転機の兆しの見極め方|人生はいつも遠回り
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
「気が合う人」を選ぶのは「友達集め」であって「起業パートナー集め」じゃない
――新井さん、今日はよろしくお願いします。今回は「起業の仲間集め」についてお聞きしたいのですが、まず新井さんが26年間で感じた「よくある失敗」を教えてもらえますか?
新井:よろしくお願いします。ストレートに言いますね。起業して失敗した人から一番多く聞く話って、スキルの問題でも、事業内容の問題でもないんです。「パートナー選びを間違えた」、これが圧倒的に多い。
――えっ、そうなんですか。意外です。
新井:最初は笑顔で握手していた相手が、気づいたら自分の足を引っ張っていた、ということです。26年間で、本当にたくさんの方からそういう話を聞いてきました。だから今日は、正直に話したいと思っています。
仲間と起業する「メリット」と「デメリット」
――そもそも、仲間と一緒に起業することのメリットってなんでしょう?
新井:大きく2つあります。まずモチベーションが続きやすくなること。起業していると「もうダメかもしれない」と思う瞬間は、必ずやってくるんですね。そのとき、隣に「一緒に頑張ろう」と言ってくれる人がいるだけで、不思議と踏み出せるものなんです。
――もう1つは?
新井:起業には、営業・マーケティング・財務・オペレーションなど、本当にたくさんの役割が必要になります。ひとりの人間がすべてをカバーするのは、正直かなりしんどい。 得意分野が違うパートナーがいると、本当に助かるんです。
――では、デメリットは?
新井:意思決定に時間がかかること。それと、これが一番大事なのですが、間違った人を選んでしまうリスクです。
ポイント1:「自分にないスキル」を持っている人を選ぶ
「気が合う」は友達の基準、ビジネスパートナーの基準じゃない
――「間違った選び方」というのは、具体的にどういうことでしょうか?
新井:よくある、でも気づきにくい間違いが「気が合う人を仲間にしようとすること」なんです。
――あ、でもそれって自然な発想じゃないですか?
新井:気持ちはすごくわかります。起業は長期戦ですから、一緒にいて楽しい人と組みたいという気持ちは、とても自然です。でも、友達は感情でつながるが、ビジネスパートナーは役割でつながる。 そこが、似ているようで本質的に違うところです。
起業の仲間集めって、「自分に足りないピースを埋める作業」に近いんですよ。自分が営業に強いなら、財務や技術が得意な人を。自分がアイデアマンなら、実行力のある人を。2026年の今なら、AIツールをうまく使いこなせる人材も、とても心強い存在です。
ポイント2:「信頼できる人か」を見極める
スキルより大事なことがある
――スキルが揃っていればOKかというと、そうでもないということですよね?
新井:そうなんです。スキルより大事なことがあって、「この人は、しんどいときでも一緒にいてくれる人か?」という問いです。
――それって、どうやって判断すればいいんでしょう?
新井:「今までの行動」を見ることです。 たとえば、過去に何度も職場を短期間で離れてきた人は、少し慎重に見たほうがいい。もちろん、やむを得ない事情があることもあります。でも「より条件のいい話が来たから」という理由で動いてきた人は、同じパターンを繰り返すことが多いです。自分のビジネスが軌道に乗り始めたら、簡単にあなたから離れて我が道を行くことになる。
――なるほど、過去の行動は未来の行動を映す鏡、ということですね。
新井:まさにそうです。一緒に仕事をする前に、さりげなくその人の行動パターンを知っておくことをお勧めします。
ポイント3:「仲間を解消する」覚悟を最初から持っておく
「柵(しがらみ)」と「柵(さく)」は同じ字で、真逆の意味
――起業仲間って「苦労を共にした戦友」というイメージが強いですが、関係を解消することも考えないといけない、ということですか?
新井:そうです。でも冷たいことを言いたいわけじゃないんですよ。面白い話があって、「柵」という漢字、読み方によって意味が真逆になるんです。
――どういうことでしょう?
新井:「柵(さく)」は外敵から守るためのもの。でも「柵(しがらみ)」は、自分が前に進もうとするのをただ遮るもの。その人がいることで新しい判断ができなくなる、新しい挑戦に踏み出せなくなる、そうなってしまったとき、それはもうパートナーではなく、お互いの「足かせ」になってしまっています。
――起業家には、感情と判断を切り離す場面も必要ということですね。
新井:そうです。あと、これは意外と盲点なのですが、自分もいつだって切られる立場だということも忘れてはいけない。「ある日突然言われる」ということが、本当にあるんです。自分にとっては突然でも、相手にとっては違う。ずっと考えていたことなんです。
ポイント4:「同じベクトル」で動ける人か?
スキルも性格も違っていい。でも「向かう方向」だけは一致させる
――4つのポイントの中で、一番大切なものはどれでしょう?
新井:これが一番大切だと思っているのですが、「同じベクトルで動ける人か」というポイントです。スキルが違っていい。性格が違っていい。むしろ違うほうがいい。でも「どこに向かっているか」だけは、一致していないとチームはいつか崩れてしまいます。
――向いている方向が違うだけで?
新井:どちらが正しい・間違いではなく、ただ向いている方向が違うというだけで、一緒に歩くのはとても難しくなります。だから私は、「最初からビジネスパートナーを探す」というやり方をあまりお勧めしていないんです。
――え、それはどういうことですか?
新井:気づいたら「この人と一緒にやってみたい」と自然に感じる人に出会うのが、一番いいと思っています。意図的に探しすぎると、かえって「合いそう」という表面的な基準で選びやすくなるんですよ。
それでも、人は変わる。環境も変わる。
――4つのポイントを意識すれば、仲間選びはうまくいくでしょうか?
新井:正直に言うと、それでも人は変わります。環境が変わる。方向性が変わる。ある日、仲間が去っていくことがある。
――それは辛いですね。
新井:辛いです(笑)。でも、選ぶ基準を持っている人と、持っていない人では、たどり着く場所が違います。 感情だけで選ぶと、感情だけで壊れることがある。でも計算だけで選んでも、長続きしない。あたたかく、でも冷静に人を見てほしいですね。
――今日は本当に貴重なお話をありがとうございました。
新井:ありがとうございました。起業を目指している方の参考になれば、うれしいです。
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。現在、会社員を中心に、主婦、フリーランス、経営者など、独立起業・新規事業開発・マーケティング・海外進出を必要とするビジネスパーソンに向けてのセミナーや、自身が運営する起業準備サロン(起業18フォーラム)の受講者は年間のべ1000人を超える。
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