仏像のあるくらし 十一面観音
日と月の光に包まれて ― 日光菩薩・月光菩薩
朝、東の空から昇り、すべてを明るく照らす太陽。
夜、静かな光で暗闇をやさしく包む月。
日光菩薩(にっこうぼさつ)と月光菩薩(がっこうぼさつ)は、そんな太陽と月の光を象徴する菩薩です。
一般には、病や苦しみを癒やす仏様である薬師如来の両脇に立ち、「薬師三尊」としてお祀りされます。日光菩薩は太陽のような力強い光を、月光菩薩は月のような穏やかな光を表し、薬師如来の慈悲と救いを支えています。
仏像によっては、日光菩薩が太陽を表す「日輪」を、月光菩薩が月を表す「月輪」を持つ姿で表されます。二尊が寄り添う姿には、昼も夜も絶えることなく、人々を見守り続けるという願いが込められているのでしょう。
分け隔てなく照らす、二つの光
太陽の光は、草木を育て、私たちに前へ進む力を与えてくれます。
一方、月の光は、疲れた心を鎮め、静かに自分を見つめる時間をもたらしてくれます。
力強さとやさしさ。
活動と休息。
明るさと静けさ。
異なる性質を持ちながらも、どちらも私たちの暮らしには欠かすことができません。奈良・薬師寺では、太陽や月の光がすべてを分け隔てなく照らすように、日光・月光菩薩は人々を見守る仏様と説明されています。
日光菩薩と月光菩薩のお姿は、相反するものを退けるのではなく、互いに支え合うことで生まれる「調和」の大切さを教えてくださいます。
暮らしの中に、光を見つける
私たちの毎日にも、明るく晴れやかな日があれば、心が沈み、先の見えない夜のように感じる日もあります。
けれど、夜が永遠に続くことはありません。
月の光に見守られながら静かに心を休めれば、やがて新しい朝が訪れます。
日光菩薩と月光菩薩に手を合わせる時間は、自分の中にある力強さとやさしさ、その両方に気づく時間でもあります。
朝には、今日一日を健やかに過ごせるように。
夜には、無事に一日を終えられたことへの感謝を。
仏像のある暮らしの中で、日と月のように変わることなく注がれる慈悲の光を感じてみてはいかがでしょうか。
今日も、明日も。
私たちは二つのやさしい光に包まれています。


