【よくある質問】 倒産したら保険はどうなるのか?【才藤 投稿】
□倒産とは
倒産とは、資金不足で債務を残して事業継続ができなくなること。
実際には「倒産」という言葉自体は法律用語ではないので簡単に補足すると、会社や事業の資金がなくなり、取引相手や従業員の給与、金融機関への支払い、税金、社会保険、事業を続けるために必要な対価を支払えない状態に陥っていることを指します。
経営者の当事者視点と第三者の視点では異なる捉え方をされることもあります。
例として、当事者である経営者は資金を何とか繋いで事業を継続しているが、まわりの取引業者からみると火だるま状態であることは明らかで倒産状態だと見られているケース。つまり第3者からみて客観的な視点で冷静になってみると、事実上は倒産だと判断されることもあり得えます。そうなると徐々に取引先は今ある売掛金を早々に回収して取引関係から離れていくことになるでしょう。そして噂は広まり金融機関の耳にも入る事態に発展し、本当に倒産してしまう。噂による風評被害というものは制御不能なので本当に厄介です。
あの会社は潰れそうだ、倒産しそうだ、一度この言葉を聞いてしまうとその疑念を完全になくすことは難しいです。健全な会社でも噂に潰されるリスクはあることは念頭においてリスク管理をする必要があると言えます。内部の情報管理は自分たちの目が届く範囲で可能ではあるが、外部については管理には限界がありコントロールはしようがないというのが現実でしょう。故に内部からの情報漏洩等のリスク管理はとても重要です。
□継続か倒産か【処理方法ついて】
事業継続と事業停止(倒産)の処理方法について
図にまとめると下記のようになります。
※会社更生法はここでは割愛します。
□メリットとデメリットについて
A-a法的処置・民事再生
〇メリット
・債務を圧縮できる
会社の債務を圧縮できるというメリットがあります。債権者に、債権の返済を一部免除してもらったり、支払い期限を延長してもらったりして、会社が負っている債務を軽減することができます。
・事業を継続できる
破産などとは違って会社を再建するための手続きなので、事業を継続できるという大きなメリットがあります。再生計画を実行して事業が軌道に乗れば、会社をそのままの形で継続することができます。
・経営陣を交代せずに済む
原則として、手続き開始後も会社の経営陣が継続して業務遂行と財産管理を行える点も大きなメリットです。再建型の会社更生手続きでは、経営陣は退陣し第三者によって手続きが進められますが、民事再生では、経営陣は退陣せずにそのノウハウ等を活かしながら手続きを進めることが可能です。
・社員の雇用を継続できる
民事再生では、事業を継続するため、社員の雇用も継続できる可能性があります。ただしスポンサー型の再建計画においては、スポンサーの意向によって社員のリストラが条件になることもあります。
〇デメリット
・企業の信頼が低下する
民事再生手続きを行えば、官報などから周囲に明らかになるため、顧客や取引先等からの信頼が低下することは間違いありません。また企業イメージの低下によって、消費者の購買行動が変化し、商品が売れないといった状況に陥る可能性もあります。
・手続きが複雑で時間がかかる
民事再生手続きは、専門的な知識を持つ弁護士や司法書士の協力を必要とするため、手続きが複雑で時間がかかることがあります。
・債権者の合意が必要
再生計画を実行するためには、債権者から一定数の合意を得る必要があります。債権者の中には合意しない場合もあるため、交渉が難しいことがあります。
・経営者の信用が損なわれる可能性
経営者の信用が損なわれる可能性があります。特に再生計画が失敗した場合、信用がさらに低下する場合があります。
続いては担保に関連するデメリット です。
・担保の処理が複雑
民事再生手続きにおいて、担保物件の処理は複雑です。債権者との交渉や評価、担保権の解除などが必要です。
・担保物件の処分が必要
担保物件を処分する必要がある場合、その手続きに時間と労力がかかります。また、担保物件の価値が債務額をカバーしない場合、追加の債務が残る可能性があります。
・担保物件の評価による影響
担保物件の評価によって、債権者との交渉が変わることがあります。担保物件の価値が高ければ、債権者の合意を得やすくなりますが、低い場合は難しいことがあります。
・再生計画の実行が難しい場合もある
再生計画を実行するためには、経営者や従業員、債権者の協力が必要です。しかし、経営状況や市場の変化により、再生計画の実行が難しい場合もあります。
A-b私的整理・非倒産(再建型)
〇メリット
・企業の存続が可能
私的整理は再建型の倒産処理手続きであり、会社の存続を目指すことができます。他の再建型手続きと比べて柔軟性があります。
・簡易迅速な手続き
