コーキングの打ち増しと打替えの違い
海沿いの住宅塗装は、一般的な環境と比べて特別な配慮を要します。なぜなら、海沿いの環境は塩分を多く含んだ潮風が常に吹き付け、これが建物の外壁や金属部分に直接影響を与えるからです。この塩害は塗料の劣化を早める主要な原因となり、外壁の塗り替え周期を短縮させる可能性があり注意が必要です。今回は、海沿い住宅の塗装で考慮したいことを解説していきます。
海沿い住宅で発生する劣化症状
海沿いの地域では、塩分を含んだ潮風が常に吹き付けるため、外壁や金属部分が塩害の影響を受けやすくなります。この塩分が外壁材料に付着して固着すると、塗料の劣化を加速し、外壁の寿命を短縮させることがあります 。
腐食と錆
潮風に含まれる塩分が外壁の金属部分に作用し、腐食やサビの発生リスクが高まります。これは金属系の建材だけでなく、家の構造的な部分にも悪影響を及ぼす可能性があります 。
塗膜の劣化
塩分が外壁の塗装面に定着することで、塗料の剥がれや色あせ、チョーキング現象などの塗装劣化が通常よりも早く進行します。このため、海沿いの住宅では定期的な塗り替えがより頻繁に必要とされる場合があります 。
防水性の低下
塩害が進行すると、外壁材の中にある防水シートまで劣化させることがあります。これが原因で雨漏りが発生し、家全体の構造的な問題につながることもあります 。
ひび割れ
塩分が建物のコンクリートやモルタル部分に浸透すると、その中の鉄筋にも達し、腐食を引き起こすことがあります。内部の鉄骨に錆が生じると、錆が徐々に膨張するためコンクリートがひび割れてしまう場合があります。内部腐食は建物の構造的な強度が低下するため、定期的な点検を欠かさないようにしましょう。
塩害を受けやすい住宅とは
塩害は海から近い地域ほど顕著になりますますが、海岸から5km以内の範囲は塩害への注意が必要なエリアとされています。しかし、潮風はかなり遠くにも届くため、風向きや風力によっては海から5kmも離れている場所でも塩害が生じます。潮のにおいがする場所は、塩害が発生しやすい地域だと思って注意してください。
また、使用している外壁材などによって、塩害の受けやすさ、受けにくさがあります。金属系サイディングや窯業サイディングの外壁材、トタン、スチールなどを使用している建物は塩害を受けやすく、樹脂系サイディングの外壁材は一般的に塩害を受けにくいです。
塩害から住宅を守るためには
定期的な清掃
塩害対策の最初のステップとして、定期的に自宅の外壁と室外機器を清掃することが重要です。特に海からの塩分を含む風に晒された部分は、水を使って丁寧に洗い流すことで塩害のリスクを減らすことが可能です。この作業は、柔らかいブラシとホースを使用し、塗膜を傷つけないよう慎重に行ってください。高圧洗浄機の使用や硬いブラシでの洗浄は、塗膜を損傷させる可能性があるため避けましょう。
耐塩性の高い塗料を用いたメンテナンス
海近くの住宅では、通常の塗料よりも耐塩性と耐久性に優れた塗料を選ぶことが推奨されます。耐塩性の塗料は初期費用は高めですが、塗り替えの頻度を減らすことができ、長期的にはコスト削減につながります。フッ素系塗料や変性無機系塗料は耐塩性に優れており、ウレタン系やシリコン系塗料よりも長持ちします。
耐塩性に優れた建材への交換
既存の屋根や外壁が塩害に弱い素材である場合は、耐塩性の高い材料への交換を検討することも一つの手段です。特に新築時には、塩害を考慮した材料選びが重要です。塩化ビニルの樹脂系サイディングやガルバリウム鋼鈑などが、塩害に強くおすすめされる材料です。
塩害に強い塗料とは
塗料の種類によって外壁や屋根の耐用年数は異なりますが、海沿いの住宅で使用される塗料は内陸部に比べて2〜3年程度耐用年数が短いことが一般的です。これは、海からの塩分が塗料の劣化を早めるためです。その結果、通常の塗料を使用した場合、メンテナンスの周期が短くなり、長期的に見て高額な維持費が発生することがあります。
この問題に対処するためには、耐塩性と耐久性に優れた塗料の使用が推奨されます。初期の塗装費用は高くなるものの、耐用年数が延びることで、結果的に全体のメンテナンス費用を抑えることが可能です。
塩害対策に適した塗料
- アクリルシリコン樹脂系塗料
- フッ素系塗料
- 変性無機系塗料
これらの塗料は、その耐塩性と長い耐用年数(フッ素系は15〜20年、無機系は15〜25年)により、海沿いの厳しい環境に特に適しています。一方で、ウレタン系やシリコン系塗料は10年前後の耐用年数となり、耐塩性が低いため推奨されません。これらの情報を参考に、適切な塗料選びを行い、住宅を塩害から守ることが重要です。
塗装に適した時期
一般的に、塗装に最適なのは湿度が低く、気温が適度で安定している季節です。これは、塗料の乾燥と硬化に最適な条件を提供するためです。
具体的には、春(4月から5月)と秋(9月から10月)が推奨されます 。これらの季節は、塩害地域特有の湿気が比較的低く、気温も過ごしやすい範囲にあります。夏は高温多湿であり、塗料の乾燥に悪影響を及ぼす可能性が高く、また冬は気温が低く塗料の適切な硬化が困難になるため避けるべきです。
また、塩害地域では海風に含まれる塩分が塗料の性能を低下させるため、塗装前には表面の塩分を丁寧に洗い流すことが重要です。塗装工事を計画する際には、風が穏やかで塩分の飛散が最小限に抑えられる日を選ぶことも大切です。
内陸部の住宅に比べて、塩害地域の住宅はメンテナンスの遅れによるリスクは大きくなります。健康的で長寿命な住宅を保つにために上記の事項を考慮しながら早めの対策やメンテナンスをされることをお勧めします。