早期退職制度を利用して50代で起業するメリット
開業するためには、名刺やパンフレットを作成するなど、さまざまな準備が必要です。これらの開業するための費用は「開業費」として計上されますが、すべてのものが「開業費」にあたるわけではありません。
この記事では、「開業費」であるものとそうでないものの詳細のほか、シニア起業家を悩ませる固定資産の会計処理についても解説します。
定年後、開業に要した費用は「開業費」として計上する
開業前にかかった費用は、原則として「開業費」という名称で、会計上「繰延資産」として計上します。
「繰延資産」とは、「支出効果が1年以上に渡って持続するもの」のことです。
開業前に支出した費用、例えば開業前に購入したボールペンを開業後も使い続ける場合であっても、その効果が続くため、このような処理が必要なのです。
このとき、「開業前の費用はすべて開業費に該当するの?」と疑問を持つ人もいるでしょう。実は、開業費にあたるものとそうでないものがあるので、計上する際は十分に注意が必要です。
例えば、名刺や会社案内、パンフレットなどを作成するために要した費用のほか、通信費や交通費、書籍代、オフィス契約に伴う諸費用などが、開業の際にかかる費用と思われますが、これらはすべて開業費としてカウント可能です。一方で、固定資産や敷金などは開業費になりません。
起業に伴い購入したパソコンや車両は固定資産として計上
固定資産とは「10万円以上のもの」を指します。例えば、パソコンや車両、機械、什器、机、椅子などが該当します。固定資産は減価償却によって、費用を計上します。その方法は「定額法」と「定率法」の2種類です。
「定額法」とは文字通り、毎年、定額を費用として計上する会計処理で、計算式は「取得価額×償却率=減価償却費」となっています。取得価額100万円(車両。耐用年数10年)で償却率0.1とすれば、減価償却費は10万円と計算できます。
ここで割り出された10万円という減価償却費を毎月(10万円÷12か月=約8000円)かかる費用として計上します。
次に「定率法」です。「定率法」とは、毎年、一定割合で費用計上する方法です。償却率は、はじめの年ほど多く、年数が経過するほど少なくなっていきます。そのため、起業初年度から3年度くらいまでに、なるべく多くの費用を計上したい場合に「定率法」が採用されるケースが目立ちます。
償却率は対象となる固定資産の耐用年数によって変わるため、注意が必要です。減価償却費は、会計処理のなかでもとても複雑とされます。困ったときは会計のプロフェッショナルである税理士に相談するとよいでしょう。
なお、上述した敷金は、そもそも費用になりません。というのも、将来的に返却が予定されているからです。保証金なども敷金と同じ性質のお金として見なされます。うっかりしていると費用として計上しがちなので、しっかりと覚えておきましょう。
開業費は「均等償却」または「任意償却」、いずれかの方法で経費計上する
上記では開業費にあたるものとそうでないものを取り上げ、そうでないもの(固定資産)の会計処理について解説しました。
さて、ここからは開業費を経費にするための計算方法(「均等償却」と「任意償却」)について説明します。
具体的な数字を挙げると分かりやすいので、ここでは開業費を120万円とします。
「均等償却」とは、毎月、均等に開業費を計上していく方法です。このとき、開業費は会計処理上、60か月で計上するのが原則で、1か月あたり2万円となります。1年間では24万円となります。
「任意償却」の場合、開業費を任意のタイミングで一括計上することができます。
例えば起業して1年間事業を行い、120万円の利益が出たとします。このとき、「均等償却」にするか、「任意償却」にするかで利益の額が大きく変わってきます。
「均等償却」だと「120万円(利益)-24万円=96万円」となる一方で、「任意償却」は「120万円(利益)-120万円=0円」となるからです。
前者では税金を支払う必要がありますが、後者では利益が「0円」となるため、税金はかかりません。一定額を支出して長期的に節税メリットを得るのか、それとも短期的に得することを選択するのか、それは考え方次第です。どちらの会計処理を選択したほうがよいのか、しっかりと考えておきましょう。
ところで、開業のための準備期間はどれくらいかかるでしょうか。3か月という人がいる一方で、1年、5年という人もいます。ここで、果たして5年前の支出が開業費として認められるかという問題が出てきます。
答えは「No(ノー)」です。一般的に、5年前の支出は開業費にはならないので、注意しましょう。
開業費としてカウントできる支出は約1年間とされています。開業に要したからといって、あれもこれもと数年前の支出を費用計上すると、税務調査の際に指摘され、困るケースもあります。
開業費は、事業が安定しにくい1~3年度において節税に活用できる経費です。その特徴を踏まえ、効果的に利用したいものです。