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髙橋勇也プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

配偶者手当廃止の影響はいかに

髙橋勇也

髙橋勇也

テーマ:経営者向け

そもそも、配偶者手当の廃止とは?

第二次安倍政権下での配偶者手当見直し政策として、国の積極的な先導があったとされています。
特に、国家公務員の配偶者手当見直しに続き、トヨタ自動車や経団連といった大企業・経済団体が呼応し、手当の見直し・提言への盛り込みを実施してきたという構図。

第二次安倍政権ということで今更、という声も多いと思いながらもこのコラムを書いたきっかけは今年から「年収の壁」対策支援奨励金が始まったことに起因します。

「年収の壁」対策支援奨励金

本奨励金の大義名分として、このように掲げられています。

働く意欲のある女性が就業調整を行うことなく、能力を十分に発揮できる環境を整備するため、「年収の壁」の原因の一つとなっている配偶者手当の見直しを行った都内中小事業主に奨励金を交付します。


個人的な分析ですが、大企業の配偶者手当を粗方廃止し終えたので、中小企業の配偶者手当も廃止していこう!
という国の(東京都なのかもしれませんが)意思が顕著に表れているように感じています。

奨励金の詳細はこちら

なぜ廃止なのか

1)配偶者を有する人数が減少したという切り口から説明している例
配偶者手当が浸透した1980年代には、30・40代になれば90%近い人が結婚をしていた。しかし、2020年の有配偶率は、40代の男女で約70%、30代の男女で約60%近くにまで低下している。
そのため、誰もが受け取れる手当ではなく、能力ではなく配偶者を有するか否かで給与が変わる仕組み自体が、配偶者を有さない従業員にとって不公平とするケース。

2)家族手当の支給対象者が増加したため廃止となった例
以前は、年収103万円を超えると配偶者控除の適用外となったが、法改正によって年収の上限が引き上げられことが発端。
配偶者控除や配偶者特別控除の適用を条件としていた企業にとって、家族手当の支給対象者が増加する結果となり、その増加負担を抑えるため、配偶者特別控除の改正に合わせて家族手当を見直すケース。

トヨタ自動車の例を考察

2015年時点では、年収103万円以下の配偶者に月1万9500円が家族手当として支払われていました。
労働組合によると、同年に経営側から提案された新制度はこの「配偶者手当」をなくし、代わりに子供一人当たり5千円支払われていた子供手当を月2万円に増額するという内容であったと記述されているニュースがありました。
2024年の春闘では2万円から2.5万円に増額される予定というのが手当についての現況です。

廃止の理由として挙げた「配偶者を有さない従業員にとって不公平とするケース」について考察してみましょう。
平たく言えば、「結婚しているから手当を上げましょう」は不公平だから配偶者手当を無くしましょう。
が正しいとすれば、「子供がいるから手当を上げましょう」も不公平なのではないかという点でしょう。

結婚しても子供はもたないDINKsという選択をする家庭が増えていることもニュースで見たことがあるのではないでしょうか?
こういった家庭の場合は、子供手当より配偶者手当を望むかもしれません。

働く意欲のある女性が就業調整をしているのか?

話は「年収の壁」対策支援奨励金にもどりますが、一番の争点となるのは「働く意欲のある女性が就業調整をしているのかどうか」ということではないかと思います。

パートタイムで働く女性(男性の場合もあると思いますが)は働く意欲が無いだろう!と言いたいわけではありませんので、先にお伝えしております。

就業調整をしている方は家事や育児で大変な中、それでも家庭のために少しでもお金を稼げればと考えて、少ない時間の中で働かれている方が多いのではないかと認識しています。
そんな方々が思うことは、「働き損」にならないことだそうです。
貴重な時間を割いて仕事をしているわけですから、当たり前のことだと思います。
社会保険や税金などを取られるくらいなら、そのルール以下で働こうというのがこれまでもこれからも続くでしょう。

社会保険適用拡大は相反する作用なのか

今年の10月には「社会保険適用拡大」が行われますが、今後も段階的に拡大され、最終的には雇用契約のもとで働く全従業員を対象にとなるのではないかと思うのは私だけでしょうか?

「働き損」という観点で考えると、この拡大により106万円以上収入があり、社保の対象でなかった方は106万円に就業調整をする可能性も十分考えられます。
逆に、全従業員となってしまえば106万円の壁については就業調整が必要なくなるわけですから、国としてはこれを目指しているんだろうなと考える根拠でもあります。

働く意欲のある女性が就業制限をしなくて済むということは良いことだと思いますが、働く意欲のある女性が全員フルタイムで働けるわけではないということも考慮べきかと考えています。

「働きたいけど働けない女性」という大義名分のもとで、政府や会社が都合よく制度を変えて、そのしわ寄せが「働きたいけど働けない女性」に行ってしまうということは避けねばならないことだと思います。

弊社では、不平等という観点から配偶者手当も子供手当も規定がございません。
手当として不平等に分配するのではなく、給与として平等に分配したいと考えているためです。
既に配偶者手当があり、奨励金の対象となる場合は、ぜひ従業員の状況を考えながらご検討されることがよろしいかと思います。

以下、その参考になれば光栄です。
若い従業員から配偶者手当について否定的な意見が無く、既に手当を受け取っている家族がいるなら「ア」を選択するだけでも良いかと思います。
永年勤続手当として「イ」を選択し、これまで配偶者手当をもらっていた従業員の勤続年数で手当を振り替えるということも平等な方法かと思います。
「ウ」として基本給に振り替える場合は、今後配偶者手当をもらえていたであろう従業員に対して説明が重要になると思いますので、この中では一番ハードルが高いように思います。

<要件についていずれかを見直す>
ア 配偶者手当(家族手当)の収入要件を撤廃する
イ 配偶者手当(家族手当)を廃止し、他の手当に振り替える
ウ 配偶者手当(家族手当)を廃止し、基本給に繰り入れる


多様な働き方を国も労働者も求めている中で、様々な考え方があるかと思います。
是非、皆様の意見もお聞かせいただければ幸いです。

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髙橋勇也
専門家

髙橋勇也(業務効率化支援)

株式会社イントロダクション

ITエンジニアを擁し、AIウェブアプリやシステムを開発して顧客の業務効率化をサポート。「健康経営優良法人 ブライト500」に選ばれた経験も生かして働きやすい職場の作り方をコンサルティングする。

髙橋勇也プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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