遮熱塗料のガイナについて

林照剛

林照剛

テーマ:遮熱塗料の効果と活用法

ガイナという画期的な塗料誕生には、開発にあたった日進産業の石子達次郎さんとJAXA(宇宙航空研究開発機構)との運命的な出会いがありました。

小さな町工場から

ガイナを開発した日進産業は東京・板橋区にあります。板橋区は小さな町工場が集まる場所ですが、日進産業も小さな町工場です。創立は昭和37年。当時、まだ大学4年生だった石子達次郎さんが起業した工場です。

しかし、起業時に思い描いていた機械設備に関する仕事の依頼はなく、石子さんたちは、ドブさらいなど人が嫌がる仕事を引き受けることで会社を維持する状態でした。
ガイナの誕生もそうした仕事を通して知り合った小さな工場からの依頼から始まります。

ある日、石子さんは「工場が暑くてしかたない。なんとかならないか」という依頼を受けました。しかし、工場を訪れると機械設備が部屋いっぱいに設置されており、機械設備と壁の隙間は5㎜程度。これでは断熱材を入れることができず、石子さんはどうやって依頼に応えるか悩みました。

そんな時、ふと机の上にあったチラシに手を置くと、不思議な感覚を覚えました。黒いチラシは
日射しによって熱くなっており、それに比べ白いチラシは熱さが抑えられていたのです。
そこで石子さんは工場の壁に白い塗料を塗ることにしました。すると工場内の暑さが抑えられたのです。ここから石子さんの遮熱・断熱塗料の研究が始まります。

石子さんは、塗料の白さが熱を下げるのではなく、白い塗料に含まれる物質が熱を下げることに着目し、セラミックに辿り着きます。そして、セラミックの中には熱を外に放射する特性を持つものがあることをつきとめ、セラミックを使った遮熱・断熱塗料の開発に取り組みます。

しかし、セラミックを配合した塗料は、一般塗料のように液状にはならず、塗料として使うことができません。どうしたらセラミックを配合した塗料を塗料として使えるものにするか、石子さんにとって大きな課題でした。

課題解決まで石子さんはさまざまな試験を繰り返し、配合を変え、ようやく塗料として使えるものが完成した時には4年という歳月が経っていました。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)との出逢い

石子さんが開発した塗料はわずか1mmの塗膜で熱を遮り、室内の温度を下げる効果を持つものでした。しかし当時、塗装によって室内の温度が下がるということは理解されず、せっかく作り上げた塗料を買ってくれる人は一人もいませんでした。遮熱・断熱は、ある程度の厚さを持った断熱材でしかできない、というのが常識だったからです。

そうした時、石子さんは仕事を通じて知り合った建築家から遮熱・断熱に関する相談を受けます。
ブティックの設計を依頼されたが、依頼主の要望を聞くと、遮熱・断熱のために断熱材を使うスペースがとれない。なんとかならないか、という相談でした。
石子さんは、自らが開発した塗料を塗布することで建築家の期待に応えました。これが評判を呼び、建築業界から発注が殺到することになります。

そして石子さんは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が断熱材技術の分野で民間企業と連携するという報道に接します。これは、JAXAが開発した宇宙開発技術を広く一般企業に転用し、人々の暮らしに役立てようという趣旨を持つものです。

ロケットの先端にはフェアリングと呼ばれるものがあります。これは先端部分に格納された人工衛星を振動や大気圏を突破する際の高熱から守る役割を担っています。
ロケットが大気圏を突破する際、フェアリングは激しい空気抵抗によって200~300℃の熱にさらされます。そして、その熱からフェアリングを守るものは塗料なのです。

JAXAの呼びかけに大手塗料メーカーが名乗りを上げましたが、JAXAの担当者が注目したのは石子さんが開発した塗料の優秀性と開発者としての石子さんの資質の高さでした。
石子さんは、JAXAが開発した技術を取り入れ、自ら開発した塗料に応用し、画期的な塗料を生み出します。それが「ガイナ」なのです。

さまざまな場所に使われるガイナ

ガイナは現在、さまざまな場所で使われています。一般住宅はもちろん、工場、ホテル、学校、老人ホーム、冷蔵倉庫など、遮熱・断熱を必要とする場所ならどこでもガイナの有効性を活用できます。

たとえば、車両の輸出を担う大型タンカーもその一つです。赤道直下を行くタンカーの甲板は太陽光を浴び高熱になります。その下に舶載された車両を保護するためには甲板の温度を下げる必要があります。そこでガイナが選択され車両を熱から守っているのです。
ガイナの効果はさまざまな場所で実証され、現在大きな課題になっている地球温暖化抑制への効果も期待されています。

ガイナは屋根や外装だけではなく室内にも塗ることができます。家の塗装をお考えの方には、ぜひ、検討して頂きたい塗料です。
ただ、ガイナの塗装には熟練した技術が必要です。ガイナによる塗装をお考えでしたら、どうぞ私たちラディエントにご相談下さい。



ガイナスタジオ関西オープンセレモニーにて(中央が石子さん)

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林照剛
専門家

林照剛(1級建築施工管理技士)

株式会社ラディエント

遮熱・断熱塗装のほか、ひび割れなどに強い特殊塗装によるリフォームで省エネ(節電)を実現し、快適空間を創造します。特殊塗装に慣れた職人の丁寧な作業は、お客様から高い評価を得ています

林照剛プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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