【車種別判断基準⑤<ジムニー編>】ジムニーは「年式」ではなく、「完成度」で見る車です
先日、Threadsで興味深い投稿を見かけました。
10年以上乗った、走行距離25万kmを超えるハイエースレジアスを買い替えるため、一括査定に出したという話です。
最初の買取業者が提示した金額は60万円。
次の業者は62万円。
ところが、最初の業者に断りの電話を入れると、70万円を提示されたそうです。
それでも断ると、今度は100万円。
最初の60万円から、実に40万円も上がったことになります。
投稿だけでは、最終的にいくらで売却したのか、100万円という提示にどんな条件があったのかまでは分かりません。
ただ、この話を読んで、私は車買取業界が抱えている大きな問題を改めて考えさせられました。
それは、査定額の根拠がお客様に見えていないことです。
なぜ60万円だった車が100万円になるのか
まず、買取業者によって査定額が違うこと自体は不思議ではありません。
中古車には、新車のような定価がありません。
オークション相場を参考にする業者もあれば、直接販売する業者もあります。
国内で再販するのか、海外へ輸出するのかによっても価値は変わります。
同じ車でも、業者によって販売ルート、必要経費、利益の考え方が違うため、提示できる金額に差が生まれます。
特に、今回のように走行距離が25万kmを超える古いハイエース系の車両は、国内需要だけでなく海外需要も含めて評価する必要があります。
年式、型式、エンジン、駆動方式、車両状態などによって、価値が大きく変わることもあります。
ですから、60万円という査定額が必ずしも不当に安いとは言えません。
100万円という査定額が必ずしも高すぎるとも言えません。
問題は、なぜ最初は60万円で、断られたら100万円になったのかということです。
査定額と買取金額は同じではない
私は日々のブログで、査定額と実際の買取金額を分けて考えることの重要性をお伝えしています。
車の市場価値をどう評価するか。
その車をいくらで販売できると考えるか。
そこから、輸送費、オークション手数料、整備費、その他の経費や利益をどう見込むか。
こうした計算を経て、買取店が提示する金額が決まります。
つまり、査定額は市場情報をもとにした評価であり、実際の買取金額は業者の経営判断によっても変わります。
利益を多く確保するのか。
利益を減らしてでも買い取るのか。
どうしても仕入れたい車なのか。
その違いによって、提示額が変わることはあります。
だからこそ、お客様には査定額の根拠と、買取金額が決まる仕組みを説明する必要があると思っています。
断ったら40万円上がるということ
今回の投稿で、私が特に気になったのはここです。
お客様が断りを入れた途端、提示額が上がったという点です。
もちろん、業者側が改めて販売先を確認したり、利益を見直したりした可能性もあります。
最初の提示額が暫定的なものだった可能性もあるでしょう。
しかし、そうであれば、その理由を説明すればよいのです。
「最初はこの販売ルートを想定していましたが、別の販売先が確認できたので金額を上げられます」
「当初の利益を見直し、今回はこの金額まで提示できます」
こうした説明があれば、お客様も金額が変わった理由を理解できます(それにしても上がりすぎですが)。
ところが、理由が分からないまま60万円が100万円になれば、どう感じるでしょうか。
「最初の60万円は何だったのだろう」
「断らなければ40万円安く売っていたのだろうか」
そう思うのも無理はありません。
そして、こうした経験は、その業者だけでなく車買取業界全体への不信感につながってしまいます。
交渉が得意な人だけが得をする仕組みでよいのか
もう一つ、考えたいことがあります。
それは、お客様の交渉力によって売却金額が大きく変わってしまうことです。
複数の業者を比較する。
すぐには決めない。
断りの連絡を入れる。
他社の査定額を伝える。
こうしたことができる人は、より良い条件を引き出せる可能性があります。
一方で、交渉が苦手な人もいます。
何社も査定を受ける時間がない人もいます。
強く勧められると断りにくい人もいます。
そうした人が、十分な判断材料を持たないまま売却してしまうこともあるでしょう。
もちろん、商売に価格交渉があること自体を否定するつもりはありません。
ただ、車の価値を知らないことが、お客様の不利益につながりやすい構造については、業界として考える必要があると思います。
本当に必要なのは、査定額の競争だけではない
車買取業界では、どうしても「他社より高く買います」という競争になりがちです。
一括査定という仕組みも、基本的には複数の業者を競わせることで高い金額を引き出すものです。
それ自体には、お客様にとってのメリットがあります。
ただ、私は以前から疑問を感じています。
お客様が本当に知りたいのは、査定額だけなのでしょうか。
なぜその金額なのか。
今売るべきなのか。
もう少し乗り続けたほうがよいのか。
どのような売却先が適しているのか。
契約後に減額される可能性はないのか。
代金はいつ支払われるのか。
こうしたことも含めて、納得して判断したいのではないでしょうか。
高い金額を提示することは大切です。
しかし、高い金額を提示することと、お客様が安心して売却できることは同じではありません。
買取店が説明すべきこと
私たちの会社では、車両診断書を使って査定額の根拠をお伝えする取り組みを続けています。
オークションの取引データを確認し、比較する車両との違いを整理する。
現在の市場で、どの程度の価格帯が考えられるのか。
その価格帯には、どんな不確実性があるのか。
安全に考えた場合と、強気に考えた場合で、どの程度の違いがあるのか。
そうしたことをできるだけ言葉にして、お客様にお伝えしています。
もちろん、私の見立てが必ず正しいわけではありません。
中古車市場には不確実性があります。
予想より高く売れることもあれば、低くなることもあります。
だからこそ、判断した根拠を残しておくことに意味があると思っています。
お客様がその場で売却を決めなくても構いません。
ご家族と相談してもよい。
別の業者と比較してもよい。
乗り続けるという判断もあります。
大切なのは、お客様自身が納得して決められることです。
車買取業界が本当に変えなければならないこと
私は、これからの車買取業界には、査定額の競争だけではない価値が必要になると思っています。
それは、査定額の根拠を説明すること。そして、お客様が判断するための情報を開示することです。
車を高く買い取る技術は重要です。
相場を読む力も必要です。
海外需要を把握することも欠かせません。
ただ、それらの知識を業者だけが持っていて、お客様には金額だけを伝える。
その構造が変わらなければ、業界への不信感もなかなかなくならないのではないでしょうか。
60万円の査定額が100万円になった。
今回の投稿は、一見すると「交渉したら高く売れそうになった」という話です。
しかし、私には別の問題が見えました。
なぜその金額なのかを説明しないまま、売却の判断をお客様に求めていること。
ここを変えていきたいと思っています。
車を高く売ることも大切です。
でも、それ以上に大切なのは、売却したあとに後悔しないこと。
そのために必要なのは、業者との駆け引きに勝つことではなく、自分自身の判断基準を持つことです。
そして、私たち買取業者の仕事は、その判断基準をお客様に届けることでもある。
私はそう考えています。


