計画倒産とは? 計画的倒産との違いについて【才藤 投稿】
経営危機に瀕した会社がM&Aを検討する際には、慎重な判断と戦略的なアプローチが求められます。採算性、リスク、法的手続きなど、【売り手】と【買い手】の視点に分けて考慮すべきポイントを詳しく解説します。
【売り手】
■採算性の評価
・M&Aを検討する際には、対象会社の採算性を評価することが重要です。
・利益率や収益性を分析し、将来的な収益の見通しを考慮します。
・債務がある場合は、利息支払いや元金返済を考慮して利益を修正する必要があります。
■リスクの評価
・会社のリスク要因を評価することも重要です。
・売上の安定性、社員の流動性、将来性などを考慮します。
・また、会社の財産状態を厳密に査定する必要があります。
■後継者の検討
・採算性がある場合、後継者を探して事業を譲渡する選択肢もあります。
・会社をモノとして売却することよりも、事業の継続を考えるべきです。
■M&A詐欺に注意
・M&Aを装う詐欺も存在します。慎重に相手先を選定しましょう。
・M&A詐欺(合併・買収詐欺)は、企業がM&Aを検討する際に詐欺師によって仕掛けられる手口です。以下に詳しく説明します。
1.手口
★仲介者による詐欺:
・仲介者が買い手の存在を偽り、売り手から仲介費用を要求するケースです。
・売り手が自社の価値を低く評価していることを逆手に取り、買い手が現れたと嘘をついて手数料を要求します。
・成約直前に情報を提出して後戻りできない状況を作り、成功報酬を要求することもあります。
★海外企業との交渉による詐欺:
・国内市場が縮小している影響から、海外企業との売却・買収を進めて詐欺被害に遭うケースが増加しています。
・サイトを介したM&A仲介を利用した詐欺も見られます。
2.対策:
★仲介者選定:
・情報の取り扱いと交渉先を確認し、信頼性のある仲介者を選びましょう。
★会話録音:
・不信感を抱いた場合は、仲介先とのやり取りを録音することで証拠を残しましょう。
★契約書確認:
・契約内容を確認し、詐欺被害を避けるために入念なチェックを行いましょう。
★第三者相談:
・他の専門家に相談することで客観的な評価を得られます。
詐欺に注意しながら、M&Aを進めることが大切です。
■自社の状態を正確に評価
・経営者は自社の状態を客観的に評価し、冷静に判断するべきです。下記のステップを踏んで評価・判断しましょう。
1.財務分析:
・財務状況を評価しましょう。収益、利益、資産、負債などの数値を分析します。
・財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)を確認して、会社の健全性を把握します。
2.リスク評価:
・リスク要因を洗い出しましょう。市場リスク、競合他社、法的リスク、経営陣のリスクなどを考慮します。
・事業環境の変化や未来の不確実性に対する対応策を検討します。
3.競合分析:
・競合他社との比較を行いましょう。市場シェア、製品・サービスの差別化、競合の強み・弱みなどを評価します。
・競合他社の戦略を理解し、自社のポジショニングを把握します。
4.人的資源の評価:
・社員のスキル、モチベーション、組織文化を評価します。
・従業員の意欲や能力が会社の成長にどれだけ寄与しているかを考慮します。
5.将来の展望:
・自社の将来性を見極めましょう。市場の成長性、新規事業の展開、技術革新などを考慮します。
・現状の問題点を改善し、持続可能な成長を目指しましょう。
M&Aは重大な決断であり、上記のように出来るだけ中立で正確な評価と慎重な検討が必要です。
【買い手】
■戦略的な視点:
買収の目的を明確にしましょう。業容拡大、新市場への進出、技術・知識の獲得など、戦略的な目的を持つことが重要です。
■デューデリジェンス:
・買収対象の会社の詳細な調査(デューデリジェンス)を実施しましょう。
・財務状況、法的問題、人的資源、知的財産権などを評価します。
■評価と交渉:
・買収価格を適切に評価し、交渉を進めましょう。
・買収対象の評価額を正確に算出し、リスクを考慮して価格を決定します。
■統合計画:
・買収後の統合計画を立てましょう。
・組織の文化、人材、システムなどを統合するプロセスを計画します。
■法的手続き:
法的手続きを遵守しましょう。契約書、許認可、競争法などを確認します。
1.法律とM&Aの関係性:
・M&Aには数多くの法令が関連していますが、自ら全てをチェックするのは難しいです。
・しかし、法令を無視してM&Aを進めると無効になる可能性があるため、必要な法令を考慮する必要があります。
2.会社法と労働契約承継法:
・会社法はM&Aに適用され、債権者や従業員保護のためにさまざまな法律が定められています。
・労働契約承継法は会社分割時の労働者保護を規定しています。
3.金融商品取引法:
・金融市場のグローバル化に伴い、金融商品取引法が制定されました。
・有価証券の発行から売買などの金融取引を公正にするための法律です。
4.税法:
・法人税法などの税法はM&Aに影響を与えます。
・企業の納税担当者は適切な計算を行うために基本通達を参照します。
★基本通達とは:
・基本通達は、国税庁から発せられる税務に関する指針や解釈をまとめたものです。
・税務の専門家や納税担当者は、基本通達を参照して税務手続きを適切に行います。
★法令の解釈:
・税法は複雑であり、法令の解釈には専門的な知識が必要です。
・基本通達は、法令の解釈や適用方法を具体的に示しています。
★税務申告:
・納税申告書の作成や提出に際して、基本通達を参照することで、正確な計算や記入を行います。
・例えば、所得税の控除や課税所得の計算方法などが詳細に記載されています。
★税務相談:
・納税者や企業は、税務相談を通じて基本通達に基づいたアドバイスを受けることができます。
基本通達は税務の専門家にとって重要な情報源であり、正確な計算や申告を行うために活用されています。
これらの法律を理解し、M&Aを進める際には専門家のアドバイスを受けることが重要です。
以上のポイントを考慮しながら、買収を進めていくことが重要です。
≪まとめ≫
M&Aに関わらず売り手は出来るだけ高く、早く売りたいと考えます。一方で買い手は出来るだけ良いものを安く、早く買いたいかどうかはその時の状況によるとおもいますが、のんびりしていると競合相手に先手を取られますので早いこしたことはありません。
倒産と直面している場合、わたしたちが経験した多くは会社丸ごとではなく、採算のあう事業を切り分けて行うケースがほとんどです。
債務超過という問題が根底にありますのでこの債務を抱えながらでも事業に少しのテコ入れで化ける潜在的な可能性がある場合は例外です。
実際の現場では手遅れのケースも多々あり、悔やまれる場面を見てきました。
M&Aの準備は1日2日で出来ることではありません。時間・労力・資金・知識が必要です。今回、記載したようなプロセスは事業を残したい場合でも必要であることは認識してもらい経営危機管理に役立ててもらえると幸いです。
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