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久しぶりの米国大学インターンシップ活動

小室千雪

小室千雪

NY州立大JCCインターンシップ学生
Andrew君を迎えて


コロナ禍で一時中断していたJCC(Jamestown Community College)のインターンシップ活動が再開。約3年ぶりにJCCの学生が来日しました。

インターンシップとは、学生が「社会に出る前に実社会の体験をしてみる」、いわば職業体験授業のこと。近年は異文化交流をベースに海外でこのカリキュラム(curriculum)を行う学校が増えています。

JCCでは提携先の5つの外国(日本はそのひとつ)の中から、行きたい国を選択し、書類審査・面接審査を受けて合格すれば、1学期間その国でインターンシップ・プログラムが受講できます。
具体的な内容は、派遣先の国で「ホームステイしながら、ボランティアで最低270時間の仕事体験を行う」。そして、その体験をベースにして、担当教授から出された課題に応えるレポートを提出し、単位を取得するという仕組みです。

他の留学生ホームステイ・プログラムと異なり、コトバ(日本語)の習得を目的としたものではありません。
異なる言語、異なる文化の中にどっぷり浸かり、そこで日々直面する問題にどう対処するか。いわば「問題対処能力があるか」「危機管理能力があるか」が試される非常に挑戦的な授業で、人間力をもったグローバルな人材の育成に役立ちます。

わたくし(株式会社team CK=「ELFえいごの寺子屋」主宰)は、JCCの日本の責任者として、学生たちのお世話はもとより、ホームステイ先や仕事体験のできる場のコーディネートをしています。
もちろん「ELFえいごの寺子屋」は、学生が体験する職場のひとつ。日本の子どもたちに「英語を教える先生」の体験をしてもらいます。

今回来日したのはAndrew Downs 君(22歳)。わたしがこのプログラムをはじめてから6人目にあたります。彼は間もなくJCCを卒業し、次のStepに挑戦します。その前の異文化体験の場として、日本でのインターンシップを選んだといいます。






以下、Andrew君と寺子屋の子どもたちの「ぶつかり稽古」のはじまりはじまり。

彼はレッスンの初日、非常にクールに自己紹介をはじめました。ところが時間とともに、子どもたちの顔が曇ってきたのです。
とにかく彼の英語のスピードが速い!速い!

「なにを言っているのか全くわからなかった」にはじまり、「単語ふたつしか聞き取れなかった」など、ぼやきの数々。
「娘が家に帰ってきて急に泣き出した。何があったのでしょうか」というお母さまからの心配の電話。中学2年の彼女は、英検3級までスムーズに合格して、ちょっぴり英語に自信をもっていたのですが、この日に木っ端みじん。
つまり、この日この時間に、全員がアメリカ東海岸のネイティブスピーカーの早口英語の「洗礼」を受けたのです。

しかし、これは「想定内」のこと。わたくしは、あらかじめAndrew君にはゆっくりとはっきりと英語を話すように指示していました。しかし、そのことを十分に意識しても、このスピードだったのです。

もしAndrew君が英語教師をめざしているなら、話すスピードにこだわったと思います。しかし、彼の目標が別にあることを知っていましたので、わたしは意図的に、さらなる英語のスピードダウンをリクエストしませんでした。

Andrew君は、英語の先生になるトレーニングに来たのではありません。ですから、細かい英語教育の指導を受けてきたわけではありません。
Andrew君と子どもたちの出会いを、わたしは「チャレンジの場」にしたいと考えていました。

まずAndrew 君に「いま何が起こっているか」を正しく理解してもらいました。そのうえで、言葉が違う、文化が違う子どもたちと「短期間に人間関係を築くアイデアはないかしら」と問いかけました。コトバが十分通じなくてもコミュニケーションができる信頼関係をつくりたいと考えたのです。
これはAndrew君にとっても、子どもたちにとっても「チャレンジ」です。
Andrew君は「週末に考えてみる」と答えました。
月曜日に提示した彼のアイデアは以下の通りです。


①小学校低学年の子どもたちに…

話題をアメリカのキャンディの紹介に絞る。彼は現物や写真を見せながら、そのキャンディはどんな味か、どんなに人気があるかを簡単な言葉を使い説明しました。時にゆっくり、時に繰り返し、時に表情豊かに。
今、何の話をしているかがわかるだけでも、コミュニケーションの中身が濃くなります。
味の話、色の話…子どもたちの基礎英語文例がたくさん出てきました。「どっちが好きか」「寝る前に歯を磨いているか」など、話題がどんどん拡がっていきました。
そして、レッスンの終わりに、アメリカから持参した話題のキャンディをお土産に。




②得意の手品を組み込む

Andrew君はトランプ手品を得意にしています。高校時代に手品にはまって、インターネット動画を見ながら練習したそうです。
早速コンビニでトランプを購入。レッスンの息抜きにこのトランプ手品を披露するというアイデアです。
カードをカットしたり、選んだり…子どもたちも参加しますから
これもいいアイデアかもしれません。

 Andrew君も久しぶりの手品で、時々失敗をします。首を傾げたり顔を赤らめたり、子どもたちとの距離がまた一歩接近した瞬間です。

③Reading/Essayのサポート

中学生、高校生になると英語力の個人差がはっきりと出てきます。
各人に強い点、弱い点があり、学校や本人の希望によりアカデミックなサポートが必要な場合もあります。
Andrew君はReading comprehension/Writing(300語以上)のサポートをするプランを出してくれました。

素晴らしい点はひとりひとりの学力やニーズを大まかに判断し、適切な対応をしてくれたことです。Writingに関しては、Essayに必要な「骨組み」をチャートで示し、出来上がったEssayの赤字添削までしてくれました。

わたしが子どもたちにアドバイスしたことは、たったひとつ。「わからない時は、わからない、何が分からないのか自分の言葉で伝えるチャレンジをしてください。」ということです。

「もう一度言ってください」「もっとゆっくり言ってください」「ここはわかったが、ここがわかりません」と伝える、これが子どもたちの「チャレンジ」です。ニヤニヤ笑って、わかったようなふりをするのは絶対ダメと厳しく言いました。

結果は?大成功!でした。

わずか3週間。各人3~4回のレッスンで、学び・身につけたことは「英語は完璧にできなくても大丈夫」という妙な自信です。わからない時は「わからない」とはっきり言うチカラです。

ここに、ネイティブスピーカーの早口英語を体験する価値があります。むかしむかし、わたしは日本の大學を卒業後にアメリカに留学し、この経験をしました。今の子どもたちはこんなに早くから体験できて本当にうらやましいと思います。
Andrew君のチャレンジも形を変えて彼自身の人間力を高めてくれると確信しています。

Andrew君が来日して1週間ぐらいたったころ「東京の印象」を尋ねました。彼の答えはたったひと言Busy!でした。

最近の学生は日本に来る前に、ネットを駆使して下調べをしてきます。ですから、日本に関する知識は十分。疑似体験旅行済みです。
しかし、実体験は想像をはるかに上回るものだったのでしょう。Busy!の4文字はそれをよく現わしています。

しかし、最近の彼のフリータイムの行動を観察すると、このBusy!がPractical/Convenient!と都会の良さを感じてきたようでした。たぶん彼のインターンシップ・プログラムの選択は大成功だったのでしょう。






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小室千雪
専門家

小室千雪(英語講師)

株式会社team CK

子どもの英語学習の「はじめの一歩」。将来、グローバルで活躍できるように文化・習慣なども含めて「世界共通語の英語」を指導する。また、全世代を対象にニーズに応じたマンツーマンのオンライン講習も開講中。

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