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自閉スペクトラム症児の診断~2021年に診断された三男の場合

金谷さおり

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テーマ:社会福祉士による発達相談


この記事では、自閉スペクトラム症、注意欠陥・多動症、知的発達症などを含む神経発達症群について、一般的にわかりやすく「発達障害」と記述している部分があります。


今回は、3年前の4歳のときに次男と同じ自閉スペクトラム症(ASD)と診断された三男の経過についてお伝えしていきたいと思います。

三男の発達が定型発達とは違うかもしれないと気づいた最初のきっかけは、年中さんの初めころ、保育園の先生から突然「お兄ちゃんが発達外来に通っているのであれば、同じところで受診してください」と言われたことでした。それまで一度も発達について心配なところがあると言われたり、相談されたりしたことがなかったため、最初の言葉が「受診してください」だったのには衝撃を受けました。詳しくお話を伺うと、集団行動ができない場面が増えているとのことです。

当時の私は、学齢期の発達障害児を対象とする公的支援機関で相談支援専門員として勤務していましたので、保育園の先生からすればある意味で専門家というか、受診を促せばその後の支援はスムーズに事が運ぶと思われたのかもしれません。しかし、園での困りごとの共有や家庭での様子を確認することなく、最初に「受診」という言葉を出すことは、親にしてみれば衝撃的なこと。場合によっては、園と家庭の関係性が悪くなることにもつながります。(※この点については、現在保育園や幼稚園のコンサルテーションに入る際に、先生たちに丁寧に説明している部分です。先生たちが良かれと思って勧めたことが、保護者さまをとても傷つけてしまう場合があるからです。)

いろいろな思いを飲み込みつつ、言われるがまま次男の主治医に三男も診てもらうことにしましたが、予想通り医師からは「まずは区の児童発達支援センターに相談して、何かしらの評価を取って、なんかあったらまた来てね」と言われてしまいました。そして区の巡回相談を利用して知能検査(田中ビネーⅤ)を受け、三男は次男と同様に知的な遅れはないが得手不得手が大きいタイプであることがわかり、区の児童発達支援センターで療育を受けることになりました。

三男はもともとおしゃべりが大好きで、楽しいことも大好きな愛らしい性格です。しかし、年中さんの間に困りごとは一気に大きくなっていきました。次男の場合には全く気にならなかった「感覚過敏」が、三男の場合は著しかったのです。感覚処理の問題は年中さんくらいから大きくなっていくことがありますが、三男の場合もあてはまり、以前は気にならなかった音やにおいが我慢できずに逃げ出したり、赤ちゃんの時は食べられていたものが食べられなくなったり、乗り物酔いも激しくなりました。集団行動がとれなくなっていたのも、音楽がイヤ、声がイヤ、視線がイヤなど本人なりの理由があり、イヤなものはどんどん増えていきました。
一緒に水族館に行ったときは、イルカショーを楽しみにしていたもののショーの前に流れる音楽が我慢できず会場から逃走。そのとき三男から「ぼくはね、イルカは大好きなんだ。イルカショーは見たいよ。でも、この音を聞いていると耳が痛くなっちゃうんだ。」と言われ、一緒に涙したこともありました。診断はこのタイミングで、保育園に必要な配慮について求めるために主治医につけてもらいました。

知的な遅れはなかったので通常級に就学しましたが、入学式は逃げ回って参加できず、1年生のときは教室に入ることがほとんどできず、学校を脱走して勝手に帰宅してしまうのでいつも補助の先生がつきっきり。しかし、感覚処理の問題は、脳が成長する小学3年生ころには落ち着いてくることも分かっていたので、信じて待つスタンスで接しました。学校は、次男が診断を受けた10年前に比べて、発達特性のあるお子さまの対応に慣れている先生が増えている印象がありました。そのため、三男が嫌がる感覚は今のところは無理強いせず、本人なりの考えを確認してほしいことをお願いしました。また、先生の説明を理解する力は持っているので、苦手な場面でも取り組む理由を伝えればやろうとはするし、頑張ったときは褒めてもらえれば、それを喜びとして信頼関係が築ける子だと伝えました。

現在は2年生になり、あとわずかで3年生に進級するタイミングとなりましたが、予想通り感覚の問題はかなり落ち着きつつあります。一方で、ことばの習得が上手な分、悪い言葉をたくさん覚えて発することで注目を集めようとしたり、今まで後回しにしていた手先の不器用さを本人が気にし始めたりと、次の段階の課題にも直面しています。しかし、全てを一度に改善することはできないので、優先順位を本人主体で考えて、みんなで取り組んでいる最中です。

兄弟で同じ自閉スペクトラム症という診断を受けていても、経過や症状は一人ひとり違います。また、親からすれば、どのような状況でわが子が診断を受けることになり、その後どのような支援者に出会ったかによっても、「発達障害」というものに対する理解や向き合い方は大きく変化します。

次男が診断を受けた10年前に比べると、世の中の発達障害に対する理解は深まり、社会資源も増えました。しかし、だからこそ私たちは「一人ひとり違う」という当たり前のことをあらためて念頭に置きながら、ありのままのこどもたちの良さや強みに目を向けて、意思を尊重してかかわる必要があります。そしてそれに向き合う支援者側も、お子さまと保護者さまの気持ちに寄り添いながら、保護者さまが豊かな気持ちで子育てができ、お子さまが自分を大好きなまま大きくなれる社会の実現に向けて、謙虚に実践を続けていくことが必要であると考えます。

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金谷さおり
専門家

金谷さおり(社会福祉士、精神保健福祉士)

株式会社Interview Care

幅広い福祉のスキルと豊富な経験を基に、子どもの特性に適した発達支援を提供します。発達相談・発達検査を通して接し方や学習法をアドバイスし、子どもが自立して生きられる未来へとつなげていきます。

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