定年後に社会保険労務士として開業するときのポイント
近年、シニア起業家をサポートする融資制度が目立っています。公的金融機関である日本政策金融公庫や、中小機構を中心にシニア起業家に有利な制度が見られるようになってきました。この記事では、シニア起業家を応援する融資制度の詳細を中心に、融資を受けるために重要な4つのポイントについて解説します。
定年後に起業して活用したいのは「女性、若者/シニア起業家支援
定年後に創業する際、十分な資金を用意することが重要です。資金はこれまの貯金でカバーするのが理想ですが、そううまくいかないケースもあるでしょう。そんなときは、融資を受けることも一案です。
近年、定年退職したシニアによる起業が増えています。それに伴い、起業を支援するさまざまな融資制度が設けられ、多くのシニア起業家が利用するようになっています。
融資制度のなかには、シニア起業家に絞ったものもありますから、ぜひ活用を検討したいものです。
まずおすすめしたいのは、株式会社日本政策金融公庫が提供している「女性、若者/シニア起業家支援資金」。
日本政策金融公庫は財務省所管の公的金融機関で、資金面を中心に起業家を幅広くサポートしています。その名前の通り、これは女性や若者、シニア起業家に対して融資する制度です。
この制度におけるシニア起業家とは「55歳以上であって、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」。
事業をすでに開始しているシニア起業家でも活用できることが大きな特徴のひとつです。融資の限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)となっているため、ある程度資金が必要なビジネスで役立つ制度と言えるでしょう。
シニア起業家を応援する助成金もある
「女性、若者/シニア起業家支援資金」のほかにも活用したい融資制度があります。
それが、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構と表記)が提供している助成金「地域中小起業応援ファンド」です。
申請には一定の手間はかかるものの、助成金は基本的に返済不要の資金なので、受け取ることができれば資金繰りは安定するでしょう。
「地域中小起業応援ファンド」は、中小機構と都道府県などが組成したファンドの運用益を原資とした助成金です。
地域への貢献度が高い新事業への取り組みのほか、地域の工芸や特産品、観光資源を活用した新事業開発などに幅広く活用できます。
融資限度額などは各都道府県によって異なるので、お住まいの都道府県の窓口に問い合わせて確認してみましょう。
以前の記事でも触れましたが、シニア起業家が低リスクで資金を調達できる方法のひとつに「クラウドファンディング」もあります。「ITに詳しくないので利用するのは難しい」と考えているシニアもいますが、決してそんなことはありません。実際、80代のシニア起業家が利用した例も出ています。
銀行融資をスムーズに受けるためのポイント
さて、日本政策金融公庫や中小機構などから金銭的な支援を受けるためには、各機関が行う審査を通過する必要があります。果たして各機関は、どのような点を重視して審査しているのでしょうか。
審査基準として重要なのは4点です。一つ目は「自己資金」で、これが最も重要です。スムーズに融資を受けるためには、一般的に創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要とされています。
近年、銀行は積極的に融資する姿勢となっているため、自己資金要件は緩和されてきています。しかし、「自己資金」は創業資金総額の3分の1以上あると安心でしょう。融資を受けたいと考えるなら、定年を迎える前から貯蓄に励み、手元に資金を十分に用意しておくことが重要です。
次に「経験」です。つまり、これまでの経験が問われるということです。会社員の経験をもとにした事業を行う場合、融資を受けやすくなります。飲食業の経験がない人が飲食店を開こうとしても融資を受けにくいのが実情です。
続いて「信用能力」です。金融機関はシニア起業家の信用能力を厳しく審査します。一般的にブラックリストに載っているようであれば一発アウト。税金の滞納なども調査されます。少なくとも融資を受ける前は、身ぎれいにしておく必要があります。
最後に「ビジネスの可能性の有無」です。金融機関としては結局のところ、滞りなく返済さえしてくれればいいわけです。むしろ、利益を出せそうなビジネスであれば、金融機関としては積極的に融資したいと考えるでしょう。
融資を受けたいなら、自身のビジネスの魅力を理解してもらわなければなりません。ここで重要となるのが、ビジネスの可能性をアピールする資料「事業計画書」です。事業計画書にはビジネスの詳細や売り上げの見込みなどを記入する必要があります。融資担当者がしっかりと見る資料なので、時間をかけて詳細に作り込みましょう。
ここまで読んできたシニア起業家の中には、「自分でやるのは難しいかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。その場合は、商工会議所や自治体のほか、融資制度に強い税理士などに相談することをおすすめします。一人で考え込まず、専門家を頼りながら、道を切り開きましょう。