検査では見えない認知特性

安藤和行

安藤和行

テーマ:発達障害 認知特性

アセスメントをとる際、子供の検査結果、普段の様子、得意・不得意等を聞くのですが、いざレッスンを始めると聞いた通りのこともあれば、そうでないことがあります。
特に外で活動をしていると、「あれ?」っと思うことが度々あります。今回はそんな話をしたいと思います。

認知特性とは

認知特性を大ざっぱに言うと、外からの情報を理解や記憶、整理や表出したりする能力のことを指します。
特別支援教育の仕事に携わっていると、ASD(自閉症スペクトラム障害)の人は視覚優位が多いとよく聞きます。確かに多いとは感じますが、聴覚優位のASDのある子供を何人も見てきたので、ASDだから視覚優位であると短絡的に思わないよう心がけています。
また、視覚優位の子供でも一律化は難しく、文字やマークといった抽象的な物に反応しやすい(理解しやすい)のか、動物といった具体物に反応しやすい(理解しやすい)のか等、さらに細分化できるので注意が必要です。

子供の認知特性を考えるにあたり、WISCなどの検査結果も大切ですが、子供の勉強方法、日常生活での行動や物の見方といった部分も加味して、総合的に分析することが賢明です。
分析していると、検査の数値と矛盾することもよくあります。何故なら、おかれている環境や心理状況によって能力の発揮が左右されることがあるからです。
数値上では苦手な学び方なはずなのに理解できるケース。反対に、これまで通用していた得意な方法で学んでいるはずなのに理解がしにくくなるというケースもありました。
「この人の認知特性は昔からこうです!」と決めつけるのではなく、「現在の認知特性はこうです!」といった柔軟な対応が保護者、教育者、支援者には必要だと思います。

視覚優位だが上手く活かされていないケース

ある生徒のレッスン内でのお話です。
生徒が凧あげをしたい(未経験)と言うので、ドン・キホーテに買い物に行くことに。生徒自身は凧を買うだけと思っていますが、私はソーシャルスキルトレーニングも兼ねてと考えていました。
予想では社会性の低さから店員に尋ねるという部分で困難さが出てくるかと思っていたのですが、実際は違いました。尋ねる以前に、店員の見分けがつかなかったのです。

ドン・キホーテはゴチャゴチャしているので、なかなか凧が見つからず。そこで「店員に訊いたら?」と言うと、生徒は店員を探しだしました。実は生徒のすぐ目の前に店員がいたのですが、目の前を素通りして、一目散にレジの所へ向かいました。
レジを打っている店員は他のお客さんの対応で忙しかったので、私は「他の店員を探そう」と提案しました。すると「どれが店員なのか分からない」と言ってきました。
つまり、すぐ側にいた店員に気が付かなかったのではなく、そもそも店員という認識ではなかった。レジを打っている人だけが店員という認識だったのです。
私「レジの店員が着てる服にはどういう特徴がある?」
生徒「マークがついている」
私「他には?」
生徒「・・・・?」
ドンキの制服は黄色と黒色という分かりやすい特徴があるのですが、そこには意識がいっておらず、情報として持ち合わせていなかった。
これは視覚優位型の落とし穴と呼べるものかもしれません。情報を収集する力が弱く、ピンポイントで物事を見てしまうタイプの中には、視覚優位という利点を上手く活かせないことがある。検査では見えてこない部分で困難さが表れた事例と言えます。

認知特性が上手く発揮されないからといって嘆く必要はありません。物の見方やどこを意識すれば良いのかというのを教え、外で経験(成功体験)を積むことで、認知特性が上手く発揮されるようになります。
特にカギとなるのは外での経験(成功体験)を積むことにあるので、机上での勉強ばかりではなく、外での体験活動もバランス良く取り入れたいですね。

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安藤和行
専門家

安藤和行(ひだち教室長)

子育て・自立サポート ひだち教室

一歩踏み込んだサポートと勇気づけを得意とする。一人一人の特性に合わせた具体的な解決策を打ち出し、提案・実践する。社会・野外体験活動や、独自の技術を持つ人達との出会いを通じて生きる力を育む。

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