国交省が土地境界のルール緩和へ

西山広高

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テーマ:不動産

今朝の日経新聞に「境界曖昧な土開発進めやすく 国交省ルール緩和へ」という記事が掲載されていました。

2016年時点で所有者が不明な土地は日本全国で九州に匹敵する面積に上っていると言われています。
土地の所有権に関し、移転登記は義務ではありません。
土地を売買したときはほとんどの場合、同時に所有権移転登記を行いますが、相続や贈与などで、親族間で権利が移動する場合などは所有権の移転が登記されないこともしばしばです。
相続の場合、スムーズに遺産分割協議が整わない場合、相続税は相続発生を知った時から10カ月以内に申告納付しなければなりませんが、遺産分割協議そのものには期限がないため、そのままほったらかしになってしまうこともあるでしょう。
逆に親族の誰か一人が既定路線で相続したような場合で、その時の当事者間では全く揉めなかったような場合でも登記されないこともあるようです。

しかし、それから時間が経ち、相続人も世代が変わると「真の所有者がわからない」「連絡が取れない」「人数が多い」などで権利関係が複雑になり、特に第三者からはその実態がつかめなくなります。

隣地の所有者が土地の境界を確定しようとしてもこうした土地では誰と協議すればよいかわかりません。

東日本大震災の復興事業や都心部の再開発事業などでも、土地の所有者がわからないために計画が進まないという事態が増えています。

今後、ますますこうした事態が拡大することが懸念されることから、国土交通省が今回の様なルール緩和に乗り出す、ということです。

しかしながら、問題があることも事実です。
所有者がわからなくてもその土地は誰かの所有している「個人に帰属する資産」であり、国が一方的に所有権の帰属を決めてしまうことは何らかのトラブルにもなりかねません。

時間が経てば経つほど複雑化してしまう権利関係。
現在、登記を義務化する検討もされているようですが、日本の登記に係る事務では、登記官の調査は行われないことから「投機に公信力はない」ということになっています。

登記には法務局に支払う登録免許税のほか、その根拠となる測量や権利調整なども行う必要があるため、結構手間がかかります。

しかし、登記を行わなければ、将来的にその土地の周辺の健全な発展の妨げになる可能性もあります。


長期間、ほったらかしにされた土地の扱いに関しては仕方のないことだと思いますが、国によるルールの緩和には今後様々な議論の余地がありそうです。

本来、所有者が責任をもって実態を示す登記を自主的に行うことが望ましいことです。
限られた日本の国土を有効に活用するためにも土地を保有している方々には是非とも自主的に登記を行っていただきたいと思いますが、既に所有者不明になってしまっている土地には、真の所有者ですら自分が所有者であるということを自覚していない人も多いとみられ、問題は根深いと思います。



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