輝け!なないろのこどもたち~空想だいすき!みんなにやさしいゆめちゃん
ここまでなないろのこどもたちの良いところや苦手なところ、特性に合った育て方についてお伝えしてきました。
この7人は、それぞれの困りごとが大きくなったときに、神経発達症群(発達障害)の診断がつくことがあります。いっくんやはかせくんだったら自閉スペクトラム症(ASD)、ゆめちゃんやこうちゃんだったら注意欠如多動症(ADHD)というように。
なないろのこどもたちが持つ特性は、実際の生活のなかで誰か一人の特性が色濃く出ることもあれば、何人かの特性が織り交ざって出ることもあります。
具体的な例として、私の次男・三男のなないろタイプについてご紹介していきたいと思います。
次男はいっくんタイプ
次男はまさにいっくんタイプ!小さい頃はなんでも1番でないと気が済まず、勝ちにこだわる「一番病」でした。
兄弟3人でお風呂に入り、うっかり長男から順番に上げてしまうものなら、「ぼくが1番がよかったー!」とお風呂の中で大騒ぎ。しかし「お兄ちゃんは0番で、あなたが1番だよ」と伝えると、「えっ?ぼく1番?」とすんなり受け入れてしまうこともあり、当時はどれだけ上手いこと次男に伝えて癇癪を起さずに済むかで、ことばアンテナを張り巡らせていました。
ルールを守ることにも厳しいのですが、言語の理解が高すぎて一般的な考え方とは違う解釈をしてしまうことがあり、お友達とはしょっちゅうトラブルに。次男の話をよく聞けば「なるほど、そんな考え方もあるよね!」と納得してしまうのですが、学校生活のなかで個別にしっかり話を聞いてもらえることはなかったので、幼い段階から生きづらさのようなものをずっと抱えています。
いっくんの特性は大人になって薄まるものではないので、いっくんタイプの次男はいろいろな思いを経験しながら自己理解を深めつつ、「社会ってこういう感じ」「一般的にはこういう解釈」と学習を重ねていく必要があります。
一方で、好きなことがいろいろあって、夢中になって取り組めるのがいっくんのよいところ。次男も幼いころから電車や工作が大好きで、年齢が上がるとともに趣味が一眼レフを使った写真撮影や3Dプリンターを使った模型制作へと発展し、中学生のときには自分の作品をSNSで発信したところ、テレビ局から取材が来たこともありました。「マスメディアは嫌いだ」と言い勝手に取材を断ってしまったのですが、そうしたところも含めてなんとも次男らしいエピソード。いっくんタイプの次男には、自分らしさを大切にしながら、好きなことや得意なことを社会の役に立つかたちで発揮してほしいと願っています。
三男はいっくん5割、こうちゃん3割、はかせくん2割のいろいろタイプ
三男は、なないろのこどもたちのなかで誰か一人に似ているというよりは、いっくんが5割、こうちゃんが3割、はかせくんが2割ほど織り交ざったいろいろタイプです。
1番に対するこだわりは次男ほど強くはありませんが、ルールを守ることに厳しいところや記憶力がいいところはいっくん、いつも動いていないと安心できないところはこうちゃん、感覚過敏が強くて集団が苦手なところははかせくんの特性によく似ています。
三男は次男と違って、感覚処理の問題を強く抱えています。くるくる回っている方が落ち着く「感覚探求」や、音やにおいに対する「感覚過敏」があり、たくさんの刺激に溢れている学校の環境にうまく適応することができません。
しかし、感覚処理の問題は脳の成長とともに落ち着いていく部分が大きいので、不適応をこじらせずに時を待つことも大切な姿勢です。わがままに見えることもあるかもしれませんが、無理やり我慢させることは逆効果でしかありません。本人の強みであることばの力を活かし、どの刺激がどんなふうに嫌なのかを伝えられる場面を増やしたり、どこまでなら頑張れそうかを一緒に相談する支援が必要になります。
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次男と三男は同じ自閉スペクトラム症の診断を受けていますが、その状態は共通する面もあれば全く違う面もあります。
大切なことは、診断名で分けるよりも本人の様子をよく観察すること。そして受容的なかかわりのなかで、本人の気持ちをきちんと聞いてあげることです。
気持ちを聞くときに役に立つのは、ことばだけではありません。次男と三男はことばが強みになっているタイプですが、一般的に小さなこどもたちは、自分の気持ちを自覚することもそれを適切なことばで表現することも、まだまだ苦手です。
ことばだけではなく、表情で、しぐさで、全身全霊で一人ひとりを受け止めてあげましょう。その土台が安定してはじめて、こどもたちは自分の気持ちを安心して伝えられるようになり、支援の方向性も明確になっていくはずです。