安倍総理大臣が退任、これからどうなる?

西山広高

西山広高

テーマ:時事コラム



安倍総理が辞意表明


2020年8月28日、安倍晋三内閣総理大臣が辞意を表明しました。

まずは、これまで7年8カ月にわたり総理大臣という重責を担ってこられたこと。難病と闘いながらも史上最長期間政権を担当し、劇的な改善とは言えないまでも緩やかな景気回復に貢献されてきたことは評価されてよいと感じます。 本当にお疲れさまでした。

在任期間中、必ずしも順風満帆とは言えず、問題がなかったわけではありません。森友・加計問題では苦しく歯切れの悪い答弁を行っていたことでは政権への不信感を感じた人も多いでしょう。

「異次元の金融緩和」と言われた金融政策は出口が見えず、「空前の低金利」は多くの金融機関の健全な成長を妨げ、インフレ目標は達成できず、副作用が出ていることも否定できません。金融機関の変革も必要ではありますが、その弊害とも言えるスルガ銀行のような事件も起きました。今は過渡期と言えるのでしょう。

長期政権の弊害が出始めていたことも事実だと感じます。


次の総理大臣に求められること



誰が時期総理大臣になるのかは今のところわかりませんが、今日時点ではどうやら菅官房長官が最有力のようです。

衆議院議員の任期が来年10月に迫っていること。次の総裁選出を急ぐためにも党員投票を行わず両院議員総会で次期総裁を決める方向になったことなどを考えれば、次の総裁は短期政権、その次までのつなぎの政権になる可能性が高いように感じます。

コロナウイルスという疫病との戦いのさなかでもあり、政治の空白をなるべく短期間に収める必要性があることも考えれば仕方ない選択とも言えますが、政治には「連続性」「持続性」も必要であり、以前の日本のようにころころ総理大臣が変わる事態は避けなければなりません。


若い総理大臣を望みたい



安倍総理は65歳。菅官房長官は71歳と政治家としては普通なのでしょうが決して若いとは言えません。 これからの日本の未来を担う総理大臣にはぜひ少なくとも60代、できればもっと若い人がなっても良いのではないかと感じます。

河野太郎防衛大臣(57)、小泉進次郎環境大臣(39)などはその次の担う人材だと思いますが、こうした世代の人がもっとたくさん現れてほしいと思います。また、野田聖子前総務大臣(59)など女性の実力者の一層の活躍も期待したいところです。

石破茂元防衛大臣(63)、岸田文雄政調会長(63)も安倍晋三首相よりは若いものの、個人的にはできればもっと若い人を望みたい気持ちがあります。

私は、若者の政治離れの一因は、40代以下の若い世代と60代以上の世代との認識格差があると考えます。人口減少社会に入り、今後生産年齢人口の減少を避けられない日本では、個々人の意識改革も必要です。

キッチリどこからと分けられるわけではありませんが、おおよそ現在の60代以降の世代が生きてきた中で染み付いた「常識」は、それより若い世代では通じなくなります。年金だけでは生きられなくなり、高齢者を現役世代が支える構図は成り立たなくなります。


世の中では技術開発が進み、AIがより高度な判断を行えるようになると、仕事のあり方そのものも変わってきます。今ある仕事の中でも多くの仕事が20年30年後にはなくなり、AIに置き換わる仕事をしていた人はほかの生きる道を探さなければなりません。世界は絶え間なく変化します。そのほかの分野でも技術の進歩によって次々と変化していくでしょう。

マクロで見れば当然のことですが、そこで仕事をする一人一人の人にとっては、明日からの仕事がなくなる日が来ることになります。

比較的早く訪れる未来には、鉄道やバス、タクシー、トラックの運転手がいなくても運行可能な「自動運転」が実現するでしょう。

私鉄の鉄道やバスなどでは「ワンマン運転」が当たり前になっていますが、次は運転手もいなくなるはずです。

昔はバスにも扉を開けたり次の停留所を知らせる車掌が乗っていました。貨物列車にも車掌車が連結されていましたが、今の若者はそんな事実すら知らないでしょう。

駅では、切符を販売するブースに人が座り、対面で切符を販売していました。改札にはカチャカチャと鋏を鳴らし切符を切る駅員がいたことももはや遠い昔の話のように感じます。今の50代、60代以上の人は記憶にあるでしょう。

