【誰のために料理する?何のために料理する?】ある日の料理教室から

丸山朝子

丸山朝子

テーマ:人と人をつなぐ、料理のちいさなお話

料理が好きかと聞かれて、迷わず「はい」と答えられる人は、案外少ないのかもしれません。

私自身、料理教室で講師をしていて専門はフレンチなのでレッスンでは洋食をお伝えしていますが、だからといって自宅で家族に手の込んだフレンチを作っているわけではありません。
普段は簡単なお惣菜で済ませることもありますし、時間がなければ買ってくる日もあります。

「家族に食べさせなければならない」というプレッシャーばかりでは、料理を楽しむ余裕や、作ることのやりがいはなかなか見つけられないですし、実際、そうした息苦しさから抜け出すヒントを求めて教室に来られる方も少なくありません。

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その日、吉野さん(仮名)はスタジオが開くと、すぐに私のところへ来られました。

「先生、このあいだ教えていただいたローストビーフサンド、家で高校生の息子に出したんです。そうしたら、『お母さん、これおいしいから、また作ってよ』って言うんですよ」

そう話す吉野さんは、少し興奮した様子で

「普段は不機嫌で、家ではあまり口もきかないんです。それなのに……びっくりしてしまって。結局、そのあと二回も作りました」

料理そのものの完成度とは別に、作ったものが家の中の空気を変えることがあるのだと改めて気づかされた瞬間でした。

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吉野さんのように、料理が身近な人とのちいさなサプライズや、思いがけない会話につながったというお話は決して珍しいものではありません。
とはいえ、受講料を払って教室に足を運んでくださる方はほんの一部です。
料理に苦手意識を持っている方や、そもそも料理をしないという方も、多くいらっしゃるでしょう。

私は料理を教える仕事をしているので、料理が毎日の義務ではなく楽しい趣味になるようなヒントを、このコラムでお伝えできたらと思っています。

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なぜ私が料理を「上手になるためのもの」だけでなく、人と人のあいだに何かを生むものとして捉えるようになったのか。その背景についてはページ下のインタビューでお話ししています。

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丸山朝子
専門家

丸山朝子(料理・洋菓子講師)

アトリエ・チト

パリの有名料理学校で学び、20年以上料理人として研さん。食を通して喜びを与える料理をレッスン。9~21時まで利用できるキッチンスタジオはレンタルでき、料理とデザインの知見を生かしメディア撮影にも対応。

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