論文博士とは? 働きながら博士号を取得する方法を「ろんぱく999」車掌に聞いた。学費も時間もない社会人研究者のための論文博士という選択肢

新井一

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テーマ:起業家紹介

論文博士という「もう1つの道」を知っていますか?

ろんぱく999 車掌(薬学博士)

社会人研究員として企業で研究に携わりながら、論文博士(薬学博士)を取得。自身の経験をもとに、同じ道を歩もうとする社会人研究者に向けて、noteやSNSを中心に情報発信プロジェクト「ろんぱく999」を運営している。ろんぱく999 車掌(薬学博士)新井:本日は、情報発信プロジェクト「ろんぱく999」の車掌さんにお時間をいただきました。よろしくお願いいたします!

車掌:こちらこそ、よろしくお願いいたします。こういう場でお話しできるのは光栄です。

新井:まず「ろんぱく999」というネーミングがすごくいいですよね。「論博」と「銀河鉄道999」をかけているのでしょうか?

車掌:ありがとうございます。そのイメージです。論文博士を目指す旅って、本当に長い旅なのです。銀河鉄道999のように、終着駅を目指してひたすら走り続ける。その旅の案内役として、私が「車掌」を名乗っています。読者の方々は「乗客」として、一緒にこの列車に乗っていただくイメージですね。

新井:なるほど。そしてその列車には、最近新たな乗客も加わったとか?

車掌:はい。製薬会社で創薬研究をしているレイナが、ろんぱく999の乗客として加わりました。彼女もまさに今、論文博士への旅の途中なのです。リアルタイムで奮闘している姿を一緒に発信していくことで、読者の皆さんにも「自分だけじゃないんだ」と感じていただけたらと思っています。ろんぱく999 車掌(薬学博士)

そもそも論文博士って何? 課程博士との違いをわかりやすく解説

大学院に通わなくても博士号が取れる、日本ならではの制度

新井:ここで読者の方のために、「論文博士」という制度について教えていただけますか? 「博士号」というと、大学院に何年も通って取るものというイメージがありますが。

車掌:そうですよね。一般的に「博士号」と聞くと、大学院の博士課程に3年以上在籍して、指導教授のもとで研究して取得する「課程博士」を思い浮かべる方がほとんどだと思います。でも実は日本には、大学院に在籍しなくても、研究成果をまとめた論文を大学に提出して審査に合格すれば博士号が取れるという制度があるのです。これが「論文博士」です。

新井:大学院に通わなくていいのですか! それはかなり画期的ですね。

車掌:はい。課程博士と論文博士の大きな違いを整理すると、こんな感じです。

  • 課程博士:大学院博士課程に入学 → 通常3年以上在籍 → 指導教授のもとで研究 → 博士論文提出・審査 → 学位取得。入学金・学費が必要。
  • 論文博士:大学院に在籍しない → 企業や研究機関で研究を続ける → 一定の研究実績を積む → 大学に論文を提出して審査を受ける → 学位取得。必要なのは基本的に論文審査料のみ。

新井:学費の面でもだいぶ違いますね。

車掌:そこが社会人にとって大きなメリットです。課程博士の場合、国立大学でも3年間で200万円以上かかることがあります。一方、論文博士は審査料だけで済むケースが多い。金額は大学によって異なりますが、数万円から数十万円程度です。通学の必要もないので、地方や海外に住んでいても挑戦できるというのも大きな利点ですね。

新井:ただ、論文博士には「廃止されるかもしれない」という話も聞きますが?

車掌:はい、文部科学省の審議会で「将来的には廃止する方向で検討すべき」という意見が出たことがあります。諸外国の学位制度と比較して、国際的な整合性の観点から議論されているようです。ただ、現時点では廃止されておらず、多くの大学で制度としてしっかり運用されています。とはいえ、制度がいつまであるかは分からない。だからこそ、取りたいなら早めに動くべきだと私は思っています。

ろんぱく999を始めた理由。情報がなさすぎる孤独な旅だった

「道はある。一人じゃない」と伝えたかった

新井:車掌さんご自身が論文博士を取得された経験から、このプロジェクトを始められたとのことですが、きっかけを教えていただけますか?

車掌:私は企業で研究員として働きながら、論文博士で薬学博士を取得しました。その過程がとにかく孤独だったのです。課程博士であれば、同じ研究室の仲間がいて、指導教授が定期的にアドバイスをくれます。でも論文博士は、基本的に1人で進めなければなりません。ろんぱく999 車掌(薬学博士)新井:情報も少なかったですか?