裁判所を通さないため、手続きが簡易で迅速に進行します。また、予納金を支払う必要がないため、コストも低く抑えられます。
・取引先との信用を保つことができる
取引先を対象外として債務整理を進めるため、信用を保つことができます。重要な取引先との関係を維持できる点が大きなメリットです。
〇デメリット
・手続が不透明であること
当事者間の話し合いを本質としているため、手続が不透明であるというデメリットがあります。他のステークホルダーにとっては理解しづらい場合があります。
・合意が得られない場合のリスク
債権者との合意が得られない場合、私的整理による解決は望めません。合意形成には時間と労力がかかることもあります。
・信用情報への影響
私的整理を行うと、信用情報に金融事故履歴が残り、新規でのローンやクレジットカードの利用に影響を与える可能性があります。
・法的な強制力がない
任意整理は法的な強制力がないため、債権者が和解に応じない場合もあります。
B-a 法的処理・法人の破産
〇メリット
・資金繰りの悩みから解放される
最大のメリットは、資金繰りの悩みから解放されることです。法人が債務に苦しむ場合、破産手続きを利用することで精神的な負担を軽減できます。
・督促から解放される
破産手続きを弁護士に依頼すると、督促などの連絡窓口が弁護士になります。債権者からの直接的な督促を回避できます。
・代表者も免責される
代表者が連帯保証人として債務に関与している場合、破産手続きにより代表者個人も免責されることが通常です。
〇デメリット
・事業継続ができない
法人破産により会社は解散し、事業を継続することができなくなります。
・代表者自身が信用を失う可能性がある
代表者の信用が損なわれる可能性があります。
・会社のノウハウが散逸してしまう
会社のノウハウやブランド価値が失われることがあります。
・会社財産は基本的に換価される
財産は清算され、債権者に分配されます。
・従業員の雇用を守ることはできない
法人破産により従業員の雇用を守ることは難しいです。
・連帯保証人に迷惑をかける
連帯保証人として関与している他の人々に迷惑をかけることがあります。
・手続きが非常に複雑である
破産手続きは専門的で複雑な手続きですので弁護士へ依頼することをお勧めします。
B-c放置逃亡
〇メリット(決してメリットとはいえるものではない)
・一次的な問題の先送りと債権者対応などを回避できることもある。しかし、お勧めはできません。
倒産処理を行わずに放置逃亡することで、債権者からの取り立てなどの嫌なことを避けることができる場合があります。しかし、問題解決にならないだけでなく、時間と共に問題が大きくなり被害者も増やすことになることにもなりかねません。破産することは罪ではないが、放置逃亡は別の意味で罪が重くなると言えます。
〇デメリット
・債権者からの取り立てを無視することは難しい
債権者は放置した債務の取り立てや差押えを行います。経営者にとって、債権者からの取り立てを無視することは難しいことです。本人名義の資産(口座にあるお金、不動産や動産など)は時効までいつでも差押えられる状況が続きます。
・放置した債務からの影響
時効までの期間、債権者からの取り立てにさらされることになります。また、放置逃亡により経営者の生活が崩壊する可能性があります。
・住民票の問題
住民票を移せなくなるリスクがあります。これは再起・再建に大きな影響を及ぼす点です。また、この問題は生活保護の受給や健康保険加入にまで影響が出る恐れがあります。
最終的には、具体的な状況に応じて選択することが重要ですが、放置逃亡は多くのリスクを伴う選択肢であることを理解しておいてください。
□総括
ここでは継続か倒産かとなった場合にそれぞれの処理方法について分かりやすくするため簡略化して紹介しました。
事業を継続する場合、私共の分類では「倒産」とは呼ばないことになります。法的処理でいえば、民事再生法が該当します。会社更生法は中小零細企業では一般的ではなく、法によらない私的処理では再建型の任意整理などが選択肢となります。
事業継続が難しい場合、放置逃亡以外にも法的処理の法人の破産が一般的です。私的処理では任意整理が選択肢となりますが、運用によって異なることに注意が必要です。
最終的には、専門家のアドバイスを仰ぎながら具体的な状況に応じて適切な処理を選択することが極めて重要となります。
また、放置逃亡を除けば最終的には専門家、つまり弁護士が必要になってきます。
私共の経験からも弁護士選びはより良い再起の為にはとても重要なことになります。
当事務所は必要であれば有能な弁護士をご紹介することもできます。 また1000件以上の相談実績がありますので安心してご相談ください。
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