AI詐欺事件から学ぶ! 起業家が絶対に避けるべき5つの落とし穴とは? 起業18フォーラム代表・新井一氏に聞く
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
なぜ今、起業したい会社員は「発信」を始めるべきなのか?
――新井さんは最近「起業したい人は今すぐ発信を始めるべき」とおっしゃっていますが、その理由を教えていただけますか?
新井:そうですね、起業を目指している会社員の方って、不思議なことにインプットばかりしているんですよ。情報収集ばかりに時間を使っている。でも、起業って本来はアウトプットして価値を提供することですから、早くインプット中心の思考から脱却しなければならないんです。
――確かに、セミナーや本ばかり読んで満足してしまう方は多いですね。
新井:まさにそうです。もちろん最初のインプットは大切ですが、同時にアウトプットもすぐにスタートしてほしい。なぜなら、やらないと損をする時代が来ているからです。
今すぐ発信を始めないと損する3つの理由
――その「損をする」というのは、具体的にはどのような理由からでしょうか?
新井:大きく3つの理由があります。まず1つ目は、スマートフォンという デバイス自体がなくなる可能性があることです。
――スマホがなくなる、ですか?
新井:そうです。皆さん、いつまでこのデバイスが存在すると思いますか? 近い将来、GoogleグラスのようなARグラス、スマートウォッチ、あるいはもっと身体に密着したウェアラブルデバイスに変わっていく可能性が高いのです。そうなったとき、今のようにスマホを指でスクロールしてSNSやTikTokを見るという文化そのものが消えていくリスクがあります。
――なるほど、暇つぶしの方法自体が変わってしまうということですね。
新井:10年前、私たちがTikTokを何時間も見続けるような時代が来るなんて予想できませんでしたよね。暇つぶしの方法は確実に変化しています。今は無料でアルゴリズムを使って新しい人にリーチできる時代ですが、この恩恵がいつまで続くかは分からないのです。
無料プラットフォームの終焉が近づいている
――2つ目の理由はいかがでしょうか?
新井:2つ目は、SNS企業のプラットフォーム政策の変化です。TikTokは中国企業ですが、その他のほとんどはアメリカ企業ですよね。これらの企業が、いつまで無料でプラットフォームを使わせてくれるか分からないのです。
――トランプ政権の影響もありそうですね。
新井:まさにそうです。無料では使えるかもしれませんが、無料で拡散させてもらえるかどうかは完全に彼らのアルゴリズム次第です。インスタグラムの歴史を見ても分かるように、どんどん広告プラットフォームとして成長している。企業ですから、当然収益が重要です。
――無料枠がどんどん狭くなっていく可能性があるということですね。
新井:その通りです。お金を払ってくれる有料枠が、より多くのデータ容量を占めるようになっていくでしょう。今は無料で新しい人にリーチできる、ある意味で「ピークの時代」かもしれません。だからこそ、今のうちに始めておくべきなのです。
AIが変えるコンテンツ競争の landscape
――3つ目の理由についても教えてください。
新井:3つ目は、AIの進化によるコンテンツ制作の変化です。AIが進化すればするほど、バズるコンテンツを計算して作れるようになります。優秀なAIとマーケーターがいる、資金力のある企業が最適化されたコンテンツを量産するようになると、私たち素人の「ラッキーパンチ」みたいなバズが起こる確率は確実に減ります。
――ビギナーズラックの機会が少なくなるということですね。
新井:そういうことです。今はまだAIに依頼してもそこまで刺さるコンテンツは出てきませんが、今後は確実に変わります。もちろん、これらの流れを全部ひっくり返すような新しいSNSが現れる可能性もありますが、それを待っているより、今の無料でユーザーに優しい土台があるうちに発信を始める方が賢明だと思います。
忙しい会社員でもできる発信方法とは
――「今は忙しくてSNSができない」という会社員の方も多いと思いますが、いかがでしょうか?
新井:正直、そういう話は毎日のように聞いていて、うんざりしているところもあります(笑)。でも、人生ずっと忙しいわけではないですし、忙しい人でもSNSをやっている人はたくさんいます。
――確かにそうですね。時間管理の問題でもありそうです。
新井:子育て中、介護中、健康問題、本業が忙しい...それらは全てオッケーですし、最優先にしてほしいです。ただし、ビジネスをしたいと思っている人については、それでも今やっておいた方がいいことがあります。
――具体的にはどのような発信方法を推奨されますか?
新井:ライブ配信でもいいし、無編集でもいいから生の面白い動画を1日1本撮る。あるいは書き込み1個でもする。自分が表に出る必要もありません。文字だけ、手元だけ、声だけでもいい。とにかく発信し続けることが重要です。
Google検索の時代は終わる? 信用残高としてのSNS
――SNSを長く続けることの意味についてはいかがお考えですか?
新井:SNSには広告プラットフォームという側面もありますが、長く続けることで信用残高が蓄積されていくという重要な側面があります。昨日今日始めた人より、10年やっていてそこそこフォロワーもいる人の方が、「ちゃんとビジネスをやっている人だな」と信頼されやすいのです。
――なるほど、実績の証明にもなるということですね。
新井:ただし、アカウントを作って放置していたら全然バズらない、見られないアカウントになってしまいます。少しずつでも、毎日でも1日おきでも投稿を続けてほしいですね。
――最後に、これが一番重要だとおっしゃることがあるとお聞きしましたが。
新井:はい。Google検索の時代は間もなく終わります。これが一番クリティカルで重要なポイントです。AIが進化するので、今まで「Google検索→スキルシェアサイト→申し込み」という導線があったものが、基本的になくなります。みんなAIで探すようになるからです。
――検索行動そのものが変わってしまうということですね。
新井:そうです。もちろん、LLM(大規模言語モデル)からホームページに飛んでくる人は一定数いるでしょう。でも、SNSで見つけてもらえる体制を作っておくことが、今まで以上に重要になることは間違いありません。
――本日は貴重なお話をありがとうございました。起業を目指す会社員の皆さんにとって、非常に参考になるお話でした。
新井:こちらこそ、ありがとうございました。皆さん、頑張って発信を始めてみてくださいね。
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア25年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。現在、会社員を中心に、主婦、フリーランス、経営者など、独立起業・新規事業開発・マーケティング・海外進出を必要とするビジネスパーソンに向けてのセミナーや、自身が運営する起業準備サロン(起業18フォーラム)の受講者は年間のべ1000人を超える。
→ 新井一のセミナー日程一覧



