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やさしい為替デリバティブの話(1)

東野修次

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為替デリバティブ(通貨オプション)のこと(1)

みなさんは、為替デリバティブ(通貨オプション)という言葉をお聞きになったことがありますか?

数年前に、銀行や証券会社が、盛んに中小企業に勧誘した金融商品です。

仕組みは、少し難しいのですが、簡単に説明してみましょう。

商材や原料を輸入する企業にとって、円安ドル高という為替の変化は怖いものです。利益を計算して輸出入しても、為替の変化で、利益が一瞬で飛んでしまうこともよくあります。
そこで、近い将来、たとえ今よりドル高になったとしても、今と同じレートでドルを買うことができれば、収益予測もぶれませんし、為替により収益が変動することへの「リスク」の回避(リスクヘッジといいます)になります。

そうしたリスクヘッジをするためには、「近い将来、たとえ今よりドル高になったとしても、今と同じレートでドルを買うことができる『権利』」を入手しておけばよい、ということになります。

例えば、今、1ドル=120円だとして、たとえ3ヶ月後に1ドル=130円になっていたとしても、3ヶ月後においても1ドルを120円で買える、そういう『権利』をあらかじめ購入しておくわけです。
こうした権利を、『コールオプション』といいます。
3ヶ月後に1ドルを120円で買えるコールオプション(権利)を買っておけば、3ヶ月後に1ドル=130円という為替レートになっていたとしても、1ドルを120円で買えるので、リスクヘッジになります。
逆に、もし、3ヶ月後、1ドル=110円の円高になっていたら、どうすればよいのでしょうか?
コールオプションは、あくまで「権利」ですから、無理に行使する必要はありません。もし円高になっていれば、コールオプションを「放棄」し、普通に、市場でドルを買えばよいのです。
こうしたオプションを通じたリスクヘッジ自体は、特に目新しいものではありません。

ただし、コールオプションを買うには、料金を払わなければなりません。中小企業の経営者にとっては、リスクヘッジの重要性は分かっていても、コストがかかるとなると、躊躇してしまいますね。

ところが、コストがかからない、すなわち、タダで、コールオプションが買えるという商品が発案されました。これを、『ゼロコスト』オプションといいます。
コストがかからないのであれば、買ってもいいかなと思いますよね。
銀行や証券会社は、この商品を盛んに勧誘しました。
取引銀行から強く勧誘されて、断れずに契約したという中小企業は数知れません。
現在、「為替デリバティブ」といえば、この商品のことを指していると言ってもよいでしょう。

さて、ゼロコストでリスクヘッジができて、万々歳となればよかったのですが、タダほど怖いものはありませんね。

コストをゼロにするカラクリには、大きな落とし穴がありました。
どういうカラクリだったかは、次回にお話しします。

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東野修次
専門家

東野修次(弁護士)

東野&松原&中山法律事務所

長年蓄積してきた法律のノウハウに経営、財務の知識を加え、中小企業の事業再生、大阪の活性化への貢献に力を注いでいます。

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