山手線で自動改札が本格導入されたのは1990年とのことですので、ほんの30年前の話です。


他にもさまざまな仕事がなくなり、一方で新しい仕事も生まれてくるでしょう。


一極集中の解消と住宅政策



不動産にかかわる私の立場から見ても、空き家が増加する一方で新築住宅の供給戸数は増加を続け、住宅政策見直しも急務だと感じます。

東京一極集中の解消について一時話題になったこともありますが、結局はうやむやになっています。

昨今は気象災害などの深刻化が顕著になり、またいつかは必ず来ると言われる関東での大震災の懸念もあり、経済拠点の分散化は待ったなしの状況だと感じます。東京一極集中の解消はこうした災害リスクのヘッジにつながるだけでなく、地方の活性化にも貢献できる可能性があり、検討する価値は高いでしょう。


働き方の更なる変化



コロナウイルスの感染拡大はピークを越えたように見えますが、予断は許さない状況だと言えます。

そんな状況下で、企業はテレワークの推進を進め、富士通や日立などもオフィス面積を減らす方針を打ち出しています。さらには人材派遣などを行う「パソナ」が本社機能を淡路島に移転する話は出るなど、政治主導ではなく民間の拠点分散化の傾向が表れ始めていると言えます。

今後は都心部を避けつつ、テレワークの定着のほか、社員などがアクセスしやすい場所に「サテライトオフィス」などを設けたり、「シェアオフィス」を活用する企業も増えるでしょう。


次の内閣とこれからの政治に求めること



そんな中での総理辞任。課題はいろいろ残されており、安倍総理としても任期途中、志半ばでの健康状態悪化による辞任は苦しい選択だったと思います。

もともと総裁選就任への意欲を見せていなかった菅官房長官。安倍政権下でこれまでの長期政権を支える官房長官を務めてきたことで、安倍政権の方針を踏襲するであろうと考えられ、次期総裁として安心感があると言えるでしょう。 逆に言えば、これまで通りの状況が継続することになり、目新しい改革は期待できないとも感じます。

思い返せば、平成21年(2009年)から24年(2012年)の3年間。与野党が逆転し、初めて政権を担った民主党。その期間中に国債発行額や生活保護世帯も大幅に増加。不可抗力的な事態であったとはいえリーマンショック直後でその影響が直撃したほか、東日本大震災と福島原発事故が発生したこともありますが、政治的なパフォーマンスを狙った結果、危機管理能力の低さを露呈し事態が悪化。経済的ダメージが広がったことも否定できないように感じます。

この記憶があるため、当分の間政権を担えるほどの力を持つ野党は育たないと思います。


本来、アメリカのように2大政党がそれぞれの行う政策を必要に応じて監視し、けん制し合うような政治のあり方が望ましいのかもしれません。

一方で、同じ党内でもすべての政策をすべての議員が満場一致とはいかないように、政策ごとに議員あるいはその議員の信条や選出地盤の様々な事情がある以上、是々非々で判断すべきこともあるでしょう。

複数の政党でも目指す方向が違う人がいたり、同じ目標でもそのプロセスで意見が違う場合もあります。しっかり議論がなされ、耳を傾ける余地があれば2大政党でなくてもよいのかもしれません。


今、世界的にコロナウイルスの感染拡大の影響を受ける中で世界は急速に変わろうとしているように感じます。政治にはその世界の動きを先読みする力も必要。さまざまな常識から生まれた規制が変化についていけず、技術開発の弊害になってはいけません。新たな世界を切り開くためにもぜひ若い力、新しい力が現れてほしいものだと思います。

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西山広高
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