ELFえいごの寺子屋の10年

小室千雪

小室千雪

12月25日は、もちろんクリスマス。同時に私の誕生日でもあります。
“How old are you now?” そのQ&Aはナシです!

昨年はクリスマス当日が最後のレッスン日で、小学2,3年の女の子たちが
「先生、お誕生日おめでとう」と手作りのケーキをプレゼントしてくれました。
手芸品玩具で作ったケーキと折り紙でつくった誕生日プレゼントで、
「先生、目をつぶって。イチ、ニイ、サン!はぁ~い!」という具合。
こんな時は寺子屋を始めて本当によかったなと、少しウルウルします。

【ELFえいごの寺子屋】が正式にスタートしたのは、2013年10月。
その前の数年間、縁あって母校である大田区の小学校で月1回英会話の授業をしていました。学校が自主的に行っていた外国語教育活動です。
その時ご一緒した保護者の方々のおすすめと応援を得て寺子屋をたちあげたのです。

設立にあたって、私はたったひとつの‟決め事“をしました。
それは「受験のための英語教育はしない」ということです。

まさに10年ひと区切りという意味で、この10年を振り返ってみたいと思います。

まずエポックメーキングは、2020年4月から小学3~6年生対象に「英語科目」が
必須化されたことです。
このことをアタマにおいて、寺子屋と子どもたちの進化・変化をお話しします。

はじめのころ、私自身が手探り状態でした。
レッスン内容も学校の外国語活動の延長で、ゲームやアクティビティを中心にした
カタチにはまったもの。
とにかく、わが寺子屋で「英語ギライ」をつくってはいけないと思っていましたから、
明るく楽しくがモットー。
先生(私)の指示通りに動いて、楽しい1時間が終わり、帰っていく、といった具合でした。「宿題ナシ」と決めていましたが、1か月に1度手づくりのCDを渡し、
「時間があったらお父さんお母さんと一緒に聞いてね」と言いました。
私の持論は「語学教育はファミリー・プロジェクト」というもので、
日常生活の中にどう英語を組み込んでいくかを一緒に考えてください、と
保護者の皆さんにお願いしていました。通知簿チェックではだめです。

長い間マーケティングビジネスに取り組んできた私が「寺子屋の師匠」になるとは
思いませんでしたから、当時は英語教育の講習会にも熱心に通っていました。
システマチック、トップダウン形式、年齢別教育法・・・ハテナ?でした。

2017年頃になるとCLIL(Content and Language Integrated Learning)という
新しい指導法が導入され、主流になってきます。
これは子どもたちの好きな分野や興味のある科目を英語で勉強するという
体験型総合学習法です。
この学習法の最大のメリットは、子どもたちひとりひとりの「好きなこと=夢」が
英語と結びつくことです。

例をひとつ。ある男の子は勉強が嫌い。数学も理科もダメ。
しかし、サッカーが好きで上手で、地域のチームで大活躍しています。
心ひそかに「アメリカの大学チームでサッカーをしたい」という夢をもっています。

ある時、彼の前で「元日本代表チームのゴールキーパー川島さんって知っている」と
つぶやきます。もちろん彼は知っています。
サッカーやったら」。真面目とも冗談ともつかず・・・この瞬間、彼の体の中で
「夢と英語」が連結しました。
それ以降、彼の英語に取り組む姿勢が明らかに変わってきました。

彼の中で、英語はキライな勉強ではなくなり、自分の夢を実現するのに必要な
「道具」になったのです。
「サッカーのひとり練習の中に、英語を組み入れなさい」と言ったら、
「先生、うまいこと言うわね」と笑われました。

当時の私は、子どもたちひとりひとりから「好きなもの」「得意なもの」「将来の夢」
などを聞き出し、それをレッスンにどう活かすかを考えました。
絵を描くのが得意な子、歌・ダンスが得意な子、数学が得意な子・・・ひとりひとりを
思い浮かべながら、CLILのミニプランを準備しました。

