定年後に飲食店を開業するために知っておくべきこと
定年後に起業するためには、現役時代から十分な準備をしておきましょう。まず必要なのは、老後生活費を把握することです。
老後生活費は基本的に「公的年金」「退職金」のほか、「貯金」から捻出しますが、どの程度の金額が入ってくるのか、わからない人も多いでしょう。起業の不安を一掃するためにもしっかりと確認しておくようにしましょう。
また、起業をスムーズに行うためには、これまでの現役時代で培ったスキルとは別のスキルを身に付けておくとよいでしょう。この記事では、その理由についても解説します。
定年後、ゆとりある老後生活を送るためにはいくら必要か
定年後に安心して起業するためには、老後に必要なお金について把握しておくべきです。おさらいになりますが、まずは老後の生活資金がどれくらい必要なのか確認しておきましょう。
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」によると、夫婦2人の場合、最低日常生活費の平均額は月額22.0万円です。しかしながら、ゆとりある老後生活を送るための平均額は月額34.9万円となっており、ここにはギャップがあります。
可能ならばゆとりある老後生活を送りたいのが人情でしょう。ゆとりある老後生活費から、最低日常生活費の差額である12.9万円をどのように捻出するのか考える必要があります。もし用意できない場合は、生活スタイルの改善も視野に入れることが重要です。
ゆとりある老後生活費の平均額である月額34.9万円で、定年退職後60歳から平均寿命である80歳まで20年間暮らした場合、いくらかかるでしょうか。年間で約420万円かかりますから、20年では8400万円です。
この金額を見せられると、「無理だ」と思うかもしれませんが、もちろんすべてのお金を自分で用意する必要はありません。
スムーズな起業には老後生活費の把握が欠かせない
老後生活費は「公的年金」「退職金」「貯金」から捻出するのが一般的です。まずは「公的年金」について見ていきましょう。
厚生労働省によると、厚生年金の標準支給額(夫婦2人の場合)は22.1万円。ゆとりある老後生活費の平均額である月額34.9万円には足りませんが、ある程度の生活は維持できる金額ではないでしょうか。
公的年金の支給見込額は、年金事務所だけでなく、インターネットでも手軽に確認することができますので、利用するとよいでしょう。支給される年金額を把握することで、今後の生活の見込みが立つはずです。
次に「退職金」です。「退職金」は正直なところ、勤務先によって異なるのが実情です。厚生労働省の「就労条件総合調査結果の概要」によると、「退職金」を設けているのは、従業員1,000人以上の企業では93.6%である一方で、30人から99人の企業では72.0%となっており、大企業と中小企業では大きな差があるとこがわかります。
日本の場合、大半の企業が中小企業ですから、あなたの勤務先の企業において「退職金」がない恐れがあります。「退職金」の有無は就業規則で確認することができます。勤続年数や役職によって、支給額が大きく変わってきますので、内容と金額を確認しておくとよいでしょう。
最後に「貯金」です。「貯金」は日常的に行っていかないと、ある程度まとまった金額を用意することはできません。近年は、積立貯金などの便利な制度もありますので、利用を検討するのもよいでしょう。税優遇制度のある確定拠出年金などを活用して、自分で運用してお金を増やすことも場合によっては必要かもしれません。
現役時代に働きながら新しいスキルを身に付ける
さて、老後生活費について先に把握しておくことも重要ですが、起業を成功させるためには相応のスキルを身に付けておく必要があります。可能であれば、働きながら今とは違うスキルを身に付けておくとよいでしょう。そうすることで、仕事の領域が広がるため、比較的受注を得やすくなるからです。
例えば、経理や財務の経験を活かして、税務顧問を行う場合を考えてみましょう。このケースでは、経理や財務の実務経験のほか、経営戦略に関する知識なども求められます。
近年、経理実務も高度化しており、経営までを見通した処理が必要になってきました。つまり、単に「経理ができる」では、起業者として生き残っていくことが難しい時代になってきているのです。
現役時代に新しいスキルを身に付けるための時間を作り、勉強を続けていくことはとても大変ですが、定年後の仕事の領域を広げ、起業をスムーズなものにするでしょう。
とはいえ、今まで経験した仕事とまったく別領域のスキルは考えものです。営業をやっていた方が、唐突に「フラワーコーディネーターの資格を取りたい」ということもありますが、あまりおすすめできません。というのも、効率が悪いからです。「経理と経営」「マーケティングと営業」といったように、相乗効果が期待できるスキルを中心に身に付けるとよいでしょう。