自閉スペクトラム症児の診断~2021年に診断された三男の場合
この記事では、自閉スペクトラム症、注意欠陥・多動症、知的発達症などを含む神経発達症群について、一般的にわかりやすく「発達障害」と記述している部分があります。
お子さまの発達に心配があるとき、保護者さまはありとあらゆるタイミングで、インターネットを活用し情報収集をされることと思います。インターネット上には「発達障害」に関する様々な情報があふれています。医師などが監修している専門性が高い情報もあれば、教育や療育にかかわる支援者が出している支援方法に関する情報、実際に発達特性があるお子さまの育児をされている保護者さまの情報など、カテゴリーだけでも数え上げればきりがありません。
私も発達相談をお受けしていて、保護者さまから「ネットに○○と書いてあって…」「チェックリストをやってみたらうちの子は△△に当てはまっていて…」などの相談をされて、実際にその記事を読ませていただくこともよくあります。内容を確認すると、確かに間違ったことが記載されているわけではありません。
しかし、発達特性は一人ひとりを見ていかなければわからないものですし、全てのお子さまに共通する大正解があるわけではないので、インスタントに結論を出してしまうことは避けたいものです。時間をかけてでも、お子さまの特性や困りごとに向き合い、その子に合った情報を取捨選択する努力が継続的に必要になります。
InstagramなどのSNSも気軽に情報収集をするにはとても便利なツールです。同じ悩みを抱える保護者さまや、興味のある支援を提供している支援者を簡単に見つけることができますし、ご家庭でも気軽に取り組めそうな遊びや、発達を促せそうな遊びを楽しそうな動画で紹介しているコンテンツも数多くあります。
ただ、発信者側の立場になって考えると、たくさんの方に見ていただくためにはどうしてもエンターテイメント性が必要になります。気軽さを出すために難しい前提が端折られている投稿や、「○○すれば治る!」「△△があればできるようになる!」などのインスタントなキャッチで、多くの目を引こうとしている投稿も珍しくありません。それがすべて間違った情報だということはないのですが、正直なところ私から見ると、誤解する方がいないようにもう少し説明が欲しいかな…と思ってしまうこともあります。
発達特性に関連する様々なキーワード、たとえば診断、手帳、知能(IQ)、告知、支援級や支援学校への就学(進学)は、そもそもがとてもセンシティヴなテーマです。だからこそ、情報としては価値があるのかもしれません。
しかし、例えば「支援級への進学」というテーマ一つ考えてみても、当たり前のことですが「支援級に行ってよかった」と主張する人もいれば、「支援級に行かなくてよかった」と主張する人もいます。支援級の学習環境は地域によりばらつきがあるのが実情であるなか、悩んでいる保護者さまが情報に振り回された結果、自分の信じたいものを信じようとしてしまうことがあるため、サポートが必要だと感じています。
溢れかえる情報の中から、わが子に必要な情報を保護者さまだけで適切に取捨選択することは、かなり難しい時代になってしまいました。しかし私は、「急がば回れ」だと考えます。お子さまの特性や困りごとに向き合い、必要な情報をしっかり選んでいこうとする過程は、お子さまに対する理解を深め親子のコミュニケーションを円滑にすることにつながります。それができる保護者さまは、園や学校にお子さまのことをわかりやすく伝えて配慮を求めることも上手ですし、お子さまの方にも「自分には苦手なこともあるけど、こんなに上手にできることもあるよ!」という気持ちが育っていきます。そして、お子さまが成長とともに自己理解を深めることにつながっていき、将来的に自立を支える、大きな糧となっていくのです。