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今回は、持分移転をする際の登記申請について、記入上の注意点などを詳しく解説します。
所有移転と持分移転
土地や建物の所有権は、売買、贈与、相続などによって移転します。たとえば、亡くなったお父さん(被相続人)が1人(単独)で所有していた土地を一人息子のAさんが相続した場合、所有権はお父さんから息子のAさんに移ることになります。Aさんは、その土地の所有権が移ったことを証明するために登記を行います。これを「所有移転登記」と言います。
では、Aさんのお父さんが所有していた土地が、実はお父さんが一人で所有していたものではない場合はどうでしょう。たとえば、お父さんの妹、Aさんにとっては叔母にあたる人と1/2ずつ共有しており、Aさんはお父さんの持分のみを相続するという場合です。
この場合も、持分が移転したことを証明するために登記を行います。これを「持分移転登記」と言います。
登記申請書の記入について(1.所有移転)
相続に際する登記申請書の記入について見てみましょう。相続における「所有移転登記」については次のようになります。Aさんのお父さんが単独で土地を所有していたケースです。
登記申請書には、最初に「目的」という項目があります。Aさんが、お父さん(被相続人)の単独所有の土地(物件)を相続する場合、この目的は「所有権移転」とします。
次に「原因」という項目があります。「日付」→「原因」の順で記入します。「日付」は相続が開始した日(戸籍に記載された被相続人の死亡した日)です。そして、「原因」は「相続」です。「平成○○年○月○日 相続」と記入します。
次に「相続人」という項目があります。まず、被相続人の氏名を記載します。「(被相続人 Aさんの父の氏名)」となります。そして、物件を相続する人、ここではAさんの住所・氏名を記載し、実印を押します。「Aさんの氏名 実印」という形です。また、法務局からの連絡を受けられやすい電話番号を記載します。
登記申請書には添付書類として、亡くなった人の戸籍謄本、相続する物件の登記簿謄本、相続人の住民票などを添付する必要があります。それらを添付したことを示すため、次の「添付書類」の項に「登記原因証明情報 住所証明情報」と記載します。
次に申請書では、登記申請日を記入するようになっています。法務局に書類を持参する日を記入します。たとえば「平成○年○月○日申請 東京法務局 品川出張所 御中」となります。
その後も「課税価格」、「登録免許税」、「不動産の表示」という項目がありますが、上にあげた「相続人」の項目について、持分移転のケースを見ておきましょう。
登記申請書の記入について(2.持分移転)
Aさんのお父さん(被相続人)が所有してた物件(ここでは土地)が、お父さんの単独所有ではないケースです。Aさんのお父さんとAさんの叔母さんの共有で、持分がそれぞれ1/2とします。
この場合、登記申請書の「目的」は「○○○○(お父さんの名前)持分全部移転」とします。
そして、登記申請書の「原因」は所有移転と同じく「相続」としますが、ただ、相続人であるAさんの氏名の前に「持分2分の1」と書き入れます。お父さんの持分1/2を全部相続するという意味です。「持分2分の1 Aさんの氏名 実印」という記載になります。
また、上と同じ状況で、相続人がAさんと弟のBさんの2人で、それぞれお父さんの持分を1/2ずつ相続する場合は、相続人として、Aさん、Bさんそれぞれの住所・氏名を記載します。そして、お父さんの持分1/2を半分ずつ相続するわけですから、申請書には「持分4分の1 Aさんの氏名 実印」、「持分4分の1 Bさんの氏名」と記載します。
さらに、同じ状況でAさんにもう一人、弟のCさんがいて、兄弟3人がお父さんが持っていた共有持分を1/3ずつを相続するとした場合、Aさんについては「持分6分の1 Aさんの氏名 実印」という記載になり、Bさん、Cさんの名前の前にも「持分6分の1」と記載します。
1/2の持分を3人が等分に相続するからです。
以上のように、所有権を移転する「所有移転」と共有持分を移転する「持分移転」では、登記申請書の記載方法が違ってきます。
申請書の記載を間違えたら法務局から補正の指示がある
ところで、万一、登記申請書の「目的」を書き間違えたりしたらどうなるでしょう?
その場合は、法務局から「補正して下さい」という連絡があります。連絡を受けたら、印鑑を持参して法務局に出向き、法務局の人の指示通り修正します。これは登記申請書の補正であり、遺産分割について修正するというものではありませんから、申請者一人だけの印で補正できます。間違った箇所に線を引き、「○○○○持分全部移転」と記入し、印を押します。
登記申請のミスで多いのは、書き間違い(住所など)や書き漏れ、押印を忘れる、添付書類の不足、また、登録免許税の計算間違いなどです。登記申請は個人でも行えますが、正確を期すためには、専門家のサポートを受けたほうが良いでしょう。
共有持分の登記方法については、下記記事でもわかりやすく解説しています。
共有持分を相続した場合の相続登記の申請方法~贈与や譲渡の場合はどうなる?~