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西村隆志

中小企業の立場にたった債権回収の専門家

西村隆志(にしむらたかし) / 弁護士

西村隆志法律事務所

コラム

『住宅ローン破綻は任意売却で解決できる』を読んで

2013年3月25日 公開 / 2020年1月21日更新

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 住宅ローン 借り換え住宅ローン 審査任意売却

マイベストプロ大阪に掲載されている貝阿彌佳則さん著『住宅ローン破綻は任意売却で解決できる』(幻冬舎メディアコンサルティング)が3月21日に出版されました。
私は、業務で任意売却を扱うことが多いため、早速買って読ませて頂きました。
任意売却のパイオニアである著者ならではの記述、例えば、任意売却というスキームが用いられるようになった経緯、豊富な経験があるからこその14の成功事例の紹介など、読みどころ満載です。
「任意売却」という言葉は良く聞くけれども、その具体的な内容は良く分からない、そのような疑問に答えてくれるのが本書です。
ミクロの視点で読んでいきますと、住宅ローンで悩まれている方々に対して、その滞納状況に応じて適切な処方箋を与えてくれています。
マクロの視点で読んでいきますと、住宅ローンが抱える内在的な諸問題について鋭く切り込んでいます。
不動産を売却するだけではなく、住宅ローン問題を解決したいという著者の強い意気込みを感じます。
本書では、不動産を任意売却し、残ローンを分割払い等の合意をすることで、破産申立てを免れることが出来た解決事例が数多く掲載されています。
例えば、公務員などのように、破産申立てをすることで欠格事由となる職業もございます。そのような職業に就かれている方にとってこの任意売却は非常に大きなメリットを与えてくれます。
では、住宅ローン以外にも債務があり、破産申立てをお考えの方にとっては、任意売却のメリットはないのでしょうか。
本書では、任意売却によって破産を免れることに主眼が置かれているため、破産申立てを前提とした場合の任意売却についてはあまり言及されていません。
僭越ながら、若干この点だけ言及させて頂くならば、私は破産申立てをお考えの方にとっても、任意売却をするメリットがあると考えています。
その理由の1つは、破産申立て自体の費用を抑えることが出来る可能性があるからです。
もし、不動産をお持ちの方が破産申立てをされた場合、原則として、破産管財人が裁判所から選任されます。
破産管財人が選任される破産手続においては、そうではない破産手続とは異なり、引継予納金という費用がかかります。大阪地方裁判所の場合ですと、引継予納金の最低金額は原則20万5000円となります(会社と一緒に代表者が申し立てる場合や、夫婦同時に申し立てる場合では異なってきます。)。破産をせざるを得ない状況においては、この引継予納金の捻出が非常に厳しい方もいらっしゃると思います。
これに対し、破産申立てをする前に不動産を任意売却した場合、それ以外に特に大きな財産がなく、その他問題がない場合には、破産管財人が選任されない手続による申立てが可能となる場合があります。
もう1つの理由としては、引越費用を捻出できる点にあります。
破産申立てをする前に任意売却をすることで、そこから引越費用が捻出できる可能性があります(詳しくは本書をご覧ください。)。
これも任意売却をせずに破産申立てをした場合にはない大きなメリットです。
このように、破産申立て前に任意売却をすることによって、場合によっては、任意売却をせずに破産申立てをした場合と比較して、数十万円ほどの違いが出てくることもあります。
したがいまして、任意売却は破産申立てをお考えの方にとっても非常に大きなメリットがあります。
このように、広く住宅ローンでお悩みの方に解決の処方箋となる任意売却について分かりやすく簡潔に書かれた本書(約200ページで持ち運びもしやすく電車の中でも読めます)を、住宅ローンでお悩みの方、任意売却に携われておられる多くの方にお薦め致します。

この記事を書いたプロ

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