シニアの起業を全面的にサポートする融資制度とは
「人生100年時代」と言われつつある昨今、生涯現役で働き続けることが当然となってきました。こうしたなか、定年後に起業するシニアは増加傾向にあります。
こうした流れを受けて、国や都道府県、市町村は独自制度を設けてシニア起業家を支援しています。この記事では、厚生労働省による「生涯現役起業支援助成金」を中心に自治体による起業支援の内容についても解説します。
定年後に起業するシニアを応援する助成金や補助金がある
「シニア世代が起業後に資金に困らないための資金調達方法」の記事で、シニア起業家のための資金調達の方法について解説しました。ひとくちに資金調達といっても様々な方法があることがお分りいただけたと思います。起業家が継続して事業を行うためには資金調達に関する知識が必要不可欠です。
近年、人手不足が顕著となり、生涯現役が当たり前になりつつあります。
こうしたなか、国も生涯現役で活躍するシニアを応援するための制度を新設するようになりました。その一例が厚生労働省による「生涯現役起業支援助成金」です。この助成金は、生涯現役として働き続けられる社会の実現を目指し、40歳以上の人の起業を支援するものです。
なお、一応おさらいとして「助成金とは何か」を今一度解説しておきます。「助成金」とは、一定の条件を満たせば原則誰でも申請できて受け取ることができる資金のことです。「助成金」と似た言葉に「補助金」がありますが、意味は違うので注意が必要です。
「補助金」とは一定の条件を満たすことは同じですが、申請しても受け取れない可能性がある資金のことです。しっかりとそれぞれの言葉の意味を捉えて活用してください。
労働者を雇い入れる際に活用したい「生涯現役起業支援助成金」
それでは内容を見ていきましょう。
「生涯現役起業支援助成金」は「1.雇用創出措置助成分」と「2.生産性向上助成分」で構成されます。
「1.雇用創出措置助成分」とは、起業日の年齢が40歳以上の方が、「雇用創出措置に係る計画書」を提出し、事業運営のための労働者を新たに雇い入れた場合、その募集や採用、教育訓練の実施に要した費用の一部を助成するものです。
例えば、民間有料職業紹介事業の利用料や求人情報掲載費用、従業員の資格取得や講習に関する費用などが助成の対象となります。助成額は最大200万円。起業時の年齢が60歳以上の場合、助成率が3分の2となるなど、シニア起業家を優遇した制度となっています。
主な要件は「計画期間内(12か月以内)に、対象労働者を一定人数以上雇い入れること」や「支給申請書提出日において、計画期間内に雇い入れた対象労働者の過半数が離職していないこと」などです。要件は複雑なので、専門家に相談しながら利用したほうがよいでしょう。
次に「2.生産性向上助成分」についてです。これは「雇用創出措置に係る計画書」を提出した日の属する会計年度と、その3年度経過後の会計年度の生産性を比較して、その伸び率が6%以上である場合に、助成額の4分の1を別途支給するものです。
例えば、「1.雇用創出措置助成分」の支給額が100万円であった場合、その4分の1にあたる25万円が別途支給されることになるわけです。主な要件は「雇用創出措置に係る助成金を受給していること」などです。
なお、「雇用創出措置に係る計画書」の提出先は都道府県労働局およびハローワークです。間違えないように注意しましょう。
都道府県や市町村による助成金もある
国だけでなく都道府県、政令指定都市レベルで用意されている「助成金」「補助金」もあるので紹介します(詳細は各自治体のホームページで確認してください)。
秋田県には「企業支援事業費補助金」、千葉県には「ちば創業応援助成金」、川崎市には「女性・若者・シニア起業家支援資金」、栃木県には「創業支援資金(女性・若者・シニア支援枠)」、富山県には「創業・ベンチャー挑戦応援事業」、大阪府には「大阪起業家スタートアップ補助金」があります。これらの自治体に住んでいる方は活用を検討するとよいでしょう。
近年は起業支援を行っている市町村も散見されます。
広島県三次市には「三次市女性・若者・シニア起業支援事業補助金」があります。補助対象要件は「市内に在住していること」や「市税を完納していること」「大企業の出資率が2分の1未満であること」などとなっています。
補助金の上限金額は150万円で補助率は2分の1。補助対象となるのは起業のために行う事務所の新築または増改築などの施設整備となっています。
「助成金」や「補助金」は利用価値の高いものですが、適切に活用しないと痛い目に遭うことがあります。最悪の場合、返還命令が下される恐れがあるため、注意が必要です。
利用する際、申請書や計画書の提出を求められますが、ノウハウがなければ対応することは難しいでしょう。迷った場合は、企業支援に長けた税理士などの専門家にアドバイスを求めることをおすすめします。