【世界から見る中古車市場③】ロシア市場はなぜ中国車だらけになったのか?
8月16日、このブログで一本の記事を書きました。タイトルは、
「お盆休み明け、中古車相場はどう動くのか」
でした。
あれから約10日。
お盆休みが終わり、中古車オークションも再開しました。
今回は、休み前に考えていたことが実際の市場でどうなったのか。
「答え合わせ」をしてみたいと思います。
休み前、私は何を見ていたのか
今回のお盆休み前には、中古車市場を取り巻く環境にいくつか気になる変化がありました。
まず、為替です。
7月末までドル円は大きく円安方向へ進んでいました。
円安は、日本の中古車輸出には基本的に追い風です。
海外のバイヤーから見れば、同じ外貨予算でも日本のオークションで高い金額まで応札できるからです。
ところが7月末、為替が急激に円高方向へ動きました。
輸出業者にとっては、買付予算の前提が変わります。
さらに中東では、船賃、戦争保険、航路、港湾など物流面のリスクが続いていました。
そして、そのタイミングでお盆休みに入りました。
つまり、
為替は変わった。
物流にも不安がある。
でも、
それを織り込んだオークション相場が十分形成されないまま、市場が一度止まった。
そんな状況でした。
だから私は、
「休み明け最初のオークションを見たい」
と書きました。
そして市場が再開した
休み明けのオークション。
最初の答えは、私が想定していたより強いものでした。
少なくとも、
「円高になったから中古車相場が一気に崩れた」
という結果にはなりませんでした。
これはとても興味深いです。
普通に考えれば、
円高になる。
↓
輸出業者の円換算での買付余力が下がる。
↓
オークションの応札上限が下がる。
↓
中古車相場が下がる。
という流れを想像します。
もちろん、この構造自体は間違っていません。
でも、実際の市場はそれだけでは動きませんでした。
なぜ相場は簡単に崩れなかったのか
ここからが市場観察の面白いところです。
考えられる理由はいくつかあります。
一つは、輸出先が分散していることです。
今年の日本中古車輸出を見ると、UAE向けは大きく減っています。
一方で、ロシアやタンザニアを中心とした東アフリカ向けは強い。
つまり、
一つの出口が弱くても、別の出口が買っている。
そんな構造になっています。
中古車市場にとって「出口が複数ある」ということは非常に重要です。
国内小売。
ロシア。
中央アジア。
東アフリカ。
中東。
同じ車でも、複数の買い手が存在する車は、
一つの市場が弱くなっても別の買い手が支えてくれることがあります。
「円高=中古車安」ではなかった
今回、改めて感じたのはこれです。
一つの材料だけで相場を予測してはいけない。
円高は確かに輸出には逆風です。
でも、
海外需要が強ければどうでしょう。
国内需要が強ければどうでしょう。
良質な中古車の供給が足りなければどうでしょう。
別の国のバイヤーが買えばどうでしょう。
市場には、常に複数の力が働いています。
だから、
「円安だから上がる」
「円高だから下がる」
とは単純には言えません。
だから「平均価格」だけを見ない
もう一つ、今回引き続き注目しているのが成約率です。
7月のUSS全体では、平均成約単価は134.5万円。
前年を上回る水準でした。
ところが成約率は63.8%。
前年同期の65.9%を下回っています。
ここが重要です。平均価格だけを見れば、
「中古車相場は強い」
と言えます。
でも成約率を見ると、
何でも売れているわけではない。
という別の景色が見えてきます。
私は今の市場を、
「崩れ」ではなく「選別」
と見ています。
欲しい車には高い金額が入る。
一方で、出口が弱い車には買いが入らない。
平均価格が高いままでも、その内側では車による差が広がっている可能性があります。
高値より「誰が買っているのか」を見る
査定をしていると、過去のオークションデータを確認します。
もちろん大切です。
でも、
「先週この車が150万円で売れた」
という情報だけでは足りません。
私が知りたいのは、
なぜ150万円になったのか。
です。
国内小売業者が競ったのか。
ロシア向けなのか。
東アフリカ向けなのか。
中東向けなのか。
たまたま状態の良い一台だったのか。
複数の業者が競ったのか。
一社だけが突出して買ったのか。
同じ150万円でも、その意味はまったく違います。
そして、その買い手が次回もいるのか。
そこまで考えて、初めて「相場」になります。
相場は「点」ではなく「流れ」で見る
今回の記事を書くために、休み前から市場を追い続けました。
為替が動く。輸出環境が変わる。
物流が変わる。市場が休みに入る。
そしてオークションが再開する。
一つひとつの出来事を単独で見れば、ただのニュースです。
でも、それを時間軸でつなげると、
市場の流れ
になります。
私は査定の仕事で、この流れを見ることがとても大切だと思っています。
直近の落札価格を見ることは誰でもできます。
難しいのは、
その価格がこれからも続くのかを考えること。
だから、為替も見る。
輸出台数も見る。
海外の制度も見る。
物流も見る。
成約率も見る。
そして実際のオークションを見る。
全部つながっています。
予想が外れることにも価値がある
今回、私は休み前に、
「円高の影響で、輸出車の買いが弱くなる可能性がある」
と考えていました。
ところが、休み明け最初の市場は想定していたほど弱くありませんでした。
私は、こういう結果も大切だと思っています。
相場予想は、当てることだけが目的ではありません。
なぜ予想と違ったのかを考えること。
そこから次の判断材料が生まれます。
もし、
「円高になったのに相場が下がらなかった」
のであれば、
そこには円高以上に強い別の力が働いている可能性があります。
海外需要なのか。国内需要なのか。供給不足なのか。車種の選別なのか。
それをまた観察していきます。
今のところ「崩れ」ではなく「選別」
今回のお盆休み明けの市場を見た、現時点での私の見方です。
中古車市場全体が崩れているとは思いません。
ただし、
すべての車が強いとも思いません。
出口のある車は強い。
複数の買い手がいる車も強い。
海外需要のある車も強い。
一方で、
一つの輸出先に依存している車。
物流コストの影響を受けやすい車。
為替メリットだけで買われていた車。
こうした車は慎重に見る必要があります。
だから今は、
「高いか、安いか」ではなく、「選ばれているか」
を見る市場なのだと思います。
今日の判断基準
今回のお盆休みを挟んだ市場から、一つ大きな学びがありました。
相場は、一つのニュースでは決まらない。
為替。海外需要。物流。規制。国内需要。供給量。
そして買い手の判断。
これらが同時に動きながら、一台の中古車の価格が決まっています。
だから、
「円高になったから売らないほうがいい」
「円安だから今すぐ売ったほうがいい」
という単純な話にはなりません。
大切なのは、
自分の車を、今誰が欲しがっているのか。
そして、
その買い手は、今も同じ金額を出せるのか。
そこを見ることです。
今回のお盆休み明け。
最初の答えは、
「相場は想定ほど弱くなかった。ただし、選別は続いている」
でした。
もちろん、これで答えが確定したわけではありません。
ここから数開催。
成約率。応札数。流札。再出品価格。
そして車種ごとの強弱。
引き続き追いかけていきます。
相場を見るとは、昨日の最高値を探すことではありません。
今日もその価格を出す買い手がいるのかを確認し続けること。
これが、今の私の中古車相場の見方です。


