2月1日(火)18:30~ 【英国マンチェスター大学現役大学生が語る留学の知恵袋】
今回、2017年頃より徐々に広まりつつあるグローバル併願(日本と海外の大学を併願)という選択肢についてご紹介したいと思います。
10年前は日本の大学を受験する学生は、日本の大学受験のみ行い、海外大学進学を目指す生徒は海外進学の準備をするといった、どちらかを選択肢して高校3年生の時期を過ごす学生が大半だったように思いますが、私自身このどちらかしか選べないという固定観念に疑問は持っていました。
そんな中、3年~5年前ごろから、日本の東京大学を受験して合格するような学生や有名私立大学に合格するような学生が合格を蹴って海外大学に進学したいという相談が増え始めました。
事例:
- 東京大学(日本)、マンチェスター大学(イギリス)、シェフィールド大学(イギリス)を併願
- 上智大学(日本)、マンチェスター大学(イギリス)、シェフィールド大学(イギリス)を併願
- 早稲田大学(日本)、ニューヨーク州立大学(アメリカ)、ロンドン大学(イギリス)を併願
これには大きく2つの理由が考えられると思います。
1つ目は2013年10月よりスタートしたトビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムの影響もあり、意識の高い高校生が海外に毎年多く飛び立ち、視野を広く進路を選択しはじめた事です。いくら英語力が高く、学力が高い学生でも将来の選択肢として意識できる範囲が広がらなければ、海外大学進学に関心を持つ事もなかったと思います。そういった意味でも、多くの高校生がトビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムを通じて、多感な高校生時代に海外留学にチャレンジしたとても良い機会になったと思います。
2つ目はVUCA時代と言われるグローバル社会で、求められる人材像に日本の大学教育が追いついているのか、感覚的に多くの学生が疑問を持ち始め、危機感を覚え始めた事だと思います。先進国の中でも経済成長が停滞し、グローバル社会での日本の企業の競争力の低下、グローバル企業と日本企業の新卒採用における待遇差など、学生にとっても身近な将来のキャリアを考えただけでも、このまま日本の大学に進学する事が良い選択肢なのだろうかと疑問を持った生徒も多かったのではないかと思います。そして、コロナ禍でその流れは益々強くなったと感じずにはいられません。事実、コロナ禍になったここ2年間で日本の大学を途中退学して、海外大学に進学した学生は増えました。
事例:
- 早稲田大学(日本)⇒ ロンドン大学(イギリス)へ進学
- 明治大学(日本)⇒ ボーンマス大学(イギリス)へ進学
- 神田外語大学(日本)⇒ カリフォルニア州立大学(アメリカ)へ進学
一方で悲しい現実としては、世界中の国々の物価と所得が高騰する中、日本は物価が安く所得が約30年以上変わらずにきた事もあり、アメリカ、イギリスなど欧米の大学は学費、生活費が非常に高く感じてしまう時代になってしまいました。そのため、海外大学にチャレンジしたいと思いつつも、経済的な理由で断念する学生も多くなっている事実はあります。
実際に経済成長が著しい中国、インドを中心にアメリカへの大学・大学院留学は増加しています。一方で、日本から大学・大学院進学する学生は約10年で半減しました。※2020年、2021年はコロナの影響がございましたので、2009年~2019年の推移を表では比較しております。
だからこそ、私はグローバル併願という選択肢を更に多くの学生に知ってもらいたいと思っています。世界には約2万校という大学があり、欧米の大学を中心に受験方法は書類審査が中心となります。※特定の試験の受験が必要な大学、面接、実技テストがある学部もあります。
高校3年生の1学期を終えた時点で出願が出来る大学は多数あります。
そのため、日本の大学に出願をする前には海外の大学から合格通知を受け取っている事が可能です。
出願の際に提出を求められる書類は多くの方がイメージされているよりも非常にシンプルです。
- 成績証明書(英文)※高校1年生~高校3年生の1学期までの成績
- 卒業見込み証明書(英文)※在学中に出願をするため、翌年の3月に卒業見込みである旨を証明する書類になります。
- パスポートコピー ※出願者の身分証明となります。
- 志望動機書
- 推薦状 ※必要のない大学から最大3通まで必要なケースがあります。
- 英語力の証明(IELTS, TOEFL iBTスコアなど)※出願時には必要が無い大学も多数あります。進学時までには正式なスコア提示が必要になります。
出願の段階で英語力の証明が必要と思われている学生も沢山いらっしゃるようですが、IELTSやTOEFLiBT等の正式スコアを持っていない状態でも、出願は可能です。考え方としては、海外大学において英語力も大切ではありますが、それ以上に高校生活をどの様に過ごしてきたか、充実した学びをしていたのか、将来の目標に向けた探求をしっかり学生時代に行ってきたかを見ています。そのため、日本の受験のように特別な対策をするというよりも、仕組みを理解して頂ければ大きな負担がなくグローバル併願が可能だという事が分かってもらえると思います。
「日本の大学と海外の大学を迷っている」という方、「海外の大学に興味があるのだけど、本当に合格するのか不安だ」という方なども、まずは併願し、合否結果後に最終大学を決定することができます。
例えば、イギリスの大学への出願は多くの大学で無料です。アメリカの大学の出願料も1校につき$50~$150と国内大学より安価です。そのため、日本の大学を多数併願するよりも、海外大学の併願はしやすいもの実はなっています。
そして、2019年度より独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)でも海外大学進学を目指す方を対象に給付型の奨学金支給制度もスタートしております。公益財団法人の柳井正財団や孫正義育英財団の奨学金など徐々に海外大学進学を目指す方への経済的な支援も増えてきてはいます。
日本学生支援機構(JASSO)海外留学支援制度
柳井正財団 海外奨学金プログラム
孫正義育英財団 海外奨学金
また、海外大学進学を考える方に是非チャレンジして頂きたいのが、海外大学が日本からの留学生向けに用意している奨学金制度を活用する事です。アメリカやイギリスの大学では返済不要の奨学金制度があり、学費一部免除されます。大学によって奨学金は異なりますが、アメリカ:$1500~$13500(約17万円~約155万円)、イギリス:£1500~£10000(約23万円~約160万円)の獲得チャンスがあり、思ったより学費が高くないということもあります。ドイツのように留学生も90%以上の公立大学で学費が無料というような国もありますので、視野を広く進路選択を考えてもらう事で、選択肢は確実に増えると思います。
日本の大学が良い、海外の大学が良いという話ではなく、多くの学生が頭の中で世界地図を広げて、自分が輝ける場所、躍動できる選択肢を進路として自由に選べる教育現場が増える事を願って、活動を続けて行きたいと思います。