賢い相続のポイント③【遺留分減殺・旧法】
遺贈とは
遺贈とは、被相続人が遺言書によって無償あるいは、条件や負担を付して遺言で自己の財産の全部又は一部を相続人や相続人以外の者に与える処分行為のことをいいます。
遺贈の当事者
遺贈をした被相続人を遺贈者といいます。遺贈に伴う手続きを実行すべき義務を負う者を遺贈義務者といいます。特定遺贈がされた場合、第一義的には相続人が遺贈義務者となりますが、遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができるとされています。遺贈によって財産を受ける者を受遺者といいます。相続と異なり、受遺者は自然人に限らず法人でもなることができます。もし、受遺者が遺言の効力発生前に死亡したときは、遺贈は無効となります。
遺贈の種類
特定遺贈
遺言者の財産のうち特定の財産を具体的に示して無償で遺贈することを特定遺贈といいます。特定遺贈は権利のみが与えられ、当該財産は遺産分割の対象から除かれます。
たとえば、「甲の土地をAにあげる」、「乙株式会社の株式をBにあげる」というようなことです。財産が特定されているため、遺言の執行がすすめやすく、包括遺贈と異なり、受遺者が借金など消極財産を引き継ぐこともありません。不動産の特定遺贈は、農地法の許可を要し、相続人への遺贈を除き不動産取得税も原則として課税されます。
包括遺贈
遺言者が財産の全部若しくはその一定の割合を示して遺贈することを包括遺贈といいます。
全部包括遺贈の場合、被相続人の積極・消極を包括して取得し、権利義務ともすべて受遺者に引き継がれることになります。割合的包括遺贈にあっては、例えば、すべての遺産の5分の4をAに、5分の1をBにする旨の割合として引き継がれます。
包括受遺者は相続人としての地位の主要部分を取得することから、相続人と同様に遺贈の放棄、単純承認、限定承認ができ、いずれも相続の放棄・承認に関する規律によって処理されます。しかし包括受遺者に代襲制度はありませんし遺留分もありません。
また不動産の包括遺贈は、登記なくして対抗できないとされ、その登記については、共同申請によるべきとされています。農地法の許可については不要とされ、不動産取得税も課税されせん。
特定遺贈と包括遺贈の併存型
包括遺贈は本来、遺言者が包括して、その財産の全部又は一部を処分することをいい、包括受遺者は、指定された相続分に応じて、全部又は割合的一部の範囲で、積極財産(財産)のみならず消極財産(負債)も包括して取得し引き継がれることを求められます。
ところが、東京地判平成10年6月26日判決に基づき、判例時報では「特定財産を除く相続財産(全部)という形で範囲を示された財産の遺贈であっても、それが積極,消極財産を包括して承継させる趣旨のものであるときは、相続分に対応すべき割合が明示されていないとしても、包括遺贈に該当するものと解するのが相当である」と解説しています。従って、包括遺贈は、全財産(積極・消極財産)を包括して遺贈する全部包括遺贈か、全財産(積極・消極財産)の割合的な一部を包括して遺贈する「割合的包括遺贈」のほかに、特定財産を除いた財産につき積極財産・消極財産を包括して遺贈するという「特定遺贈と包括遺贈の併存型」があることを判示しています。
(問題)
Q 「不動産全部はAに遺贈し、預貯金全部はBに遺贈する」との遺言は特定遺贈か?包括遺贈か?
A 包括遺贈は、遺産の全部若しくはその一定の割合を示して遺贈することをいうため「特定遺贈」となります。
Q 被相続人Aが遺言執行者を指定して自己の甲土地をDに遺贈するとの公正証書遺言を残して死亡した。ところが相続人Bが、甲土地を善意の第三者Cに売却し、A→B→Cへの所有権移転登記を経由した。受遺者Dは遺贈による物権変動の事実を、登記なくしてCに対抗することができるか?
A 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。この規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。(改正民法1013条1項、2項)よって受遺者Dは、遺贈による物権変動の事実を善意の第三者Cに対抗することはできません。
ぜひ当事務所ホームページも、ご覧ください。
石原法務司法書士事務所
http://ishihara-souzoku.com/