土地や建物に抵当権が設定されたら、共有不動産はどうなるの?
「共有持分っていくらで売れるの?」
「売却価格が安い理由は?」
「どうしたら高く売れるの?」
共有持分を売却する際に気になるのは「価格」。通常の不動産と比較すると持分の売却は安いとれています。
この記事では共有持分の売却価格の算出方法と、売却価格が低い理由、高く売るための方法を紹介します。
■1. 共有持分の売却相場はいくら?
共有持分の売却価格は「共有者に売却する場合」と「第三者に売却する場合」で算出方法が異なります。ここでは2つの売却先の価格算出方法を紹介します。
1-1 共有者に売却する場合
共有者に売却する場合は以下の計算式で算出できます。
共有持分の売却価格=共有不動産の市場価格×持分割合
市場価格が3,000万円で持分割合が1/2の場合、約1,500万円が売却価格の目安となります。市場価格は実際に所有している不動産の周辺で取引された価格を指し、国土交通省の地価公示・地価調査・取引価格情報 にある、「不動産取引価格」で確認することが可能です。ただし、土地の場合、立地が近くても土地の大きさや形状などによって物件ごとに価格が異なります。また建物がある場合、間取りや広さ、築年数などによっても価格に相違が生まれます。そのため市場価格は一つの目安として参考にし、実際は不動産会社や不動産鑑定士へ査定を依頼することになります。また売却価格は共有者同士で合意できる金額でなければいけません。市場価格より安い金額に設定しても、そもそも購入できる財力がない方もいらっしゃいます。その場合は第三者に売却する流れとなります。
1-2 第三者に売却する場合
買取業者や投資家などの第三者に売却する場合、共有者に売却する価格の3割〜6割程度になるケースが多いです。共有者に売却するのと異なり、買い取る業者は不動産を自由に活用することが出来ないためです。さらに持分を買い取ることでさまざまなリスクが伴うため、本来の価格より安くなるケースがほとんどです。次の項では買い取り価格が安くなるリスクについて紹介します。
■2. 共有持分の売却価格が低い理由
第三者へ共有持分を売却する場合、市場価格より安くなります。その理由は主に以下の2点が挙げられます。
2-1 不動産の活用には共有者全員の同意が必要だから
不動産の活用には基本的に共有者全員の同意が必要となるため、持分を購入したからと言って、不動産を活用できる保証がないことから売却価格は安くなります。不動産は「変更」「管理」「保存」の行為ごとによって共有者から必要な同意が以下のように定められています。
持分の過半数以上を所有していれば、賃貸物件として貸し出すことができますが、他の共有者から意見を言われる可能性も高いです。
上記のように不動産の活用は共有者の同意失くして行うことが現実的に難しいため、売却価格は低くなってしまう傾向にあります。
また不動産の変更は2023年4月の民法改正により、以下の通り改正されました。
■民法251条
改正前 | 改正後 |
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。 | 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。 |
形状又は効用の著しい変更を伴わないものとは、屋根の補修工事や外構のアスファルト工事などが該当します。
改正前は共有者全員の同意が必須でしたが、改正により軽微な変更行為であれば、持分の過半数の同意で実施できるようになりました。
2-2 他の共有者とトラブルになる可能性があるから
もう1点共有持分の売却価格が安い理由は「他の共有者とトラブルになる可能性が高い」ためです。
共有者に内緒で持分を売却すると、当然ながら他の共有者の反感を買うことになります。
そんな中、新たな持分の購入者である第三者が、他の共有者に持分の買取交渉をおこなっても、一筋縄ではいかないことは想定できるでしょう。
そのため持分を買い取る第三者からすると、共有者が多い不動産や共有者の人間性なども購入時の判断する材料にもなるでしょう。
■3. 共有持分の売却価格を高くするためには
共有持分の売却価格を高くするためには、以下の3つのポイントを確認しておきましょう。
3-1 持分割合を増やしておく
持分の売却価格は、持分割合に応じて変わるため、可能であれば他の共有者の持分を譲り受け、売却前に持分割合を増やしておきましょう。
また、持分割合が増やすことで、自ずと共有者の数も減ることになります。
共有者の数が少なくなれば、単独名義にできる可能性も高まるため、価格が高くなる傾向にあります。共有名義の不動産は共有者が多いほど同意を得る数も増えるため、手間と労力がかかり、なおかつ反対される確率も高まります。
しかし共有者が2名などであれば、残りの1名分の持分を購入するだけで自由に不動産を活用することが可能となります。
もちろん100%購入できるとは限らないものの、共有者が5人や6人と多い人ほどと比較すると単独所有できる確率も高く、好条件で持分を購入する買主が現れるでしょう。
3-2 売却にかかる費用を抑える
売却にかかる費用は、通常売買代金から差し引かれ相殺されます。
共有持分の売却にかかる費用は、仲介手数料、相続登記費用、譲渡所得税、測量費用等があります。
せっかく高い金額で売買が成立しても、売却にかかる諸費用が大きいと手残りが少なくなってしまいます。
共有持分の専門業者の中には、仲介手数料やその他費用が0円で売却できる会社もあります。査定額以外に、売却にかかる費用についても複数社比較しましょう。
3-3 ローンを完済しておく
住宅ローンやアパートローンなどの残債がある場合は、完済しないと売却できません。ローンが残っている場合は売却代金で相殺し、抵当権を抹消します。
そのため、完済しないと手残り金額が減ってしまう可能性も高くなります。
また自分だけでなく、共有者が返済を滞ってしまった場合、借入先(金融機関など)から差し押さえされてしまい、競売物件として売り出される可能性もあります。ローンの残債がある物件は売却代金が低くなる傾向にあるため、完済しておくことが大切です。
3-4 共有持分専門の仲介業者に依頼する
共有持分の専門会社に仲介を依頼することで、高く売却できる可能性も高まります。共有持分は法的にも複雑であり、トラブルにも発展しやすいことから、街中で見かける不動産会社では対応してもらえないケースも多いです。
さらに手間がかかるという理由から売却価格を低くし、早めに買主を見つける方向に進められる場合もあります。
しかし共有持分を専門としている不動産会社であれば、ノウハウも持ち合わせているため、高い金額で購入してくれる買主を見つけることができます。
■ まとめ
共有持分を他の共有者に売却する際は、市場価格に持分割合を掛けた金額となり、第三者に売却する場合はさらに3割〜6割ほどの価格となります。
とはいえ、売主と買主の合意する価格で取引されるため、本記事で紹介した売却価格の査定は目安として認識しておきましょう。
また共有持分の売却価格は一般的な不動産価格と比較して安くなります。
少しでも高く売りたい方は、共有持分専門の仲介業者へ相談するようにしましょう。
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