車掌:ほとんどなかったです。課程博士に関する情報はネット上にたくさんありますが、論文博士の具体的な進め方、つまり、どの大学が受け入れているのか、必要な論文数はいくつか、審査の流れはどうなっているのか。こういった実践的な情報は本当に少ない。手探りで進むしかなかったのです。

新井:それは心細いですね。

車掌:正直、何度も「やめようかな」と思いました。でも最終的に取得できた時、「この経験を同じ境遇の人に届けたい」と強く思ったのです。「論文博士という道がちゃんとある。そしてあなたは一人じゃない」ということを伝えたくて、ろんぱく999を始めました。

新井:暗中模索の中で得た知見を共有するという使命感ですね。起業18フォーラムでも「会社員のまま起業する」という情報が少なかった時代に、同じような思いで始めた部分があるので、すごく共感します。

車掌:ありがとうございます。「そんな道あるの?」という段階の方に、「あるんですよ、しかも先に歩いた人がここにいますよ」と伝えるだけで、一歩踏み出せる方がいると思うのです。

社会人研究者がリアルに直面する3つの壁

新井:車掌さんの経験や、これまでろんぱく999で発信してきた中で見えてきた、社会人研究者が直面する「壁」について教えてください。

車掌:大きく分けて3つあります。「情報の壁」「職場の壁」「時間の壁」です。

第1の壁:情報の壁。制度は知っていても進め方が分からない

車掌:まず「情報の壁」です。先ほどもお話ししましたが、論文博士の制度自体は知っていても、具体的にどう進めればいいか分からない方がとても多いのです。

新井:たとえばどんな情報が不足しているのですか?

車掌:まず「どの大学が論文博士を受け入れているのか」という基本情報すら、体系的にまとまっていません。大学ごとにホームページの奥深くに規定が載っていたりするのですが、見つけるのも大変ですし、読み解くのも一苦労です。さらに、「主査を引き受けてくれる教授をどう見つけるか」「必要な論文数の目安は?」「審査の流れは具体的にどうなるのか?」こういった実践レベルの情報がとにかく足りないのです。

新井:ネット検索しても出てこない?

車掌:課程博士の体験記はたくさんヒットしますが、論文博士に関してはごくわずかです。しかも情報が古かったり、特定の大学の特定の分野だけだったりして、汎用性が低い。結果として、一人ひとりが手探りで同じ壁にぶつかることになるのです。

第2の壁:職場の壁。上司の理解に大きく左右される

車掌:次に「職場の壁」です。これは本当に個人差が大きくて、上司が研究に理解のある方だとスムーズに進みますが、そうでないと相当苦しいです。

新井:具体的にはどういう問題が起きるのですか?

車掌:企業で研究をしている場合、その研究成果を論文として発表するには会社の許可が必要なケースがほとんどです。機密情報に関わることもありますし、「業務時間外にやってくれ」と言われることもあります。さらに、学会への参加や大学との打ち合わせのための時間をどう確保するかも課題です。上司が「博士号を取ることは会社にとってもプラスだ」と理解してくれるかどうかで、難易度がまったく変わるのです。

新井:会社員が起業準備をする時と似ていますね。理解のある上司かどうかで、使える時間もエネルギーも変わってくる。

車掌:そうなのです。ただ、論文博士の場合、研究自体が業務と直結していることも多いので、うまくいけば「仕事の成果がそのまま博士論文になる」という最高のシナリオもあり得ます。ここは会社員の副業とはちょっと違う、社会人研究者ならではの強みかもしれません。

第3の壁:時間の壁。「忙しい」を言い訳にしてしまう自分

車掌:そして3つ目が「時間の壁」です。これが一番身につまされる話かもしれません。

新井:やっぱり時間ですか。

車掌:はい。社会人研究者は当然、本業の仕事があります。家庭がある方も多い。そうすると、論文を書く時間は夜や休日に限られます。でも疲れているし、やることは山積みだし、つい「今日はいいか」となってしまう。気がつけば半年、1年が過ぎている……というのは本当によくある話です。

新井:その気持ち、痛いほど分かります(笑)。起業準備をしている会社員の方も、まったく同じことを言いますから。

車掌:ですよね(笑)。でも正直に言うと、「忙しい」は事実であると同時に、言い訳でもあるのです。厳しいようですが、本当に取りたいなら、30分でも時間を作って論文に向き合う。その積み重ねでしか前に進めません。私自身もそうでしたし、ろんぱく999を通じてそこを正直に伝えていきたいと思っています。

ろんぱく999の活動内容。本音の情報を届けたい

noteを中心にリアルな情報を発信

新井:ろんぱく999では、現在どのような活動をされていますか?

