PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

中小企業の事業再生を支援するプロジェクトチームを設立

事業再生・事業承継に取り組む弁護士

東野修次

東野修次 とうのしゅうじ
東野修次 とうのしゅうじ

#chapter1

経営者に代わって銀行との交渉役を担う、新しい法的サービスを提供

 関西を中心に10年以上、弁護士活動を行ってきた東野修次(とうの しゅうじ)さんは、公認会計士と一緒になって、関西の中小企業の「事業再生」・「事業承継」を支援するプロジェクトチームを立ち上げました。民事再生や会社更生といった法的な枠組みだけではなく、中小企業再生支援協議会方式や私的整理など、あらゆる方法を使って中小企業のための活動をしています。

 そのほかに、チームが力を入れている仕事は、中小企業の平常時の経営において、経営者が自社の財務状況をしっかりつかみ、将来の資金繰りも頭に入れて経営できるよう支援することです。経営計画を立て、銀行や他の金融機関と決算書やキャッシュフローに裏付けられた数値をもとに経営計画に基づいた話をし、融資を受けたり、弁済の繰り延べを受けたりできるような力をつけてもらうことが重要と考えています。

 「“芳(かんば)しくない財務状況をありのままに開示すると、銀行からの融資を止められてしまう”といった誤解を多くの中小企業の経営者の方がお持ちです。この誤解が“銀行からの信用を失わせ、新たな融資の可能性を閉ざしてしまう”という悪循環を生んでいますが、実際はそうではありません。事業を展開していくと、良い時期もあれば悪い時期もあります。平常時からリスクマネージメントを行えるかどうかが企業の命運を握っているのです。しっかりとした事業計画書を提出し、資金不足の原因を説明することができれば、銀行は企業の将来性を見込んで融資額の増額や弁済の繰り延べを決断することも大いにありえます」。

#chapter2

中小企業の経済的・社会的評価の向上を実現する法的サービスの提供へ

しかし、銀行を説得できるような事業計画書を書くノウハウを持っていない経営者が多いそうです。「現実的にほとんどの中小企業はプロフェッショナルな財務担当者を持つことが難しい現状にあります。財務や資金面を相談できる存在として、客観的な視点を持って銀行との交渉役を担っていきたいと考えています。事業に明るい兆しが見えてきたのにもかかわらず、“さらに、あと少し資金を借りることができれば”といった願いもかなわずに倒産に追い込まれる中小企業をたくさん見てきました。これまで私たち弁護士は、経営が苦しくなった中小企業に対して破産手続きや民事再生を提案することで、救済されるはずの企業の選択肢を少なくしてきたように感じています。私は新しい仕組みを社会に作りたいと考え、その結果として行き着いたところが事業再生でした。事業再生の方向性に共感を持っていただいた、公認会計士や税理士、社会保険労務士、財務や企業法務の経験豊富な弁護士と一緒に事業再生を支援するプロジェクトチームを立ち上げました。これは法律相談や訴訟を中心とした事件処理とは全く異なる新しい法的サービスです。この取り組みによって、中小企業の経済的・社会的評価の向上を実現していきたいと考えています」

 また、東野さんはIPO企業統治システム研究会を立ち上げIPO(株の新規公開、新規上場のこと)をテーマとする研究活動だけでなく、事業の継続を危機にさらすリーガルリスクの低減やコンプライアンス体制の強化、上場企業にふさわしい適時開示の社内体制確立などについて助言、支援を行う活動にも取り組んでいます。

#chapter3

大阪の活性化を目指し、中小企業にお金が流れるシステムを構築したい

 90年代後半、不況によって大阪の中小企業が次々に倒産していく光景を弁護士として目の当たりにしてきた東野さん。世界に誇れる日本の技術が失われていくことに胸を痛めていたそうです。

 「優良な企業でありながら事業展開の伸び悩みやリスク対応の遅れなどからやむを得ず倒産していった中小企業を数多く見てきて、やりきれない思いでした。大阪は少し前までは東京に次ぐ都市として活気を帯びていましたが、今は多くの中小企業がすっかり元気を失っているようにも見えます。例えば、独自の技術に特許を取得したとしても大手企業の流通ラインに乗せてもらえなければ、せっかく良い商品を作っても売れません。中小企業にとっては、いわば八方ふさがりの状況がここ数年続いているのです。中小企業にお金が流れるようにシステムを作り、職人が育つ環境を整えなければなりません。人、物、金という企業にとって必要不可欠な三要素を結合できるように、地域の金融機関と交渉することで法律家の立場から支援していきたいと考えています」

 東野さんは、父親が経営する会社が倒産し、苦労する両親を間近に見てきたことで“困った人たちを助けたい”という思いを抱いたことが弁護士を目指すきっかけとなりました。現在は大学院でMBA取得に向けて勉強をしているのだとか。長年蓄積してきた法律のノウハウに経営、財務の知識を加え、中小企業の事業再生、大阪の活性化への貢献に力を注いでいます。

(取材年月:2009年10月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

東野修次

事業再生・事業承継に取り組む弁護士

東野修次プロ

弁護士

東野&松原&中山法律事務所

長年蓄積してきた法律のノウハウに経営、財務の知識を加え、中小企業の事業再生、大阪の活性化への貢献に力を注いでいます。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ大阪に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または朝日新聞が取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO