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福西綾美

社員の自信とやる気を引き出し、組織の成長を図る専門家

福西綾美(ふくにしあやみ) / キャリアコンサルタント

株式会社ソフィアステージ

コラム

リーダーシップ論 我々はどこへ向かうのか?/足跡をたどる

2017年5月29日 公開 / 2021年5月2日更新

テーマ:リーダーシップ

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: リーダーシップ スキル

 「あなたにとってリーダーとは、どんな人ですか?」と問うと、“目標に向かって周囲の人をゴールへ導く人”というように、行動に着目して答える人もいますし“徳川家康や豊臣秀吉”のような歴史上の人物を思い浮かべる人もいます。
 リーダーのイメージは百人百様です。

 巷にあふれかえるリーダーシップ理論や“リーダーはどのような行動をするべきか“という”あるべき論“に触れるたびに、自分自身の考えているリーダ像と違う場合、そのような考え方もあるのだと深く感銘を受けたりします。

 そもそも組織におけるリーダーシップとは、何を示し、我々はそれに対してどのように受けとめてればよいのでしょうか?
 このコラムでは、リーダーシップ理論の変遷を整理することで、我々はどのようなリーダーシップを求めており、さらにリーダーはどのようなリーダーシップを発揮して部下後輩を育成すればよいのか、その位置づけを理解することを目的とします。

■リーダーシップ理論の変遷
 時代とともに、進化し発展を遂げているリーダーシップ理論は、社会環境のニーズによって変容しています。諸説ありますが、分類すると次のようになります。
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1.特別な才能を持ったカリスマリーダー「特性論」Characteristic theory (1950年代以前)
1950年代頃まで「特性論」が主流でした。生まれながらリーダーとしての資質を持っている人が、リーダーとしての役割を担うものであり、特別な能力を保有していると考えられていました。
しかし、特別な能力の特性を明確にすることはできず、特性を測定するのは困難であり、実証できない点に課題を残しました。

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2.リーダーシップ行動理論Behavioral Theories (1950年代~)
 1940年代から出現した「行動理論」は、やがて主流となっていきます。“リーダーシップを発揮している行動とはどのようなものか?”を研究対象として、リーダーの行動に焦点をあてました。
リーダーシップはスキルであり習得できるという考えが根底にあります。
余談ですが、研修でリーダーシップを学ぶのは、まさにスキルであり習得可能であることが前提となっています。現代の我々は行動理論の延長線上にあるとも言えます。
 行動理論の流れを汲むものに、リーダーシップパターン(レヴィン)、マネジメント・システム論(リッカート)、PM理論(三隅二不二)など、現在も多くのリーダーシップ論に影響を与える理論が存在します。
その後、リーダーの行動以外の周囲の環境にも注目しようという流れが出てきます。
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3.条件適応型理論Contingency Theories (1960年代~)
 1960年代以降、様々なリーダーシップ理論が出現します。企業を取り巻く環境の変化に適応するため、時代のニーズに応じた理論に脚光が集まります。

①条件適応理論/コンティンジェンシー・モデル(フィードラー)
Contingency Theory
“すべての状況に適応されうる唯一無二の普遍的なリーダーシップスタイルは存在しない”という考え方で、以降のリーダーシップ理論に大きな影響を与えます。
( 1964年)

②パス・ゴール理論(ハウス)
Path-goal theory of Leadership
条件適応理論をさらに深めた理論で、集団が置かれている環境と部下の要因(能力や経験)に応じて「指示型、支援型、参加型、達成志向型」の4つのスタイルを使い分けて部下を動機づける考え方です。
(1971年)

③SL理論(ハーシー、ブランチャード)
Situational Leadership Theory
部下の発達度に応じて、リーダーシップスタイルを使い分けることを推奨した考え方です。援助的行動と指示的行動を2軸4象限で「指示型、コーチ型、援助型、委任型」に分類し、“部下の発達度”に絡めた切り口で構造化したもので、「状況対応型リーダーシップ」とも言われます。
(1977年)
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4.コンセプト理論Concept Theories(1980年代前後~)
条件適応理論を前提として、それぞれのコンセプトに基づいたリーダーシップ理論が展開されます。代表的なものをいくつか紹介します。

①カリスマ的リーダーシップ理論(ハウス他)
Theory of Charismatic Leadership
“部下にカリスマと認知されることで、リーダーはカリスマとなりうる”とするもので、元々はマックス・ウェーバーが定義づけたもの(1910年)をハウスが再定義。さらに他の研究者たちによって論じられています。(1976年)

②変革型リーダーシップ理論(ジョン・P・コッター)
Transformational Leadership
ビジョンを示し目標に向かって周囲を導くことが重要であり、変革には8段階のプロセスがあり、目標を達成するためには強いエネルギーが必要であるとしています。
(1988年)

③EQ型リーダーシップ (ダニエル・ゴールマン他)
Emotional Intelligence Theories
優れたリーダーは感情レベルに働きかけるものであり、「自分の感情を認識する」「自分の感情をコントロールする」「他者の気持ちを認識する」「人間関係を適切に管理する」という4領域に着目した理論です。
リーダーシップスタイルは「ビジョン型、コーチ型、関係重視型、民主型、ペースセッター型、強制型」の6つです。
(1995年)

④サーバント・リーダーシップ(ジョセフ・ジャウォンスキー他)
リーダーは自己の欲望を満たすために活動するのではなく、他者や組織や社会をよりよくするための高い倫理観をもって周囲に奉仕するという考え方で、1970年代にグリーンリーフが提唱した考え方が、21世紀に入りジャウォンスキーによって再び脚光を集めました。
(2002年)

その他、ファシリテーション型リーダーシップ、フロネシス・リーダーシップなどが挙げられます。
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リーダーシップ理論は、それぞれ独自性があり、示唆に富んでおり、構造的に解明された、現場で使える実践的なものが多くあります。
しかし、組織は何をめざし“どうありたいのか”を軸にしなければ、新たに目にするリーダーシップ理論に踊らされて、振り回されかねない点、注意が必要です。

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