劣化した屋根板金がもたらす危険性と点検の必要性
近年の住宅の屋根は、従来の一般的だった瓦屋根に代わり軽量の屋根材が増えてきました。どちらの屋根材にもそれぞれにメリットとデメリットがありますが、どちらが建材として優れているかというよりも、立地環境であったり好みや予算など総合的にバランスの良い屋根材を選ばれて建築されいると思います。しかし、経年劣化により躯体が弱ってくると重量の重い瓦屋根の住宅は残念ながら安全性が高いとは言えません。対策の一つとして屋根の軽量化があります。屋根を軽量にすることで躯体への負荷を軽減させることができます。今回は同じ瓦屋根ですが軽量瓦と防災瓦について解説していきます。
軽量瓦とは
従来から流通している瓦屋根は粘土で作られているものが多く、1枚当たり約3キロ前後の重量があり、1㎡では約50キロ前後になります。屋根全体の重さは住宅の広さにもよりますが、約5トンほどとされています。一方の軽量瓦も粘土で作られていますが、従来の屋根瓦より10%~30%軽量化されており、1㎡では約35キロ前後になります。従来の瓦よりも軽量になってはいますが、軽量瓦は軽量屋根とは違います。軽量屋根とは、スレート屋根、ガルバリウム屋根、トタン屋根などがあり、1㎡辺り5キロ~20キロ前後の屋根材のことを指します。そのため、建築基準法では従来の瓦より軽量であっても、重い屋根材に分類されています。
防災瓦とは
防災瓦は、地震や台風などの災害に強い瓦で、従来の瓦よりも耐震性と耐風性が大幅に向上しています。従来の瓦は、連結して固定されているため、地震や強風によってズレたり浮いたりすることがありました。しかし、防災瓦はロック式と呼ばれる工法により、瓦同士の連結を強化し、釘で屋根の土台(野地板)に固定することで、ズレや強風による剥がれを防ぎます。このため、耐震性と耐風性が格段に向上しています 。
さらに、防災瓦は従来の日本瓦(粘土瓦)と同じ素材でありながら、重量が約50%軽減されているため、老朽化した木造住宅でも安心して施工できます。これにより、伝統的な外観を保ちながら建物への負担を軽減し、長期間メンテナンスが不要な利点も持っています 。防災瓦は、強風や地震によって飛ばされたりズレたりしないように設計されているため、災害に対して非常に強い屋根材です 。
瓦屋根のメリット
高耐久な建材
瓦自体の耐久年数は50年~100年とされています。
軽量屋根の建材は定期的に塗装をすることで錆びによる腐食や、ひび割れを防いだりする必要があります。しかし、瓦は塗装などのお手入れをしなくてもいい建材です。劣化による色褪せもほとんど起こらない利点もあります。
デザイン性に優れている
近年の軽量屋根材は軽量化によって瓦のような重厚感はなく平べったいシンプルなものがほとんどです。その点、瓦屋根は屋根をデザインすることに適している建材といえます。
断熱性に優れている
瓦屋根は軽量屋根に比べて厚みがあるのと、屋根と下地の間に空間があるので外気の熱を伝えにくい構造になっています。
遮音性が高い
瓦屋根は軽量屋根に比べて厚みがあるのと、素材が粘土なので音を吸収しやすく雨音など外部からの音が室内にダイレクトに伝わりにくいメリットがあります。
瓦屋根のデメリット
初期費用が高い
瓦屋根は耐用年数も長く、塗装が不要なため長期的にかかるコスト面はメリットが高いと言えますが、材料費や施工費の初期費用が高くなるため、新築時に費用を抑えたい方にはデメリットになります。
耐震性が低い
屋根の重さは住宅の耐震性に影響に影響します。瓦は重量があるので地震の際の揺れ幅が大きくなります。屋根の重さがいえの耐震性に近年の瓦屋根住宅では建築基準法によって屋根の重さを考慮した設計が義務化されているため、瓦屋根住宅だから耐震性が低いわけではありません。しかし、築年数が長くなり経年劣化で建物自体が弱くなっている状態では、地震による瓦の落下や倒壊のリスクも高まります。
まとめ
軽量瓦や防災瓦は従来の日本瓦の美しい外観を保ちながらも、最新の技術を駆使しているため、見た目と性能の両方を兼ね備えています。これにより、伝統的な家屋の雰囲気を損なうことなく、防災性能を向上させることができます。耐久性に優れ、長期間メンテナンスが不要であるため、経済的なメリットも大きいです。総じて、軽量瓦や防災瓦は安全性、経済性、美観をすべて兼ね備えた、現代の住宅に最適な屋根材と言えます。