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自閉スペクトラム症児の診断~2014年に診断された次男の場合

金谷さおり

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テーマ:社会福祉士による発達相談


私も4人のこどもを子育て中の母親です。次男は10年前の7歳のとき、三男は3年前の4歳のときに、それぞれ自閉スペクトラム症(ASD)と診断されました。
今回は、10年前に診断された次男の様子についてお伝えしていきたいと思います。

上の子たち3人(長男→次男→長女)は年子で生まれました。おっとりしていてしっかり者の長男と、元気いっぱいわが道を行く次男は特に仲が良く、双子のように育ちました。当時の私は、年子3人を育てるということそのものがとても大変な毎日で、次男に何かしらの発達特性があるということには全くもって気づかないまま、次男は小学校に就学しました。

就学後、すぐに担任の先生から「落ち着きがない」「集団行動ができない」「思い通りにならないとパニックになる」などの指摘を受け、区の教育センターで知能検査を受けることを強く勧められました。家庭の中では落ち着いて過ごしていることが多かったですし、保育園でも発達について指摘を受けたことはなかったため信じられない思いでしたが、学校でトラブルがあると夜ごはんも食べられないくらい疲れきってしまう次男の姿を見て、私たち家族は検査に同意しました。その時に受けた知能検査はWISC-Ⅳで、検査結果から次男に知的な遅れはないものの、得手不得手の差が大きく、まわりくどい表現は理解できないので端的に説明することや、ルールがみんなと同じように理解できているか確認してから活動を始めるなどの配慮が必要であることがわかりました。

しかしながら、発達検査をしたところで、次男の学校での過ごしにくさは何も変わりませんでした。現在ではかなり改善されていますが、当時は発達検査の結果を学校に書面で渡しても、先生たちはみんな「WISC-Ⅳってなんですか?」という認知レベル。自分たちが検査を勧めたにもかかわらず、その対応にはかなりがっかりしてしまいましたが、次男の学校での過ごしにくさを改善するためには、私自身がWISC-Ⅳについて学びそれを先生たちに伝えるしか方法がありませんでした。

2年生のときには、在籍している小学校にサポートルーム(特別支援教室)が設置され、次男は真っ先に利用することになりました。週2時間、個別または小集団でルールやコミュニケーションについて学びましたが、私にはそこで教えられているSST(ソーシャルスキルトレーニング)が、次男の気持ちを知ろうとしないまま、集団の意見を押し付けるだけの矯正的な訓練に見えて、とても悲しかったことをよく覚えています。

学校で何かトラブルがあったとき、いつも次男には次男なりの理由がありました。しかし、学校という集団生活の場で個別に気持ちを聞き取ってもらうことは難しく、最終的には「○○くんのために病院に行ってください」「○○くんのために服薬してください」としか言わなくなった学校に、私は強い不信感を抱くようになりました。この気持ちは一生消えないと思います。

しかし、中学校では、全てではありませんが良い先生にも恵まれました。次男が心から信頼を寄せられる、塾の先生との出会いもありました。衝動性や多動性が見た目では落ち着いたように見えても、不注意さや手先の不器用さは相変わらずだったので高校受験には苦労しましたが、本人なりにやるだけのことができていたと思います。

今、高校生になった彼を見て、好きなことがあるのは強いこと、好きなことを伸ばすことは自立につながることなのだと痛切に感じます。ここにはとても書くことができないくらい課題は山ほどありますが、こうして大きくなったこどもに対して親ができることなんて、ごはんを作ることと信じることくらいしかありません。
しかし、次男が私に与えてくれたたくさんの学びは、全てのこどもたちが生きやすい社会を築くための、大切な礎になっていくものなのだろうと感じています。

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金谷さおり
専門家

金谷さおり(社会福祉士、精神保健福祉士)

株式会社Interview Care

幅広い福祉のスキルと豊富な経験を基に、子どもの特性に適した発達支援を提供します。発達相談・発達検査を通して接し方や学習法をアドバイスし、子どもが自立して生きられる未来へとつなげていきます。

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