クーリング・オフ 意外と知られていない重要ポイントQ&A その2
あなたは、クーリング・オフをご存知ですか?
講座などでは、参加者の7割ぐらいの方が「知っている」と答えます。でも、具体的な内容を説明できる方は少ないのが実情です。
今回は、クーリング・オフの中でも代表的な「特定商取引法」の中のクーリング・オフ制度の「意外と知られていない」ポイントを、Q&A形式でご紹介します。
*宅地建物取引業法や保険業法など、消費者が契約する頻度の高い他の法律にも、内容が少しずつ異なるクーリング・オフ制度があります。
【Q1 そもそもクーリング・オフってなに?】
A1 消費者トラブルが多いタイプの取引について、消費者が契約した後、頭を冷やしてじっくり考える期間を設けて(熟慮期間)、一方的に契約を解除できる制度です。
民法上の大原則では、契約を結ぶ時もやめる時も、当事者同士の合意が必要です。しかし、消費者が事業者と契約する場合、契約に関連する知識や交渉力には大きな格差があります。
そこで、消費者トラブルの多い契約取引や保険や一部の不動産購入などの契約について、消費者保護のために設けた制度がクーリング・オフ制度です。
クーリング・オフの規定がある代表的な法律が、「特定商取引法」です。
この法律は、消費者トラブルが多い7つの取引類型について、事業者が守るべきルールや消費者保護のための民事ルールを定めています。そのうち、通信販売を除いた6つの取引類型に、クーリング・オフは設けられています。
[特定商取引法でクーリング・オフ制度がある取引類型]
・訪問販売…突然の来訪や、目的外の勧誘やキャッチセールスなどで不意打ち的に契約した場合
・電話勧誘販売…突然の電話や、手紙やEメール、SNSなどで電話を掛けるよう誘われて契約した場合
・特定継続的役務販売…5万円を超えるエステティックサービス、語学教室、学習塾、家庭教師、パソコン教室、結婚相手紹介サービスを一定期間継続する契約
・業務提供誘因販売…「この仕事をすれば収入を得られる」「そのためには○○が必要」と言って買わせる契約
・連鎖販売取引…マルチ商法(ネットワークビジネス)
・訪問購入…店舗以外の場所に業者が出向き、消費者から物品を買う契約
*表の出典元:東京都「東京くらしWEB」より引用
【Q2 店や通信販売で買った洋服もクーリング・オフできますか?】
A2 いいえ。店に買いに行った場合や通信販売には、クーリング・オフ制度がありません!
クーリング・オフ制度は、不意打ち的に勧誘されて契約してしまった場合や、消費者にとって契約内容が複雑でわかりにくい取引に適用される制度です。
店に出向いて買うのも、通信販売も、買う前に自分で熟慮して選ぶことができます。買った後の熟慮期間不要なため、クーリング・オフ制度はありません。
また、自分から「契約するから来てほしい」と業者を自宅に招いた場合も、対象外です。但し、水道の緊急修理など、「とりあえず状態を見てほしい」「見積もりだけ」と呼んだのに、意図しない契約をさせられた場合は、クーリング・オフが使えます。
【Q3 契約した日から8日間過ぎてもクーリング・オフできる場合があるってホント?】
A3 はい。法律上正しい契約書面を受け取っていなければ可能です。
基本的に、「契約したい」「OKです」とお互いに合意すれば、契約書がなくても契約は成立します。「契約した日」とは、その合意した日になります。
ところで、消費者と事業者の間には、知識や情報の格差があります。
特定商取引法では、対象となる取引について、事業者に対し、口頭で説明するだけではなく契約書をすぐに発行して消費者に渡すよう義務付けています(通信販売以外)。しかも、契約書に記載しなければならない内容や、文字のサイズ・色まで法律で定めています。これを「法定書面」といいます。クーリング・オフ期間の計算は、この正しい「法定書面」を消費者が受け取った日から始まります。
その一例として、リフォーム工事などの契約書の工事明細は、材料の[メーカー名、型番]×商品単価×数量、その材料の施工単価×数量のように、具体的な詳細を書かなければいけないルールなっています。
仮に、受け取った契約書面の明細が、[〇〇工事 一式 △△△円]のように一式明細になっていたら、それは法定書面不備になります。すると、契約した事業者は、改めて正しい「法定書面」を消費者に渡さなければなりません。この場合、消費者が正しい「法定書面」を受け取るまでは、たとえ3年後でもクーリング・オフの日数のカウントダウンは始まりません。その間、いつでもクーリング・オフは可能です。
【Q4 屋根リフォーム工事をクーリング・オフしようとしたら、もう材料を手配したからダメと言われました。本当ですか?】
A4 いいえ。クーリング・オフ期間中であれば、相手が材料を準備しようが関係なく契約解除できます。
クーリング・オフは、契約を一方的に解除できるとても強い制度です。有効な場合は、契約した事業者は返品・返金の経費や損害賠償の請求、クーリング・オフの拒否ができません。
もし、事業者が拒否や事実と違うことを告げたり、消費者を困惑させるようなことを行ったりした場合は、「クーリング・オフ妨害」になります。その場合のクーリング・オフ期間のカウントダウンは、クーリング・オフに関する法定書面を改めて消費者が受け取り、さらに事業者から「これから8日間経過するまではクーリング・オフできます」と口頭できちんと説明を受けるまで始まりません。
(続く)