4月の「なんとなく起業したい」が、実は一番キケンな理由

新井一

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テーマ:起業

新年度に起業熱が上がる。その気持ちに「落とし穴」がある

――新井さん、毎年4月になると「よし、今年こそ起業するぞ!」と動き始める方が増えますよね。新年度は、やはり特別なタイミングなのでしょうか?

新井:そうですね、毎年本当に多いですよ。桜が咲いて、人事異動があって、気分がリセットされる。この気持ちの切り替わりは自然なことだし、悪いことじゃない。ただ、「なんとなく新年度だから始めよう」が、実は一番キケンなパターンだということを、現場で繰り返し見てきました。

――え、そうなのですか? せっかく気持ちが前向きになっているのに。

新井:「季節のモチベーション」に頼った起業準備は、ゴールデンウィーク明けには大体しぼんでいます。5月病と一緒に、起業熱も冷めていく。こういう方を何千人も見てきましたよ。「なんとなく」のままスタートすることが問題であって、4月に動き出すこと自体は最高のタイミングなのですから。

新年度スタート組の9割が、半年後に何も変わっていない理由

――少し厳しいお話ですが、どのくらいの方が「失速」してしまうのでしょうか?

新井:正直に言うと、4月に「起業したい」と言い始める会社員の9割は、半年後には何も変わっていません。全国各地での講演から見えてきた、僕の実感です。では残りの1割は何が違うのか。答えはシンプルで、「誰に売るか」を最初に決めているかどうか。それだけですよ。

――え、それだけですか? もっと複雑なことを想像していました。

新井:そうなのです(笑) でも「それだけ」ができない方が本当に多い。たいていの方は「何をやるか」から考えてしまいます。スキルを棚卸しして、資格を調べて、ビジネスモデルを考えて、SNSアカウントを作って……。気づいたら3カ月経って、まだ何も売っていない状態です。

――「準備すること」が「動いている感」に変わってしまうのですね。

新井:料理にたとえると、食材を買いまくったのに誰に食べさせるか決まっていない状態です。冷蔵庫はパンパンでも、献立が決まらなければ何も作れない。起業の準備も、同じ構造ですよ。

「パーフェクトカスタマー」を1人決めるだけで、景色が変わる

――「誰に売るか」を決めるために、具体的にどうすればいいでしょうか?

新井:起業18フォーラムでは「パーフェクトカスタマー(P/C)」という考え方を使っています。ペルソナに近い概念ですが、ひとつ大きな違いがあります。ペルソナは「架空の理想顧客」を設定するものですが、P/Cは「実在する、または限りなく実在に近い1人の人物」を特定するものです。

――なぜ「実在」にこだわるのですか?

新井:架空の人物には、ヒアリングができないからです。実際にその人の言葉で悩みを聞けて、どこで情報を探すか、いくらなら払うかが全部わかる。以前、相談に来た40代の男性会社員がいました。「コンサルタントとして独立したい」と言うのですが、何のコンサルか決まらない。「まず1人、助けたい人を思い浮かべてください」とお伝えしたら、彼が思い浮かべたのは前の部署の後輩でした。Excelもまともに使えず毎日残業している30代の男性です。そこから「ITが苦手な中間管理職向けの業務効率化サポート」というテーマが生まれて、今では会社員のまま月に15万円の副収入を得ています。

――最初の一歩は「1人を決めた」だけ、なのですね。

新井:まさにそれです。でも、そこを飛ばしている方がいかに多いか。

今週中にできる「3つのアクション」

――新年度に動き始めたい方は、まず何をすればいいでしょうか?

新井:3つあります。まず1つ目はP/Cを決めること。実在の人物がベストですが、難しければ「過去の自分」でもいいのです。3年前に何で悩んでいたか、何を検索していたか。それがあなたのP/Cになり得ます。2つ目はその人に「30分だけ話を聞かせて」と声をかけること。ビジネスの話をする必要はありません。「最近どんなことで困ってる?」でいい。この30分が、あなたの起業の方向性を決めます。

――それで3つ目は?

新井:聞いた内容を元に「仮の商品名」をつけることです。「○○さん向け△△サポート」くらいで十分。名前がつくと、不思議と「自分はこれをやるんだ」という覚悟が生まれます。ここまで、お金は1円もかかりません。資格も不要です。会社にバレることもありませんよ。

AI時代だからこそ、差がつくのは「顧客理解の深さ」

――生成AIの普及で、個人でできることの範囲が大きく広がりました。起業にも追い風ですよね。

新井:ホームページ作成も文章作成も画像生成も、かつては外注していた作業をひとりでこなせる時代になりましたよ。会社員が本業の合間に起業準備できる環境は、今が一番整っていると感じています。ただ、だからこそ大事なことがあって。AIは誰でも使えます。ツールで差がつかない時代に差がつくのは「顧客理解の深さ」なのです。

――「何をするか」より「誰のためにするか」が、ますます重要になってくるのですね。

新井:そうです。これは僕がずっと言い続けてきたことで、AI時代になってむしろその重要性が増していますよ。「なんとなく新年度だから」で動き始めた気持ちを、「この1人のために動く」に変える。それだけで、今年の4月は去年とまったく違う4月になります。

――「1人を決める」という、シンプルで力強い一歩ですね。今日はありがとうございました!

新井:こちらこそ、ありがとうございました。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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起業18フォーラム

起業18フォーラムを運営。会社員向けに特化した〝再現可能〟な起業ノウハウで、25年間で延べ6万人の起業を支援してきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛けている。会社員のまま起業する方法を伝授するプロ。

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