歯科医院の倒産が20年で最多|矯正治療を始める前に知っておきたいリスク

「口が開けにくい」「顎がカクカク鳴る」「最近、噛み合わせがずれてきた気がする」。そのような症状で来院された方で、顎関節症と顎変形症を混同されているケースがよく見受けられます。
名前が似ていますし、どちらも顎にまつわる不調ですから、混同されるのは無理もないと思いますが、ただこの二つは病態そのものが違います。治療の進め方も違えば、受け入れている医療機関も違ってきます。
ここを整理しないまま医院探しを始めてしまうと、たどり着いた先で「うちでは扱っていません」と言われ、また別の医院を探すという遠回りが起きます。そのぶん時間も気持ちもすり減ってしまいますから、今日はまず、この二つの線引きからお話ししたいと思います。
目次
同じ「顎」でも、顎関節症と顎変形症は別の病気です
この二つは、そもそも症状の出どころが違います。
顎関節症とは、顎の関節そのものや顎を動かす筋肉に、痛み・音・動かしにくさといった症状があらわれる状態のことです。一方の顎変形症とは、上下の顎の骨の大きさや位置のずれが大きく、噛み合わせや顔の輪郭にまで影響が及んでいる状態を指します。
つまり片方は「動き」にまつわる問題が中心で、もう片方は「骨の形と位置」にまつわる問題が中心だということになります。出発点が違いますから、当然、そこからたどる道筋も変わってきます。
私が診療のなかで繰り返し感じているのは、顎変形症の患者さんのすべてが顎関節症を抱えているわけではなく、顎関節症の患者さんのすべてが顎変形症であるわけでもない、ということです。重なる方がいらっしゃるのは事実ですが、イコールではありません。
顎関節症の症状は、筋肉から関節へと段階的に進みます
多くの方が驚かれるのは、顎関節症が「ある日突然やってくる病気」ではなく、段階を追って進んでいくものだという点です。
初期に出るのは、筋肉の症状です。顎を動かす筋肉が疲れやすくなったり、こわばって硬くなったりします。この段階では、関節そのものはまだ大きく傷んでいません。
しかしそれが進むと、症状の場所が筋肉から関節の軟骨へと移っていきます。さらに進行して関節の変形にまで至ってしまうと、完全にもとどおりにするのは難しくなる、というのが私の実感です。
だからこそ私は、初期の筋症状の段階でお越しいただくことに大きな意味があると考えています。「これくらいで受診していいのかな」と迷う程度のときが、実はいちばん打つ手の多い時期なのです。
顎の不調は、我慢できてしまうところが厄介だと思っています。痛みが強くないぶん受診が後回しになり、気づいたときには段階が進んでいる。そういう経過をたどる方を、私は何度も見てきました。
顎変形症の治療は、入院を伴う外科矯正が主体になります
治療方法という点でも、二つははっきり分かれます。ここは、ご相談先を選ぶうえで重要になってくる部分です。
顎関節症は、保存的治療法が主体になります。保存的治療法とは、顎の骨を切るような外科手術を行わずに症状の改善をはかっていく方法のことです。
これに対して顎変形症は、入院を伴う外科的治療法が主体になります。骨格そのもののずれに向き合う以上、対応できる設備と体制のある医療機関が必要になるわけです。顎関節症と顎変形症とで受け入れる医療機関が異なるというのは、まさにこの違いから来ています。
私自身は、大学病院で過ごした10年間と、錦糸町で開業してからの21年間を通じて、外科的矯正治療を700症例以上担当してきました。日本顎変形症学会にも所属し、外科と矯正の橋渡しをする立場で関わり続けています。
その経験からお伝えしたいのは、外科的な治療が必要かどうかは、見た目の印象やご本人の思い込みではなく、検査にもとづいて判断すべきものだということです。逆にいえば、検査を受けないまま「自分は手術しかない」と決めてしまうのは、あまりに惜しいのです。
両方ある場合は、治療を進める順番が大切になります
顎関節症と顎変形症を併せ持っている方も、もちろんいらっしゃいます。その場合は、最初に顎関節症の治療をおこない、症状が落ち着いてから顎変形症の治療に進むというのが一般的な進め方です。私も基本的に、この順序で考えています。
順番の話は、地味に聞こえるかもしれませんが、ここが後々の納得感を大きく左右する部分だと私は思っています。同業の先生のなかには別の考え方をされる方もいらっしゃいますが、私は症状が落ち着いたことを確認できてから次の段階へ進む、という慎重さを大事にしています。
治療計画をご説明するときも、患者さんにとって都合のよいことだけを申し上げるつもりはありません。できることとできないことを正直にお伝えしたうえで、納得いくまで話し合う。歯列矯正は長いお付き合いになりますから、そこは省きたくないと思っています。
成長期の食事が、将来の顎関節症の予防につながります
これはお子さんをお持ちの方に、いちばんお伝えしたいことです。
小児期・成長期のうちに、硬く歯ごたえのある食べものを積極的に摂っていただくこと。私はこれが、将来的な顎関節症の予防につながると考えています。顎の筋肉も関節も、使われることで育っていくものだからです。
裏を返せば、食事の軟食化が進むほど、顎にとっての運動不足も進んでいくことになります。私は、この流れが続けば、日本の多くの方が何らかの顎関節の症状を抱えることになるだろうと見ています。あくまで日々の診療から受けている実感ですが、その手前で打てる手はあるはずです。
お子さんについては、乳歯と永久歯の生え変わりがスムーズに進むだけで歯がきれいに並び、矯正の必要がなくなるケースも出てきます。乳歯が抜けそうになったら、一度見せていただきたいと思っています。矯正のご相談は無料です。
同じような観点で書いた症例のお話は、これまでのコラムにもまとめています(https://mbp-japan.com/tokyo/6777/column/)。ご自身の状況に近いものがあれば、受診の前に目を通しておいていただくと話が早く進みます。
顎関節症と顎変形症は、名前が似ているだけの、全く別の病気です。だからこそ、ご自分が今どちらの入口に立っているのかを知ることが、遠回りをしないための第一歩になります。
まとめ
顎関節症と顎変形症は、混同されたままでは正しい入口にたどり着けません。名前の似た二つを切り分けるところから、治療は動き出すものと私は考えています。
・顎の痛みや音があり、顎関節症なのか顎変形症なのか判断がつかない方
・噛み合わせのずれを指摘され、外科的な治療が必要か知りたい方
・顎関節症と顎変形症の両方を指摘され、どちらから進めるべきか迷っている方
・お子さんの顎の成長や生え変わりが気になっている方
顎関節症と顎変形症、どちらの問題なのか判断がつかないという段階でかまいません。まずはお気軽にご相談ください(https://www.6777.jp/)。


