3月末の春休み

小室千雪

小室千雪

3月の末の春休みに、わが「ELFえいごの寺子屋」の卒業生が集い、同窓会を開きました。                             
集まったのは4名の大学生。近況報告からの、はじまりはじまりです。


A君は高校の時に1年間NY州の高校に留学。英語をモノにした後、戻ってきて大学受験の
猛勉強、見事志望校に合格して、現在は航空宇宙学を学ぶ大学2年生です。

A君がわがELFに入ってきたのは小学2年生の時でした。当時のA君は文字通りの「悪ガキ」。
担任の先生を怒らせて居残りをさせられることもしばしば。そのたびにレッスンに遅れてきて、
母親をオロオロさせたものです。

ある時はレッスン中に仲の悪かった男の子と喧嘩になり、「ケリを入れ」相手を泣かせたこともありました。
この時ばかりは私も「目を三角にして」怒りましたが、その話をすると、
「先生、誰かと間違えているのではありませんか?僕には覚えがないけど」とニヤニヤ。
軽くあしらわれてしまいました。

思えばA君は手に負えない「悪ガキ」でしたが、「勇気」がありました。
英語がほとんどできない時から、NY州のサマーキャンプ“ONYAHASA”が大好きで、勇んで参加していました。
気が付くと「前にいる」。気が付くと「中央にいる」。
彼の全身を使った会話術がいつも周囲に受け入れられたのです。
わたくしはその様子を見て、「彼は英語をモノにする」と確信しました。

その通り!彼は高校1年の時NY州のハイスクールに留学、今ではネイティブ顔負けの米語を使いこなし、日本に帰ってきて、航空宇宙学を学ぶ大学生。
お母さん「自慢の息子」になっています。

B君が「寺子屋」入りしたのは、中学生になったばかりの頃。
どちらかというと「ひ弱なお坊ちゃん」という印象でした。
彼はすぐにNY州のサマーキャンプに参加。英語の基礎能力はあるように思いました。
ところがその後彼の人生に一大転機が訪れます。父親の海外赴任のため一家でスイスに移住したのです。
ちょうどコロナ禍で集団レッスンが難しく、ひとりひとりの動向が気になっていました。
「B君はどうしているかな?彼の英語力でやっていけるかな?」

「先生、僕が苦労したのは、日本へ帰ってきてから・・・ですよ」。
学期の違い(日本以外は大体9月新学期)が原因で、結局高校は1年遅れ。
だから、復学は、昔の仲間のいない学校を選んだのです。

彼の解説によると、片道2時間近くかかる大学の付属高校。
「我ながらよく頑張りました」と胸を張っていました。
そして、この3月に高校を卒業、持ち上がりで大学に行くのではなく、9月(新学期)から
アイルランドの大学に留学を決めたそうです。

「先生、この留学は自分の意志で決めたこと」と自信満々。
わずか数年で、驚くほどたくましくなったB君に目を丸くして、思わず「それで将来はどんな仕事をするの」
と問いかけると、「金融方面かな、思いっきり稼ぎまくる!」と断言。
わたしは思わず「初サラリーで、日本一おいしい鰻丼をご馳走して」とイヤラシイおねだり。
でもすぐ気づきました。
B君は初サラリーの時たぶん日本にいない。ウーン、ザンネン!

C嬢がELFに入ってきたのは、小学校4年の時でした。
喜怒哀楽が表情に出ない子で、英語のレッスンが楽しいのかどうか不安を感じながら過ごしていました。
ただ1日も休まず来ていたので、それなりに興味持って取り組んでいると信じてはいましたが・・・
わたしがC嬢の素顔に触れたのは中3の時に行ったNY州のサマーキャンプのある1日でした。
最初の1週間が過ぎた頃、「先生、友だちができない」と涙ぐんでいました。
こんな時、わたしの言うのはお決まりのひと言。
「いつもより1歩前にでて、相手の目を見て、YES,NOをはっきり言うこと」。

英語を話す時は、いつものC子ちゃんと違うC子ちゃんになりなさい、と言い、
「変身(ヘンシーン)」と呪文を唱えるおどけた表情をしてみせました。
聡明な彼女には、わたしの言わんとすることが十分わかったと思います。

キャンプにいる間、できるだけ彼女の姿を追いかけ、注意深く観察しました。
心なしか笑顔が増え、最終日にハグを交わして別れを告げる友だちが数人できたようです。

やがて高校生になって、C嬢の母親と話す機会がありました。お母様曰く。
「英語が得意になってから、あの子は性格が変わったように思います」。
そこで、わたしの答え。
「よく言えば、自己主張をしっかりするようになった。悪く言えば、口応えが多くなった」
でしょう。(笑)
高校ではチアリーディングの部長も務めていました。成績も学年でトップレベルだったそうです。

それからしばらくして、彼女から突然電話をもらいました。

「先生、ワセダのセイケイとガイゴダイどちらにしようか迷っています」???
よく聞けば、大学受験は志望校すべて合格。最終的に「早稲田の政経と外語大に絞って、どちらにしようか迷っている」とのこと。これが彼女流の「おかげさまで」の感謝の表現。
わたしは「なんて贅沢な」とうれしくなり、自分がが今20歳だったらどうするかを考え、私なりの意見を告げました。

結局彼女は早稲田の政経に進み、部活はマンドリンクラブ。この4月から最終4年生です。
報告によれば、もう就職も内定、ひとつは一流銀行、もうひとつはIT企業だそうで、どちらにしようか迷っていると、またまた贅沢な相談。
賢い彼女のこと、自分の意見はしっかり決まっていると思いましたので、無責任に
「よい旦那を見つけるなら銀行かな。好きな仕事を続けるならIT企業かな、
自身でやっていて楽しく思える企業を選択しなさい。」と言っておきました。

最後に紹介するD嬢は、うらやましいぐらい「何でもできる子」。
頭脳も理系で、今「建築家」の道に進むか「生物学」の道に進むか考えている現役3年生です。
彼女の素晴らしい点は、成績優秀にもかかわらず、偏差値などに重きを置かなかったこと。
面白いこと、やりたいことを次々に見つけてきて、どんどんチャレンジしていく器(うつわ)の大きさを感じました。
彼女は中高一貫の女子高育ちでしたので、「大学へ行ってまず何をしたい?」という私の質問に
「ボーイフレンドづくり」と即答しました。これには全員大笑い。

彼女の特技は、自分の失敗談を笑い話にして披露することです。これはなかなか難しいことで、
ゆるぎない自信の裏返しとも言え、いつもある種の感動をもって笑いこけています。

さて、今回は「ELFえいごの寺子屋」の同窓会のこぼれ話。
わたしは彼・彼女たちのこれからが楽しみでなりません。

受験のためでない英語教育を目指して立ち上げた「ELFえいごの寺子屋」で結ばれた細くて短い「絆」がひとりひとりの日常の中で生き続けていることが確信できて、うれしい限りです。


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小室千雪
専門家

小室千雪(英語講師)

株式会社team CK

子どもの英語学習の「はじめの一歩」。将来、グローバルで活躍できるように文化・習慣なども含めて「世界共通語の英語」を指導する。また、全世代を対象にニーズに応じたマンツーマンのオンライン講習も開講中。

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