遺言がある相続における遺留分の取り扱い
自分の配偶者や子が相続でもめることはない。ほとんどのシニア層は幾分の願望も込めてこう思っているに違いない。だが、遺産分割をめぐる紛争は増加傾向にある。しかも遺産額があまり多くないほどもめやすいのが現実だ。「自分の家族は例外」と考えずに対策を考えておく必要がある。そこで注目されるのが「どの財産を、誰に、どれくらい分けるか」を被相続人が書き残す遺言だ。
遺言がない場合。財産分けは相続人の遺産分割協議にゆだねられる。ただ協議がこじれて紛争になることが多い。遺言があれば相続人全員が反対しない限り遺言が優先される。はずである。このような説明のもと3年前に作成された、まだまだ作成時の記憶が真新しい遺言の執行が必要になったが、この相続人全員の反対を受け執行を断念することになった。
遺言者はまさかこんなことが起こるなんて、いまだ天国でも信じられないのではないだろうか。もしくは我々を信じたのに今更何をいうのと怒っているのかもしれない。ほんと故人に顔向けできない状況だ。遺言内容は自身でも税務面も配慮し、銀行を通して検証のうえ文案を作成していた。相続人全員には知らせていなかったが、キーマンと思われた配偶者にも同席願い作成したもの。まさかの全員の反対であった。発端は税理士事務員の軽率な一言(配偶者控除)であったが、相続人全員で反旗を翻されては取り付く島もない。
こんなことが予想されるなら、しっかりと付言事項を作りこむのだが後の祭り。
付言とは遺言作成の想いなどを遺族に向け遺す文章である。この文言自体には法的拘束力はないが、故人の遺贈への最後のメッセージになる。今回は、まったく付言を入れていなかった。みんな遺言に従うものだと思い込んでいた。「お父さんの遺志は尊重したうえで、遺産分割させていただきます。」とのこと。付言の大切さが身に染みてわかる事案でありました。