マンションの修繕工事や建替えに関する区分所有法制の見直し
前回のコラムでは故人が不動産を所有していた場合に遺産分割で不動産を売却するときの注意点を不動産の市場価値が高い場合と低い場合とで比較してみましたが、本年4月1日の民法改正により遺産分割のルールが改正されました。
その改正内容は民法904条の3で「相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割は具体的相続分ではなく法定相続分による」と規定したのです。
遺産分割の対象となる財産は、特定の相続人に行っていた生前贈与などは相続財産の前渡しとして取り扱うために特定の相続人の特別受益として持ち戻しをして相続財産に加算するのですが、相続開始後10年経過したら特別受益や寄与分は考慮しないルールに改正されたのです。
この改正により生前贈与などの特別受益がない相続人においては遺産分割で10年経過すると取り分が減ることになります。
遺産分割協議がもめる要因として被相続人から相続人が生前贈与を受けていたような特別受益がある場合や介護等で被相続人に多大な貢献をした寄与分がある場合には分割協議がまとまらずに長期化することが多いので、これらを解消するのが改正の狙いです。
その一方で、生前贈与をうけていた特別受益のある相続人が遺産分割に意図的に合意をしないケースがあるかもしれませんが、そのときはどのような対応をしたら良いのでしょうか。
この場合、相続開始後10年経過する前に家庭裁判所へ遺産分割を請求すれば特別受益や寄与分を考慮する改正前のルールで行うことができますので、遺産分割で対立した場合は早めに家庭裁判所で関与してもらうことが必要です。
これは特別受益のない相続人だけでも家庭裁判所へ遺産分割の請求をすることができます。
また、改正民法が4月1日に施行されたのに続き4月27日から「相続土地国庫帰属制度」が施行、令和6年4月1日には「改正不動産登記法」が施行されることからこれら一連の制度と法改正が相続に大きな影響を与えることになると思います。
本年4月27日施行の「相続土地国庫帰属制度」は、相続又は遺贈によって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たしたときに土地を手放して国に帰属させることができる新しい制度です。
そのため相続した土地を処分したくて困っている方は是非ともこの制度を検討すべきです。
ただし、この制度を利用するには条件面でのハードルが高いので、条件をクリアできるか否かが最初のチェックポイントとなります。
相続土地国庫帰属制度はスタートしたばかりですが、この制度にご関心のある方は、法務省ホームページの相続土地国庫帰属制度に関するQ& Aをチェックしてみて下さい。
相続土地国庫帰属制度に関するQ&A