外壁補修で足場が組めない場合

林照剛

林照剛

テーマ:外壁塗装の豆知識

建物が密集している地域では、外壁補修や塗装工事を行う際に足場を組むスペースがないことが多くあります。そのため、どうしたらいいか分からず困っている方も多いのではないでしょうか。今回は、足場が設置できない場合の対処法や、足場が設置できない状況について解説していきます。

足場が組めない状況とは?

一般的に、外壁塗装やタイル補修、コンクリート補修などの作業では仮設足場を設置します。しかし、作業場所によっては足場を設置するスペースを十分に確保できない場合もあります。では、足場が組めない状況について見ていきましょう。

●隣家との距離が僅か

住宅街などの建物が密集している場所では、隣家との距離が数十cmしかない場合もあります。人が1人通れるくらいの間隔の作業場所では、足場の設置ができないと判断されるでしょう。都市部では、作業用トラックや材料を置くスペースが確保できない場合も多数存在します。ビル内に店舗がある場合は、足場を設置すると一階部分が隠れてしまい営業妨害になりかねません。

●隣家の敷地が借りられない

足場を設置するスペースが十分に確保できない場合は、隣家の敷地を借りる場合があります。しかし、隣家と面識がなかったり仲がさほど良くなかったりすると、敷地を借りることが困難です。敷地の所有者から承諾を得ないと、足場を組み立てることはできません。普段の交流があまりない人やトラブルを避けたい人は、無足場工法を選択しましょう。




足場を設置せず工事を行う方法

足場を組み立てずに建物の修繕工事や改修工事を行う施工方法を無足場工法と言います。無足場工法には、「ロープアクセス」と「ゴンドラ」の2種類があり、それぞれの手法について詳しく解説します。

●ロープアクセス

ロープアクセスは、作業員がロープを通したフルハーネスを装着し、屋上から作業箇所に下降して作業を行う方法です。体にロープを付けて宙づりで高所作業を行うため、一見危険に見えるかもしれません。しかし、2本のロープを体に装着しロープを外さない限り落下する心配がないため、高い安全性を誇ります。厳格な基準をクリアした産業用のロープを使用するロープアクセスは、現在、ブランコ工法より主流となっている施工方法です。

●ゴンドラ作業

ゴンドラ作業は、屋上から吊り下げたケージと呼ばれる箱の中に作業員が乗って、リモコン操作で上下左右に移動しながら作業を行う方法です。2階部分にステージ足場を固定することで、地上に足場を作る必要がなく、都心部などの歩行者が多いエリアで頻繁にゴンドラによる作業が採用されます。



無足場工法のメリット

●足場代の節約と工数の短縮

無足場工法では足場の組み立てや解体が不要なため、大幅なコスト削減が可能です。外壁補修や塗装をする際に組み立てる足場代は、全体費用の約30%を占めているといわれています。大規模な補修や修繕なら足場を組み立てた方が効率が良いですが、部分的な作業に足場を組み立てると非効率で余計なコストが必要です。足場を組み立てない無足場工法は、大幅なコスト削減だけでなく、設置や解体にかかる時間もないため工数の短縮にも繋がります。足場の設置には、事前に近隣の人たちに許可を得る必要もあり手間がかかりますが、無足場工法なら手間が少ないため作業がスムーズです。

●防犯面で安心

足場を設置すると、ベランダなどに侵入しやすくなるため、防犯面で不安に思う方もいるでしょう。実際、足場の設置によりベランダに侵入され被害を受けるケースも多数あります。足場を組まない無足場工法には、侵入できる場所を作らないため防犯面での心配は不要です。また、足場やメッシュシートなど建物を覆われてしまうと、日差しや風通しを妨げられるだけでなく、窓から外の景色を見ることもできません。足場作業では、住空間の快適性が損なわれる恐れがありますが、無足場工法では普段通りの生活ができます。

●近隣や店舗への影響を軽減

足場作業の場合、隣家とのスペースが狭いと敷地を借りて足場を設置したり、足場設置の音が発生したりと周りに影響を与えてしまいます。さらに、外壁塗装では塗料が飛び散ってしまう場合もあるでしょう。一方、無足場工法なら足場の組み立てる音や職人が移動する音が発生しないため、近隣や店舗への影響を軽減できます。無足場工法は、40cmほどの間隔があれば作業できるため、60~70cmの間隔を必要とする足場作業に比べて全体的にスムーズな作業が可能です。


無足場工法のデメリット

●作業範囲が限られる

無足場工法では、以下の条件に当てはまる場合は作業ができない場合があります。例えば、三角屋根や建物の一部が突き出ている場合などです。ロープやゴンドラを使用して作業する無足場工法では、屋上にロープやゴンドラの設置が困難な建物の形状の場合、作業ができません。また、足場工法なら作業員が足場を使い上下左右と自由に作業できますが、無足場工法では移動範囲が限定的です。広範囲の補修や修繕をおこなう場合は、足場工法の方が効率よく作業できる可能性が高いです。

●施工後の確認が困難

無足場工法では、施工場所に作業員しか立ち入ることができません。外壁修繕後の状態を自身の目で確認したい方もいるでしょう。しかし、無足場工法では居住者など作業員以外の第三者が施工箇所を直接確認できないため、施工後の状態は写真を見て確認する必要があります。

●無足場工法に対応している業者が少数

近年、無足場工法は注目を集めていますが、地方では対応している業者が足場工法に比べてまだ少数です。足場が組めない場所やコスト・工数を少しでも削減したい方がいたとしても、無足場工法に対応している業者が見つからない場合があります。


無足場工法以外の足場が組めない場所の対処方法

足場を組めない場合の対処法は、無足場工法だけではありません。一般的な足場の設置には、60~70㎝ほどのスペースが必要ですが、単管足場なら狭い場所でも作業できます。また、足場を設置するために隣家の敷地を借りれるか確認することも重要です。足場が組めない場合は、無足場工法のメリット・デメリットを踏まえて他の対策方法も選択肢として考えてみましょう。

●単管足場の組み立て

単管足場は基本的に足場の組み立てとして使用しませんが、狭小地用の足場として用いる場合がある古いタイプの組み立て方法です。足場の支柱にパイプを水平に設置する組立方法で、30cmほどの間隔があれば単管足場を設置できます。作業員は、パイプに足を乗せて作業するため、一般的な足場より滑りやすく、安全性に工夫が必要です。

●隣家の敷地を使用する

足場が組めない対処法として、隣家の敷地を借りる方法もあります。許可なく勝手に足場を組み立てることはできないため、普段からコミュニケーションを取り、承諾してもらえるような関係の構築が重要です。普段から交流がない場合でも、低姿勢で申し出ると快く承諾してくれる場合がほとんどでしょう。



まとめ

外壁補修は建物の外観を綺麗にし、建物の寿命を延ばすため非常に重要な作業です。建物の老朽化が目立ち外壁補修を依頼する場合は、足場工法と無足場工法の特徴を見比べて、最適な方法を選択してください。

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林照剛
専門家

林照剛(1級建築施工管理技士)

株式会社ラディエント

遮熱・断熱塗装のほか、ひび割れなどに強い特殊塗装によるリフォームで省エネ(節電)を実現し、快適空間を創造します。特殊塗装に慣れた職人の丁寧な作業は、お客様から高い評価を得ています

林照剛プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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