用法:2包/日、1包/6時間、温服。
後期
三、内閉外脱証、よく感染性合併症を起こす、重篤な症状、敗血症性ショック、多臓器不全患者。
症状:高熱、意識朦朧や失神、胸部腹部の灼熱感、手足逆冷。紫紅舌、攣縮、舌苔は乾燥し黄褐色、濡/緩脈。
病機:内閉外脱
処方:四維湯
漢方薬:人参30g、附子15g、大黄15g、生石膏(ショウセッコウ)30g
用 法:2包/日、1包/6時間、温服。胃腸機能が低下している場合は結腸点滴、2包/日、1包/6時間。
注射液:参附注射液、生脈注射液+醒脳静注射液、血必浄注射液。
予防
一、解毒辟穢処方
漢方薬:桑葉1g(宣肺)、茅根(ボウコン)2g(利尿)、蒼朮(ソウジュツ)3g(辟穢)、金銀花(キンギンカ)2g(解毒)、陳皮2g(脾胃を整える)
効能:辟穢解毒、宣肺・利尿・脾胃を整える
用 法:湯300mlでお茶代わりに飲む。2回/日。中国南方の天候により湿りがちな地域では茅根は不要、各地その土地の気候条件に基づき加減すること。
二、予防燻消法
漢方薬:蒼朮(ソウジュツ)50g、艾葉(ガイヨウ)15g、薄荷(ハッカ)5g
効 能:芳香辟穢、室内消毒
用 法:水2500mlに入れ軽く沸騰させて燻蒸する。燻蒸面積は20~50㎡、途中換気する。
第一部分は、以下のリンクをご覧ください。
斉文升:新型コロナウイルス関連の肺炎に関する中医学的認識(一)
続きは・・・
斉文升主任は武漢の最前線での治療に深く関わり、自ら現場の中医学臨床情報を入手しています。新型コロナウイルス関連肺炎への認識もますます深まると思われます。今後も更新しますので、どうぞご注目ください。
(当文書は転載です)