正しい共有持分の範囲と共有持分の決め方!
「知らないうちに共有者が持分を売却していた」
「売却された時のリスクは?」
「共有持分を売却されたときの対処方法は?」
共有名義の不動産の共有者が、知らないうちに持分を売却していたというケースも少なくありません。売却されてしまった場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。
この記事では共有持分の売却についてと、売却された場合のリスク、対処方法を紹介します。
■1. 共有持分は売却できる?
そもそも共有持分は売却することができるのでしょうか。ここでは持分売却と売却先について紹介します。
1-1 持分の売却は共有者の同意なしで可能
共有持分は他の共有者の同意なしで売却可能です。共有名義の不動産は、共有者全員の同意がなければ売却することはできないと民法251条で定めています。
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
引用:民法第251条 - Wikibooks
共有物の変更とは物理的な変更や売却が含まれますが、持分に関しては所有権という権利となり、共有物自体を変更するわけではないため、単独の意思で売却できます。
1-2 共有者が勝手に持分を売却しているケース
単独の意思で持分を売却することができるため、共有者が勝手に売っていたというケースも多く見受けられます。一般的には共有者が持分を売却する場合、他の共有者に買い取りを打診します。
しかし金銭的な合意ができなかったりする場合もあり、断る共有者も多いです。その結果、共有者がいつの間にか持分を第三者に売却してしまっているという事例も見受けられます。
1-3 共有持分の購入者は買取業者か投資家
共有持分の購入者は第三者である「買取業者」か「投資家」が多いです。買取業者は共有持分を買い取って他の購入者へ販売したり、他の共有者の持分も購入して単独名義の不動産として売却したり、賃貸物件として貸し出すことを目的としています。
一方、投資家は、長期的な収益を目的としているため、買取業者のように他の共有者の持分を買い取って完全所有権化し転売するのではなく、持分割合に応じた賃料収入を目的とするケースが多いです。
投資家への売却は、不動産仲介業者を経由するのが一般的です。
■2. 共有持分を売却された場合のリスク
共有者が持分を第三者に売却してしまった場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。ここでは4つのリスクを紹介します。
2-1 面識のない人と共有状態になる
共有持分が売却されてしまった場合、第三者が新たな共有者となります。見ず知らずの買取業者や投資家と共有状態になってしまうため、トラブルになるケースも多いです。購入者が、共有不動産の敷地内に無断で立ち入ってきたり、知らぬ間にさらに別の第三者に持分を転売していたりする可能性があります。
2-2 税金の負担を巡るトラブル
共有名義の不動産の固定資産税や都市計画税は、持分を所有している全員が納税しなければいけません。税金の納付書は、原則共有者のうち代表者一人に届くため、代表者が一旦立て替えて支払うことになります。
一般的には持分割合に応じた税額をそれぞれ負担することになりますが、場合によっては「第三者である共有者と連絡が取れない」「税金負担をしてくれない」などのトラブルにも発展しかねません。その場合は弁護士などに相談して対処する必要がありますが、当然ながら弁護士への相談費用や裁判費用もかかります。
2-3 持分の売却を迫られる
持分を購入した第三者から自身の持分の売却を迫られる可能性もあります。買取業者の場合、他の共有者の持分を強引に買い取ろうとする業者も存在します。買取業者とすれば、共有者全員の持分を買い取り、単独名義の不動産にした方が高く転売できると考えているためです。
さらに単独名義の不動産を賃貸物件として貸し出すこともできるため、キャピタルゲイン(売却利益)とインカムゲイン(家賃収入)の双方の収益を狙うことが可能となります。
もちろん持分の売却は所有者の意思で決めることができますが、強引な買取業者もいるため注意しなければいけません。
2-4 共有物分割請求される可能性がある
持分を購入した方から共有物分割請求をされる可能性があります。共有物分割請求とは、共有者同士で共有物分割の協議が進まなかった場合、裁判所に分割方法を請求することができる制度のことです。
共有物分割請求によって裁判所が判決を下した場合は、原則従わなければいけず、場合によって持分を失うことにもなりかねません。共有物分割請求は、共有物分割請求を禁止する「共有物分割禁止特約」を共有者全員で締結しない限り、共有者は請求することができます
■3. 他の共有者が持分を売却していた時の対処方法
では他の共有者が第三者に持分を売却していた場合、どのような対処を行えばよいのでしょうか。ここでは3つの対処方法を紹介します。
3-1 持分を買い戻す
売却された共有持分を第三者から買い戻してしまえば、第三者との関係を築いていく必要はありません。
ただし、購入した第三者が買取業者である場合、利益が乗せられるため法外な金額になる可能性があります。とはいえ自身が所有している不動産を手放すことがなくなるメリットが挙げられます。
3-2 自分の持分を売却する
自分の持分も売却してしまう方法です。勝手に売却された持分の購入者が買取業者であれば、自分の持分も同じ買取業者に買い取ってもらうのが良いでしょう。どこの買取業者か不明な場合は、登記情報から確認することができます。
もちろん、同じ買取業者以外の買い手を探す方法もあります。買取業者よりも仲介業者の方が、売買価格が高額になる傾向にあります。
買取業者も仲介業者も、査定は無料でしてくれるため、複数社に依頼し査定額を比較すると良いでしょう。
3-3 共有物分割請求で共有関係を解消する
共有物分割請求を申立て、共有関係を解消するのも一つの方法です。
もちろん裁判所に共有物分割請求訴訟を提起したからといって、100%持分を取得できるとは限りません。共有物分割請求は裁判所の訴訟申立てをする前に、共有者同士で協議しておく必要があります。
あくまで当事者同士での話し合いがなかなかまとまらない場合に訴訟申立てができ、法廷で分割方法に関する主張を行って裁判所が和解案・判決を下します。
そのため自分の意思とは異なる判決が下される可能性もある点は注意しなければいけません。
しかし共有者物分割請求訴訟は申立てれば、必ず共有関係を解消することが可能になります。
■ まとめ
他の共有者が第三者に持分を売却していた場合、第三者と共有名義の不動産を所有することになります。第三者は買取業者や投資家が多く、見ず知らずの方と共有名義になるため、トラブルなどに発展する可能性が伴います。
固定資産税の支払いリスクや持分の売却を迫られる可能性もあるため、第三者と共有状態になった場合は、購入者の持分を買い戻すか、自身の持分を売却してしまうのも一つの方法です。また共有物分割請求を提起することで、共有関係を解消することもできます。どの方法を選択するにせよ、共有持分を専門に扱う不動産会社へ一度相談してから検討しましょう。
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