相続対策は誰に相談すればいい?
「相続対策」と聞いて、まず「相続税対策」を思い浮かべる方は少なくありません。
生前贈与や生命保険の活用、不動産の活用による評価圧縮など、「いかにして相続税を抑えるか」という話は、相続を考えるうえでよく取り上げられるテーマです。
確かに、相続税の負担は無視できません。
特に都市部に不動産を所有している場合、相続税の納税額が数千万円にのぼるケースもあります。
税額を少しでも抑えるために対策を講じることは、決して間違いではありません。
しかし・・・。
実は「相続税対策」は、相続対策全体の“ほんの一部”に過ぎません。
むしろ、相続税ばかりに意識を向けすぎると、本当に大切なことを見落としてしまう危険すらあります。
では、「本当に必要な相続対策」とは何か。
相続対策は、大きく分けて以下の3つの柱から構成されています。
1.遺産分割対策
遺産分割対策とは、相続人同士の「争いを防ぐための対策」です。
どんなに節税が成功したとしても、遺された家族が相続でもめてしまえば元も子もありません。
特に不動産が相続財産に含まれる場合、「誰が住むのか」「どう分けるのか」といった問題は避けて通れません。
たとえば、配偶者が住み続けたい自宅が、法定相続分で分けられてしまうと、売却や代償金の話になり、親族関係に亀裂が入ることも。
こうした問題を避けるためには、生前に「誰に何を渡すか」を明確にし、遺言書などの形で意思を残すことが重要です。
2.納税資金対策
相続税がかかる場合、原則として現金一括での納税が求められます。
納税資金の準備ができていなければ、急いで不動産を売却したり、相続人が借金をして納税したりと、かえって資産を損ねることにもなりかねません。
特に「不動産はあるけど現金が少ない」方は注意が必要です。
資産が不動産に偏っている場合、納税資金の確保は早めに検討すべき重要課題です。
生命保険の活用や不動産の一部売却、または賃貸化による収益確保など、納税に備えた準備が必要になります。
3.相続税対策(節税)
そして、ようやくここで「相続税をどう抑えるか」という話になります。
確かに、暦年贈与や配偶者控除、小規模宅地の特例など、法律で認められた手段を使って節税を図ることは可能です。
しかし、節税ありきの対策は、時として家族関係を悪化させたり、将来のトラブルを招くことがあります。
たとえば、「長男に不動産を生前贈与したが、他の子どもたちには何もなかった」という場合、贈与を受けた長男が相続時に非難されることがあります。
節税が成功しても、家族の信頼関係が壊れてしまっては意味がありません。
相続対策は「家族との対話」が前提
ここまで述べた3つの対策は、どれか一つだけに偏って行えばよいものではありません。
それぞれの対策は密接に関連しており、バランスよく進めることが理想です。
そのためには、「家族との対話」が欠かせません。
自分が亡くなったあとに、家族がどのような状況に置かれるのか、どんな気持ちで相続に向き合うのか。
それを想像しながら、家族の理解を得つつ対策を講じることが大切です。
ただし、「自分の考えを伝えるのは気が重い」「子どもたちにあまり口出しされたくない」というお気持ちもあるでしょう。
そういった場合でも、少なくとも「どのようなトラブルが起こり得るか」については、相続に詳しい専門家とよく相談しておくことをおすすめします。
相続は、家族の数だけ形があります。
他人の成功例やネットの情報を参考にしても、うまくいかないことが多いのが現実です。
大切なのは、「自分の家族にとって何が最善か」を軸に考えること。
そのためには、相続に関する全体像をしっかり把握したうえで、長期的な視点から対策を講じることが不可欠です。
節税や財産の分け方よりも大切なのは、「家族に想いをつなぐこと」です。
相続対策とは、単なる財産の準備ではなく、「家族がより良く生きる未来のための準備」なのです。