車掌:メインはnoteでの情報発信です。論文博士の制度説明から、心構え、実体験に至るまで、できるだけ本音の情報を書くようにしています。きれいごとだけでは伝わらないと思っていまして。

新井:本音というと?

車掌:たとえば「主査の先生になかなか連絡がつかなくて焦った話」とか、「審査に向けて論文を修正している時のメンタルの浮き沈み」とか。制度の解説だけなら公式サイトを読めばいいのですが、実際に経験した人にしか書けないリアルな情報が大事だと思っています。

新井:確かに、そういう生々しい情報こそ、これから挑戦する人にとっては一番ありがたいですよね。

車掌:そしてレイナが乗客として加わったことで、「現在進行形の論文博士への挑戦記」も発信できるようになりました。私の話は過去の経験ですが、レイナの話は「今」起きていることなのです。読者の方にとっては、リアルタイムで一緒に走っている仲間がいるという感覚を持っていただけるのではないかと思います。

今後の展開。個別相談やコミュニティへ

新井:今後はどのような展開を考えていらっしゃいますか?

車掌:noteやSNSでの発信は引き続きやっていきますが、ゆくゆくは個別相談サービスやコミュニティの運営にも広げていきたいと考えています。

新井:おお、いいですね。具体的にはどんなイメージですか?

車掌:たとえば、「どの大学に論文を出すべきか」「主査になってくれる先生をどう探すか」「研究計画の立て方」といった個別の相談に乗るサービスです。また、同じく論文博士を目指す社会人研究者同士がつながれるコミュニティがあれば、情報交換もできますし、モチベーションの維持にもなると思います。

新井:孤独な旅を、仲間がいる旅に変えるということですね。

車掌:はい。ろんぱく999という列車に乗っている仲間がいる。車掌が案内してくれる。そういう安心感を届けたいのです。ろんぱく999 車掌(薬学博士)新井:ちなみに、起業18フォーラムでも「会社員のまま小さく始める」をコンセプトにしていますが、ろんぱく999さんのこの展開も、会社員として研究を続けながら発信活動を育てていくという点で、とても素晴らしいモデルだと思います。

車掌:ありがとうございます。私自身、企業の研究員という本業は続けながら、ろんぱく999を育てていきたいと思っています。無理なく、でも着実に。

読者へのメッセージ。学費も時間もない。でも諦めなくていい

新井:最後に、この記事を読んでくださっている方へのメッセージをお願いします。

車掌:はい。もしこの記事を読んで、「論文博士」という言葉を初めて知った方がいらっしゃったら、まずは「そういう道がある」ということを覚えておいてほしいのです。

新井:知ることが第一歩ですよね。

車掌:はい。「大学院に通う学費がない」「仕事が忙しくて3年間も通えない」「でも博士号は諦めたくない」。そう思っている方に伝えたいのは、論文博士という選択肢は、まだちゃんと存在しているということです。

新井:知らないだけで選択肢を閉じてしまうのはもったいないですね。

車掌:そして、もう1つ伝えたいことがあります。一人で抱え込まなくていいということです。ろんぱく999は、論文博士を目指す方の旅の案内役として存在しています。情報が足りなくて不安な方、何から始めればいいか分からない方、ぜひ一度noteやSNSを覗いてみてください。同じ旅をしている仲間がいます。

新井:ろんぱく999という列車は、いつでも乗車できるのですね。

車掌:はい、いつでも大歓迎です。この列車に乗車券はいりません。「論文博士を取りたい」という気持ちが、そのまま切符です。一緒に終着駅を目指しましょう。

新井:車掌さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!

車掌:ありがとうございました!

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起業家インタビュー(聞き手:新井一@起業18フォーラム)

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起業18フォーラムを運営。会社員向けに特化した〝再現可能〟な起業ノウハウで、25年間で延べ6万人の起業を支援してきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛けている。会社員のまま起業する方法を伝授するプロ。

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