結果として、子どもたちの英語に対する興味のレベルはアップしました。
それまで受け身でレッスンしていた子どもたちから、「コレをやってみたい」
「アレをやってみたい」などリクエストが出るようになったのは大きな成果でした。

しかし、この学習法には大きな難点もありました。小学生のレベルであれば、簡単にレッスンプランをつくれるのですが、中高レベルになると、専門性が高くなって、
話題の中に私の知らないことがたくさん出てくるようになりました。
私の方が予習に追われるハメになったのです(笑)。


また、この時代並行して行ったのはNY州のサマーキャンプ(正式名“Camp ONYAHSA”)に参加すること。
旧知の間柄であったCamp Directorの協力を得て、毎夏数名参加しています。
年齢は9歳以上、高校生まで。保護者同伴も可能。英語のレベルは問いません。
夏休み中の3週間、24時間英語生活にドップリつかります。

年齢の違う、コトバの違う子どもたちの集団生活。大自然の中のキャンプです。
ひとつのキャビンで寝起きし、スポーツ、歌演劇、自然観察、食事、キャンプファイヤー
などに明け暮れます。

私は参加する子どもたちに次のことを強調します。
「相手の目を見て話しなさい」「大きな声を出しなさい」
「YES、NOをはっきり言いなさい」「全身を使いなさい」・・・
キャンプで必要なのはサバイバル英語。間違いを恐れずに、自分の意志を伝えること。
サッカーのうまい子には自然にボールが集まって来ます。
歌の上手な子は自然に立ち位置が中央になってきます。

最初の1週間オドオドしていた子が、最終週にはサークルの人気者になっている、
こんなことがあるのです。

当時の中学生は今大学生。Camp参加がきっかけで英語大好きになり、
留学を果たした生徒が数人います。時々メールを交換したりしています。

そのうちのひとりの保護者(お母さん)とは、時々話すのですが、「キャンプ参加の3週間で実は子離れできたのです(笑)」と言われ、「私、わかっていましたよ(笑)」と答えました。

さて、わが寺子屋のレッスンにひとつの流れが出来かけた時に、立ちふさがったのが
「コロナ禍」です。

病禍はとりあえず乗り越えた形ですが、心に残したキズ痕は思いの外深い、というのが
私の見解です。子どもたちは全体的にナイーブになったような気がします。
繊細な心の内側を覗き見ることはできませんが、些細なきっかけで学校登校を
やめてしまう子どもたちが増えているようです。

データー的にみると、2023年度の不登校の小中学生は34万6482人で過去最高。
11年連続の増加で、今後も増加の一途をたどると予想されています。

私が気にかけているのはその理由です。イジメとか成績不良とかではない。
原因がよくわからない。親も担任教師も?????と首をかしげてしまう。
私は2年余りのマスク生活、オンライン授業で「内も外もひとりっ子」状態になったことが
影響していると思います。
オンラインでは授業中の存在感ナシ、部活仲間も友だちもナシ、両親は共働きで留守がち。自分に反応してくれるのは、スマホの中のゲームだけ。
だから、学校も友だちも時には家族さえも「頭の中から消していい存在」になって
しまっているのではないでしょうか。

私は【ELFえいごの寺子屋】を、ひとりっ子状態から抜け出すためのベースキャンプに
したいと思っています。

英語でコミュニケーションするということは「今までの自分と違う自分になる」
いちばん簡単な方法です。

あるお母さんから「引っ込み思案で鬱ぽかった娘が、こちらで英語を習うようになり、
少し成績も上がったら、最近は自己主張が多くなって」と笑顔で愚痴られました。

私は答えました。「そうです。英語は自己主張するためのコトバです」。


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小室千雪
専門家

小室千雪(英語講師)

株式会社team CK

子どもの英語学習の「はじめの一歩」。将来、グローバルで活躍できるように文化・習慣なども含めて「世界共通語の英語」を指導する。また、全世代を対象にニーズに応じたマンツーマンのオンライン講習も開講中。

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