死後に大量のサブスク契約が発覚!解約地獄に陥らないための全知識
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
長年、成年後見人として、一身にその方の生活と財産を守り続けてきた。
その大切な被後見人様が、ついに旅立たれた…。
深い喪失感と同時に、後見人には「さあ、これから何を、どこまでやるべきなのか」という、極めて重大で慎重な判断が求められる最後の任務が待ち受けています。
なぜなら、ご本人の死亡と同時に、後見人としての法的権限は、すべて消滅してしまうからです。
今回は、この「被後見人の死後、後見人がすべきこと」をテーマに、
- 権限が消滅した後に、絶対にやってはいけないこと
- 死後、最優先でやるべき「相続人の確定と連絡」
- 相続人への、正しい財産の“バトンタッチ”の方法
- 後見人としての本当のゴール「後見終了の報告」
などを、分かりやすく丁寧に解説していきましょう。
【結論】権限は死亡で終了。相続人への連絡と引継ぎが最後の任務
成年後見人としての法的権限は、被後見人様が亡くなられた、まさにその瞬間に、すべて消滅します。
これは、民法で定められた絶対的なルールです。
したがって、死後に故人の預金を引き出して葬儀費用にあてたり、各種契約を解約したりといった財産管理行為は、原則として一切できなくなります。
良かれと思って行った行為が、後に相続人から「権限のない行為だ」と追及されるリスクすらあるのです。
では、後見人はどうすべきか?
死後、最初にそして最優先でやるべきこと。
それは、戸籍などを調査して相続人を確定させ、その相続人に死亡の事実を速やかに連絡すること。
後見人の最後の任務は、死後の世界にまで介入することではありません。
これまで守り抜いてきた財産を、次の正当な権利者である相続人へ、現状のまま、誠実に引き継ぐこと。
それが、法的に定められた唯一の正しい道筋なのです。
1. 権限消滅後に“絶対に”やってはいけないこと
ご本人の死亡後、後見人は法的には「他人」と同じ立場になります。以下の行為は、権限踰越(けんげんゆえつ)とみなされる可能性が極めて高いため、絶対に行ってはいけません。
- 故人の預金口座から現金を引き出すこと(たとえ葬儀費用のためでもNG)
- 故人名義の不動産や株式を売却すること
- 各種サービスの解約手続きを行うこと
- 相続人の一部だけに財産を引き渡すこと
特に、相続人が見つからないからといって、後見人が独断で葬儀社と契約し、喪主を務めることは、大きなリスクを伴います。
後のトラブルを避けるためにも、まずは家庭裁判所や弁護士などの専門家に相談すべきでしょう。
2. 死後、最優先すべき「相続人の確定と連絡」
死後の手続きのバトンを渡すべき相手、それは相続人です。
■ ステップ1:相続人の確定
まずは、手元にある住民票や戸籍謄本で、法定相続人が誰であるかを確認します。
もし情報が古ければ、役所で故人の出生から死亡までの戸籍謄本一式を取得し、法的な相続人を正確に確定させる必要があります。
■ ステップ2:相続人への連絡・報告
相続人全員に対し、電話や書面で、被後見人様が亡くなられたことを速やかに連絡します。
その際、ご自身が成年後見人であったこと、そして、今後、財産を引き継いでいただく必要があることを、明確に伝えなければなりません。
この「連絡」こそが、後見人が死後に行う、最も重要で責任ある行動です。
3. 最後の任務①:相続人への、誠実な財産引継ぎ
相続人との連絡が取れたら、次は財産の引き渡しです。
■ 引き継ぐべきもの
- 預貯金通帳、キャッシュカード、不動産の権利証、保険証券など、管理していた全ての財産
- 後見業務のために作成した財産目録
- 後見期間中の収支を記録した計算書
これらの書類を、相続人の代表者(または相続人全員)に引き渡します。
その際、「何を、いつ、誰に引き渡したか」を明確にするため、必ず「財産引継書兼受領書」に署名・捺印をもらうようにしてください。
これが、後見人自身の身を守るための、最も重要な証拠となります。
4. 最後の任務②:家庭裁判所への「後見終了の報告」
相続人への引き継ぎが完了したら、いよいよ後見人としての本当の最終任務です。
■ 報告義務
後見人は、被後見人の死亡後、遅滞なく家庭裁判所に対し、「後見が終了した」旨を報告し、最後の財産目録と収支計算書を提出する義務があります。
■ 添付書類
この報告書には、前述の、相続人に財産を引き渡したことを証明する「受領書」のコピーなどを添付します。
この報告が家庭裁判所に受理されて、初めて、成年後見人としての全ての任務が、法的に、そして公式に完了するのです。
【まとめ】“引き継ぎ”までが後見人の責務。死後の介入は慎重に
成年後見人という重責は、被後見人様の死亡と共に、その役割を終えます。
しかし、その終わりは、次の相続人への始まりを、正しく繋ぐものでなければなりません。
では、本日の重要なポイントをまとめます。
- 成年後見人の権限は、被後見人の死亡と同時に、法的に完全に消滅する。
- 死後、後見人がまずやるべきことは、財産に手を付けることではなく、「相続人の捜索と連絡」。
- これまで管理してきた財産を、財産目録と共に相続人へ引き継ぎ、必ず「受領書」を受け取る。
- 最後に、家庭裁判所へ「後見終了の報告」を行うことで、後見人としての全ての任務が完了する。
- 葬儀や納骨といった死後事務への不安は、後見契約とは別に、生前のうちに「死後事務委任契約」で備えておくのが、最も確実な解決策。
ご葬儀の現場で、成年後見人の先生が、亡くなられた被後見人様のために、どこまで関わってよいものかと、深く悩まれている姿をお見かけすることがあります。
その誠実なお気持ちは非常に尊いものですが、同時に、ご自身の法的立場を守る冷静さも必要です。
私たち葬儀社も、ご依頼主が法的に正当な権限を持つ方(相続人や死後事務受任者)であるかを確認することが、故人の尊厳を守り、無用なトラブルを防ぐための重要な責務だと考えております。
株式会社大阪セレモニー



