まもなく始まる法務局の遺言書保管制度!!
令和5年度の相続税と贈与税の税制改正によりこれからどのような相続対策をすれば良いかとお悩みの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
今回のコラムでは相続時に故人が不動産を所有していた場合の遺産分割の対応について考えてみたいと思います。
不動産価格の指標となる公示地価が3月22日に国土交通省から公表されましたが、全国平均での上昇率は1.6%(住宅地1.4%、商業地1.8%)で、東京圏については2.4%(住宅地2.1%、商業地3.0%)の上昇率となっているために公示地価は近年では毎年微増している
傾向があります。
土地の相続税評価は国税庁の路線価を基準に算出しますが、不動産価格は一物四価で不動産価格の比較表の通りです。
このように相続時の時価と売買価格には乖離がありますので、相続不動産を相続税の申告時までにスムーズに売買するのは難しいことです。
また、故人が不動産を所有していた場合にその不動産の価値が高いか低いかによって相続人として取るべき対応も大きく変わりますので、不動産の市場価値が高かった場合と低かった場合のそれぞれのケースにおいて遺産分割協議で揉めないための対策も必要です。
なぜなら不動産の市場価値が高かった場合は遺産分割協議の結果で当該不動産を売却する可能性も高くなるからです。
その理由として市場価値が高いとその不動産の評価額が上るので、当該不動産を取得する時に市場価値に相応しい代償金を他の相続人に支払わなければならなくなるからです。
そのため代償金の支払いができずに当該不動産の取得を断念する機会が増えていることや不動産の評価額によっても有利になる人や不利になる人が出てくることから相続人同士で争いになってしまうこともあります。
その一方で相続人全員の同意で当該不動産を第三者に売却する場合には、売却益の分配で揉めることはあってもより高値で売却したいという気持ちから相続人全員の利害は一致します。
ただし、売却益の分配方法で揉めてしまった場合に全員で同じ方向に向くのは感情面でも難しくなるので要注意です。
このようなトラブルを防ぐためには不動産を売却する時期や依頼する業者や買手を募集する期間など売却条件について相続人全員で十分な合意を取っておくことです。
次に遺産の不動産市場価値が低くて誰にも買ってもらえない場合はどうすべきでしょうか。
第三者への売却が難しい相続不動産は相続人の間で相続不動産を押しつけあいが生じることもあります。
不動産を所有すれば毎年の固定資産税の納付に加えて雑草除去や清掃等の費用が発生することからそのような煩わしさを避けたいので殆どの人は価値の低い不動産は取得したくないと思うでしょう。
現状では相続不動産のみならず隣地所有者と枝葉の越境等による伐採や除去のトラブルも多く発生しているのも事実です。
相続人の誰もが取得を希望せず協議が整わない場合は共有という選択肢もありますが、共有にした場合でも固定資産税等の税負担を誰がまとめて払い立替分の徴収をどのように処理するかなどの細かな問題も出てきますので、次世代の相続について考えると相続人全員の共有は避けるべきです。
このようなケースの対応策は不動産を代表者一人が取得してその不動産の固定資産税の納付や管理を続けることを前提に不動産以外の遺産を多めに取得する等の配慮も必要です。
交渉が決裂した場合は相続人全員の共有となってしまいますので、できる限り共有状態は避ける方向で遺産分割を進めることが得策です。
遺産に不動産が含まれる場合の相続は、遺産分割協議も検討すべき事項が多くその後も煩雑な手続が多々ありますので、遺産分割協議についてスムーズに協議を進め全員が納得できるような対応が必要不可欠です。
いずれにしても不動産の適正な価格を算出するのは難しいことから不動産相続で懸念されることがある場合は早めに専門家にご相談されることをおすすめします。